執事ダニエルの日記
●月●日
ついにアレンお坊ちゃまが、浮いたまま庭に出られてしまった。奥様がアレンお坊ちゃまと散歩をされようと庭に出向かれた際に、奥様の腕から浮き出してしまったのだ。
どうやら飛んでいた蝶が気になったようで、浮いたまま近くでじっと見られていたが、お坊ちゃまの事をあまり知らないメイドや騎士がそれを見て、大騒ぎになってしまった。しかしそれも仕方ないだろう。まだ産まれて数か月のアレンお坊ちゃまが空中にいたのだ。魔法を掛けられたとは思っても、御自分で精霊を使っているとは、夢にも思うまい。
そのためメイドが転んだり、騎士達が慌ててお坊ちゃま受け止めようと走ったりで、中庭の周囲は一時騒乱状態だった。
奥様は大丈夫だと笑っておられたが、危うく自分の心臓も止まりかけたので、どうか勘弁して頂きたいものだ。
●月●日
庭師が血相を変えて私の所へ来たが、要領を得ないので中庭に行くと、お坊ちゃまが花に、指先から水を出していた。
どうやら木の芽の精霊様が教えられたようだが、それは我々の様な者の仕事ですとアレン様に言っても、当然理解されるはずもなく、更に困ったことに、ベンチに座っていた奥様も精霊様も、お坊ちゃまが楽しんでいるならいいんじゃないかと言われ、私と庭師の心臓が止まるところだった。
一体どこに、公爵家のご嫡男に庭仕事をさせる執事と庭師がいるというのだろう。どうかご勘弁願いたい。
●月●日
お坊ちゃまが寝返りをしたと奥様が喜んでおられたが、順番を大きく間違えていますとは、口が裂けても言えなかった。
●月●日
今日もまた庭で浮いておられた坊ちゃまが、あくびをすると私の腕の中に収まってしまい、そのまま眠られてしまった。
奥様は笑っておられたが、闇と光の精霊様方が、私をじっと見ていたため心臓が止まりそうだった。
だが坊ちゃまはそんな事を気にせず眠っておられた。将来はきっと、肝の据わった御当主になられるだろう。
●月●日
坊ちゃまがお生まれになった記念パーティーが開催されるため、近隣の領主や貴族、果ては王家の使いまで、様々な方々のお迎えをする準備に、城はここ最近大忙しだが、精霊様方も大忙しだ。
どうやら坊ちゃまのパーティーなのだから、盛大にしようとあちこちを飾りつけしているようで、解けない氷のオブジェに、触れても熱くない炎、ふわふわと漂う光の玉など、今まで見たことがない物で溢れかえっている。
しかし、説明役は主に自分達なので、どうか勘弁してほしい。
●月●日
心臓が
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