第34話
エーツ大公家のオリバーとかいうモブと、一か月後に開催される練武祭で剣術対決することになった。
売られた喧嘩を買っただけだが、なんでこんなことになってしまったのだろうか。
めんどくさいことこの上ないが、もはや引けなくなってしまった俺だった。
放課後、友人二人が俺のところに早速寄ってきた。
「よりによって、オリバーと対決とは……」
「とんでもないことになってしまったね……」
そんなに大したことなん?
「エーツ大公家は武家の名門だ。そして、オリバーは生まれ持った才を高く評価されているらしい」
「王国史上最強と称される現大公から、直々に指導を受けてるしね」
なかなかの猛者ということか。
まぁ、俺の方が強いだろうし、問題ない。
「なんでそんなに自信があるんだ……」
「何を根拠に……」
二人は呆れて、俺の方を見てくる。
とはいえ。
この勝負に負けることは絶対に許されない。
俺は、その日から練武祭までの一か月の間に、更なる特訓をすることにした。
幸い、この一か月は準備期間なので、ほとんど武芸以外の授業が自習になる期間だ。
全力で強化に励むことにしよう。
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次の日から、俺はグラウンドで本気トレーニングに取り掛かった。
「で、何をしている」
「また奇行をしているんだね……」
カーフレイズでヒラメ筋を鍛えながら、ヨガの火の呼吸で心肺を鍛えていると、なぜか心配されてしまった。
そんな友人たちを無視して、俺は、ワイドスクワットをしながらの素振りに移る。
「ちょ、これきつい」
「し、死にそう」
なぜか俺の真似をし始めた二人は当然シカトだ。
これは、足腰を日ごろからかなり鍛えていないと厳しいメニューだ。
いきなりやって、ついてこれるわけがない。
二人をほったらかしにして、俺は、ロシアンツイストで腹筋を苛め抜く。
「こ、これ」
「は、はぁっ……はっ……」
次いで、聖闘士●矢で出てきたオーロ●エクスキューションみたいに手を組んで、肩の可動域を確認しながら、振り下ろしと振り上げをひたすら繰り返す。
「「……」」
ここまでで全身の筋肉をほぐした俺は、再び下半身に気持ちを切り替えて、マウンテンクライマーで再び脚を鍛えにいく。
「ぐ、ぐはぁ」
「もう無理……」
そして、俺は走り込みを始めた。
途中、ダッシュを適宜織り交ぜながら瞬発力への意識を忘れない。
えっ、二人?
もちろん、置いていってます。はい。
地面にはいつくばってるからね。
走り込みで向かう先は、オリバー君の訓練スポット。
さて、彼はどんな訓練をしているのかね。
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向かった先では、オリバー君が十人ぐらいを相手に、次々と試合をしていた。
どの相手も、オリバー君よりは二段か三段落ちぐらいの実力といったところだろうか。
学院に通う生徒を相手に訓練をしているのだから、こんなもんなのだろうか。
オリバー君がズバ抜けて強いことだけが分かる。
見る限りでは、実践的な訓練をとにかく繰り返すタイプのようだ。
場数を踏むことで経験を積み、剣術向けの肉体も作り上げているのだろう。
思っていたよりも厄介かもしれない。
オリバー君が情報収集の重要性を理解していないから、室内でトレーニングをしていなくて本当に助かった。
俺は、オリバー君のクセを盗めるだけ盗んで、対策を練ることにした。
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剣道で強くなるには、二つの方法があると俺は思っている。
一つ目は、ひたすら剣道の場数を踏むことだ。素振りだけでなく、試合も交えて、剣をつかった動きにとにかく親しんでいく。剣をつかうための筋肉やセンスは、剣を振ることでしか身につかないことを証明する道といえるだろう。
二つ目は、筋トレだ。そもそも人体を支えているのは筋肉だ。そこを強化することで強固な剣を身につける。これもまた正しい道だ。
じゃあ、俺がどの立場に立つかというと、その中間ポイントです。はい。
剣を振る訓練だけでは限界があるし、筋トレだけでは剣が巧くなりませんので……。
というわけで、夜間の視界が開けていない時間帯に、俺は剣の素振りをすることにした。
夜間に、素振り・切り返し・すり足といった基本動作を確認し、早素振りを限界まで打ち続けて、倒れこむように就寝。
そして、翌朝起床をすると筋トレをし、オリバー君の偵察をしつつ、夜間に剣道の自主練。
そんな日々を送っていたら、あっという間に練武祭の前日になった。
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