第14話 悪役令嬢と体重

アンネちゃんの様子がおかしい。アンネちゃんに喜んで貰いたくて、プリンだの大福だの買って帰っていたのだが。


夕実曰く、乙女の事情らしい。それって何?

もしかして、甘いのがそんなに得意じゃないのに、断れなかったとか?はたまた、甘いのを食べ過ぎて嫌いになっちゃったとか?


俺は鈍いから、はっきり言ってもらわないとわからないのだけど。当分は買うのを控えめにした方がいいのだろう。


でも、アンネちゃんが美味しそうに頬張る顔、最高に可愛いんだよなぁ。


少し頻度を減らそうか。買ってあげたいのはこちらの勝手だし。それで嫌われるのも嫌だ。




そうしていると、ようやく鈍い俺にも詳細は分かってきた。アンネちゃんは、来た時に身に着けていたドレスが入らなくなってしまったらしい。


それは、成長期とかではないのかな。まだアンネちゃん16歳だし。それに俺からするとまだまだ細いから肉をつけるべきなのに。でもそれは夕実曰く言っちゃいけないことらしい。


女性の考えや地雷は、モテない男である俺には到底わからない問題で、だからこそ口答えは悪手でしかない。男たちの代表だというつもりはないけれど、俺は少しぐらいぽっちゃり目のアンネちゃんも見てみたい。絶対可愛い。今でさえ可愛くて、息の根が止まりそうなんだから。ぽっちゃりアンネちゃんはきっと俺を殺すだろう。それほど破壊力が高いと断言する。


甘いものを食べるのは好きらしいので、引きこもりがちな二人で運動したらどうかと提案する。例えば最寄駅までの距離を歩いて、また帰ってくるとかを何度か走ってみるとか。女性だからあんまり筋肉がムキムキになることはないだろうけど、しなやかな身体は作れるらしいし。まあ、これは友人の香澄の受け売りだけど。と、ここで、俺にしては凄く気の利いた提案を思いつく。アンネちゃんと夕実の運動の先生を香澄に頼むのはどうだろう。香澄が暴走しないように見張る必要はあるにはあるが、女性同士で楽しく運動できて、痩せて、またプリンとか食べられるようになったら、最高じゃないか。


とりあえず、二人の意思を聞いてみる。夕実は乗り気ではあった。アンネちゃんも喜ぶかと思いきや、香澄が相手と言うと、何とも言えない顔になる。その表情は何?俺には女の子の考えていることを推し量るのはとても難しい。


香澄はいい奴だから、触れ合う機会が多ければ絶対好きになると思うのだけど。アンネちゃんの考えてることがわからない。


考えるよりも、行動を起こすタイプの俺は、とりあえず香澄を呼んだ。香澄は二つ返事で了承してくれた。


アンネちゃんも会うと楽しそうで、俺は考えすぎかと、ホッとした。


時間がある時は一緒にやろうとしたが、アンネちゃんに見惚れていると、香澄からペナルティがたくさん飛んできて、ついていくのもやっとだ。


まだ若いつもりだったのに、ショックを受ける。あと、あれは誰の入れ知恵だろう。


アンネちゃんのポニーテールは、可愛いが過ぎる。アンネちゃんはいい加減自分の素晴らしさを知るべきだ。


初めてうちに来た香澄は日本家屋に感激していた。建築学科か悩んだだけあって、プロっぽい目線であちこち眺めている。俺はよくわからないが、じっと天井や柱を触ったり眺めたりしている。意外なところで気に入ってもらえたみたいだ。


運動をした後に、甘い物を出すと、香澄には笑われ、夕実には呆れられた。


「蒼が一番の敵とは思わなかった。」


ダイエット中の女の子に、敵認識されてしまうなんて、ショック。

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