第40話
炊き出しへの協力。
俺はそのお願いを無下にすることもできず、結局、承ってしまった。
日本人らしい主体性の無さを、いかんなく発揮してしまう俺。
一応、宗教組織に逆らったら何されるかわからないのも考慮している。
魔女狩りみたいな感じで、異端審問にかけられたら嫌だし。
翌日、俺は手土産の饅頭を片手に下げて、大聖堂に向かった。
偉い人を訪問するときには手土産を忘れない、そんな純和風営業の鑑。
やはりカステラを持ってくるべきだったか……。
いや、煎餅の方が……。
しょうもないことで悩んでいたら、大聖堂に到着した。
到着して早々にハマークさんに手土産を渡して、炊き出し会場に移動する。
今回の炊き出しでご一緒するのは、下っ端聖職者と思われる五人のオッサン。
しかも、いずれもガチムチ。
なんで俺のプライベートタイムを、こんなことに……。クソッ。
俺の貴重な人生の一ページが……。
この職場って、美人のシスターさんとかいないんですかね?
浮き上がって躍動するオッサンの筋肉なんて見たくないですわ……。
心が挫けそうになりながら、準備にかかろうとすると声をかけられた。
「チブータと申します」
名乗りながらウィンクをするガチムチ一号。
「ハリーと申します」
名乗りながら、右手の親指を立ててイイね!をしていくガチムチ二号。
「ブータンと申します」
名乗りながら、両手でハートマークをつくって、ラブ注入をしていくガチムチ三号。
ツッコミたくなるが、絶対にここでツッコミを入れてはならない。
クソッ。
俺は一体何を見せられているんだ……。
「フジシーヨと申します」
名乗りながら、アイーンをしていくガチムチ四号。
いや……。それは流石に古くないか?
ああ……。ツッコミを入れてしまった……。
「コニャーンと申します」
名乗りながら、葉巻を勧めてくるガチムチ五号。
一本どうっすか?と差し出された葉巻を、俺は当然のように手で拒否をする。
すると、ガチムチ五号は自分だけ葉巻をくわえ、おもむろに火をつけてふかしだした。
いや……。これから炊き出しするんだから、食べ物の近くでタバコはやめようよ……。
「それでは炊き出しの準備を始めましょう!時間はあまりないですよ!」
彼らの名乗りを聞き終えた俺が呆気にとられていると、ハマークさんから号令が飛んだ。
時間を奪ったのは、そこのガチムチ達なんだが……。
俺はイベントの準備段階にして、すでに心が折れてしまった。
■■あとがき■■
2021.01.14
今回、ご登場いただいた「chibuta」様、「ハリー」様、「bhutan0000」様、「@fujiyoshi」様及び「にゃんこちゃん」様には、この場を借りて御礼申し上げます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます