第23話

 離れに移って、前世以来の『自由』を味わった俺は、益体もない思想に憑りつかれてしまう。


 経済的自立。


 久しぶりの俺的パワーワード。

 数多の異世界転生物語のように……俺も日本の知識を持ち込んで、巨万の富を築いてやるぜ!

 その富で、俺はこの世界でハーレムを作り上げるんだ!




 ……などと思っていた日もありました。


 思い立ったが吉日!とばかりに、領都を見て回ったけど、全然ダメでした。

 なんでこう、うまくいかないのかな~。


 領都はそれなりに発展してて人口もあるみたいなんだけれども、商業面での自由度は全然なかったです。はい。


 職人たちの集まりであるギルドが統制を効かせすぎている上に、石工とか皮革とか業種ごとに細分化していて、更にそこで幅をきかせている親方衆は昔ながらのモノづくりに固執してしまっていた。

 しかも、若手でヤル気のある職人(親方衆にとって目障り)は、遍歴職人制度により遍歴職人として修業の旅に出され、流れついた街で運よく腕前が評価されたら店を持てるという謎システム。

 ……流れついた街でも既得権は親方衆に握られてしまっているから、ほぼサクセスすることはできず、そのまま生涯流浪する生活を余儀なくされるというトラップまで仕掛けられているという……。


 なんなんこれ。


 なんで、こんな悪魔的なスキームが出来上がってんの?

 これじゃあ、若者が芽を出すまでのハードルが高すぎるし、既得権握った後には新しいことをヤル気にはならないよね。

 市場競争が機能してないから。


 いくら領主である伯爵の子弟とはいえ、こんな凝り固まった親方衆が新商品開発に耳を傾けてくれるわけもなく。

 むしろ、父に通報されそうな気配がしたので、速攻で退散しましたわ。


 手頃なところにコングロマリットな企業が存在して、俺の話を聞いてすぐに商品化して国中に販売し、俺には売上の何割かが回ってくる。

 そんな甘い話はないんですね。

 トホホ……。


 しょうがないから、ダイアリーっぽい手帳と万年筆のはしりみたいな謎ペンを買って、メモを習慣づけることにした。

 この世界で不便なことであったり、こんな商品あったらいいなって思ったことを思いつくままに書き留めることにしたのだ。

 いつか、これらのアイデアが花開く時が来てほしいと願いながら。


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 領都を視察した後、俺は農家のマイクさんのところに顔出しをした。

 異世界から現れた、隙あらば畑を見に行く勇者。それが俺。プギャー。




 マイクさんの家につくと、なぜか家の中に招かれた。


 なんでだろう。

 俺、またなんかやったっけ……。

 マイクさんに怒られるようなことは特にしてないはずなんだけど。




 そんな風に俺が疑問を抱いていると、おもむろにマイクさんは革袋を渡してきた。

 不審に思った俺が革袋の中を覗くと、その中にはたくさんの貨幣が入っていた。

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