第31話

 俺が帰り支度をしていると、二人の男子生徒が声をかけてきた。


「ナーギだ」

「僕はシンリーキといいます」


 お、おぅ。

 なんで、いきなり俺に……。


「いや、そりゃ声もかけるだろ」

「明らかに変だからね。一人だけ私服だし」


 えっ。

 私、どこからどう見ても一般ピープルですけど……。


「「……はぁ」」



 その後、いろいろ根ほり葉ほり聞かれ、俺は現状を説明した。


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「しっかし、ひでぇ話もあったもんだな」

「貴族の世界ではありがちな話……ではないよね。さすがに」


 二人はどうやら良いやつらしく、親身になって話を聞いてくれた。

 ありがたい。


「入学の手引を貸してやる」

「僕は、購買まで連れてってあげるよ。制服とか教科書も買えるでしょ」


 なんだと!

 入学の手引とか存在したのか!ガッデム!

 購買が存在するとか知らなかったし!

 俺の入学までの苦労はなんだったんだ!


「むしろ何の苦労をしてたんだ?」

「そのリュックの中に何が入っているの?」


 俺はお手製のリュックのなかから、おもむろにマイグッズを取り出す。


「サ、サバイバルナイフ?」

「辞書は分かるけど……、狩猟用弓とキャンプ用の鍋?」


 学校に行くまでに遭難したり、狩りの必要に迫られることもあるかもしれないし……。


「これは重症だな……」

「色々こじらせた結果か……」


 なぜか憐れむような目線をもらいながら、俺は入学の手引を借り受け、購買の場所を教えてもらったのだった。


 

 後日、伯爵家の別宅で、情報を止めていた使用人をつきとめて「お前、次おなじことやったらクビな」と警告を発した人がいたそうです。はい。

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