第10話 青天の霹靂

ここのところ かなり順調に部員達と打ち解けてきていた。このままいけば、世界征服も出来そうな感じもしていた。



そんな時に狙ったように前触れもなく異変はやってくるものなのである。







夏休みだ夏休みだ。物凄ーーー…くギリギリで補習を免れたので やっと自由の身になれた開放感を感じつつ…


ヴ、ヴー…


久米のスマホが小刻みに震えている。このままだとスマホくんが風邪引いてしまうので優しい久米は手で包み込んで引っ張り出すっ。日高からのラインだった。


[はやくきて]「ドコヘ?!」思わず出番が少なくて忘れかけてた久米のツッコミが炸裂した。


思いが通じたのかすぐ後にGPSの位置が送られてくる。駅前…ここからならそんなに離れていない。


情報のとこに向かうと駅のロータリーの中央にある噴水前で二人の男女がケンカしていた。


一人は制服を着ている部長、川越。もう一人は分かると思うが私服の副部長、大塚。珍しく二人共敵意を剥き出しにしている。


「何でやりもしないで無理だと決めつけるんだ?!」


「出来ないものは出来ないって言ってるでしょう!!」


二人共ヒートアップしている。たまたま通りがかった通行人達も遠巻きに立ち止まって見ていた。


「…あぁ、そうかい。勝手にしろっ!いつまでも自分の殻に閉じこもって自己満足してればいいだろ!」


「何よ!昔っから私を振り回して、勝手なことしてるのは貴方じゃない!」


こんな悪化している状態で、どうやったらいつもの二人に戻れるのか久米も周りにいる人達にも皆目見当がつかない。


「…もう知るかっ!ドコでも好きなとこ行けばいいだろ!」


売り言葉に買い言葉


「そうさせてもらうわ!じゃ」


来る所まで来てしまった。大塚はそのまま駅の改札へ向かう下り階段を駆け下りて行ってしまう。


一人残された部長、川越。呆然と立ち尽くしているその姿に駆け寄る久米。


「部長…」


「あぁ、久米君か…」久米を見て力無く笑う川越。


「もう、終わりだよ」川越はそれだけ言うとその場に崩れるように座り込んでしまった。






「ホントゴメン、私達二人共ダメダメでぇ~」


いきなり謝ってきたのは入間と


「すみません、まさか残高不足で改札通れなかったなんて…」


ものすごく残念な理由を明かす日高。


二人は大塚を追い掛けたのだが、ちょうど電車を降りた人が出てくるタイミングで人を避けながらなのもあってなかなか距離を詰められない状態のまま改札で捕まってしまったという訳だ。多分だけど何も障害物が無ければ秒で捕まえる事が出来たと思われる。


「上り線のホームに向かったのを見送るしか出来なかった〜」右スネを擦りながら残念そうに言う入間は多分…多分だけど、改札のゲートに激突してしまった可能性が高い。


「いや…もういいんだ。彼女には僕は必要ないのだから」


「…必要…ない?」


「あぁ、僕は彼女が創作する為の引き出しが増えるように色んな所に連れ出して様々な事をやらせるようにしてたんだ…だけど、」


川越は大塚に今度の発表用に台本を書いてくれと頼み込んだが、無下に断られてしまったのだという。しかし、それだけでここまで問題になる事はない。


それは簡単に言ってしまえば双方とも一歩も引かなかったが為に拗れていってしまったのだという。


「彼女は『無茶振りするのもいい加減にして!』ってさ…僕が彼女の為と思ってた行為が、彼女の迷惑になっていたって事だよ」


「あっ、もしかして…」久米はこの間、大塚に川越を迷惑に思った事はないかと聞いたのを皆に伝えた。


「私が大塚さんの気にしてなかったものを気にするようにさせちゃったのかも…」久米はあの時に戻ってその事を全部消去したい気持ちになった。


「それはないです」キッパリ言い放ったのは意外にも日高だった。


「大塚先輩は否定したんでしょう。だったら久米さんが気にする必要はありませんっ!」


「…でも」


「う〜ん…じゃあさ、直接聞いてみればいいじゃない?」


「聞いてみるって…誰に?」


「副部長に」


「どうやって?」


「ここに幼い頃からの知り合いがいるじゃない」


入間の言葉に一斉に川越を向く一同。


「な、何だ?」


コレだけだと何をしようというのか理解出来ないので素直に戸惑う川越であった。

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