第33話

 練武祭。

 王立学院における「武芸」とは、弓術・馬術・槍術・剣術・短刀術・体術の六術に大別される。

 それら六術のうち、自らが腕に覚えのあるいずれかを選択し、学年内での順位を競うというイベントなのだが……。


 どうやら、このイベントはガチらしい。

 てっきり「やらせ」だったり、出来レースだったり、遊び半分だったりするのかと思ったんだけど。


 なんでも、外部からの視察が来るので、王立学院卒業後に就職をする生徒たちにとっては重要なアピールタイムなんだとか。

 一方、貴族の当主候補にとっても、一切のやらせ無しでその武力を示せるので重要な位置づけになってくるようだ。


 そういう説明を、ナーギとシンリーキの友人二人から聞きながら、俺は六術のどれを選ぶか悩んでいた。


 六術のいずれもできるが、名のあるしっかりした師に教わったわけではないから困ってしまう。

 実家の抱える騎士に手ほどきをうけたぐらいでは……。

 そうなると、前世からのつながりという観点から剣術かなぁ、と思っていたときだった。



「メシヤ君、僕と剣術で勝負をしろ」

モブが俺に声をかけてきた。


「えっと……、お前はたしか……エロ漫画収集が趣味の……齋藤……」

「全然違う!」

「間違っていたか、すまん。簡単な方の斉藤だっけ……」

「だから違う!エーツ大公家のオリバーだ!」


 なんでも、エーツ大公家出身の方がこのクラスにいたらしい。

 全然気づかなかった……。


 よく見たら、モブとは思えないぐらいの金髪イケメンだし、俺と同じ十歳のくせにどこかマッチョな雰囲気を漂わせている。

 モテそうな外見だから、非モテ歴通算で数十年の俺としては全力で潰したくなってしまう。


 でも、なぜ俺に勝負をふっかけてくるんだろう……。


「君にはクリスティさんは相応しくない」

「ああん?」


 唐突な登場に加え、クリスティちゃん(俺の許婚)に相応しくないとか。

 こいつ殺っちゃっていいっすか?

 すぐさま臨戦態勢に入った俺は、昔の週刊少年●ガジンのヤンキー漫画の如く、中腰からのメンチを切りまくる。


 俺、この王立学院に進学してから、ガン飛ばすかメンチ切るかぐらいしかやってない気がしてきたわ……。


 至近距離でまとわりつく俺がうざくなったのだろう。

 オリバーは視線をクリスティちゃんにうつしながら、こう言った。

「やはり君のような低俗な男は、彼女には似合わない。剣術で僕と勝負をして、僕が勝ったらおとなしく身を引きたまえ」


 目の前にいるオリバーとかいう馬鹿のせいで、クラス中から注目を浴びてしまっている。

 周囲は無言になってしまった。

 そして、クリスティちゃんもこちらのやり取りに気づいたのか、視線を俺に投げてきている。


 だが、俺もこの状態では引けない。


「彼女から身を引くのはお断りする。だが、剣術での勝負は受けてやる。剣術で俺に勝てるとは思うなよ、ガキが」


 こいつとの茶番のために婚約を解消するなどありえないが、勝負は受けることにした。

 絶対にボコってやる。 

 そう俺は誓ったのだった。





■■あとがき■■

2021.01.05

昨日は寝落ちしてしまい、更新ができず申し訳ありませんでした。

日々更新したいと思ってはいるのですが……、妻子が寝付いてからひっそりと作文するスタイルなので……、子供の寝かしつけに失敗して自分が寝付いてしまうという事故が稀に発生してしまいます(笑)

今後も大目にみていただけますと助かります。

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