第72話高級な宿
ギルドで5人組に絡まれて、それを見たカトレア達に弱い者いじめをしていると頭を叩かれた後、事情を説明しようやく自分は悪くないと納得してもらった後、カトレアが持って来た依頼書に目を通す。
「うん、ストーンキラービーのハチミツ採取依頼だね…」
「そうよ。 どう見てもそうでしょ! とりあえず場所取りはリーズに任せて受付カウンターで依頼を受けて、ハチミツを納品するわよ!」
そう言ってリーズを席に残し、カトレアとルイーズさん、そして自分の3人で受付カウンターに行き、依頼を受けた後で依頼のハチミツを納品する。
買取価格はキャールよりも若干高く、中樽は金貨70枚、ハチの子入りの大樽は金貨220枚、ローヤルゼリーは1ビン金貨180枚で買い取ってもらえた。
そして大量の金貨を受け取ると、周囲の冒険者達からは驚いたような、そして羨望に満ちた視線を向けられ、先程絡んで来た5人組はと言うと、そそくさとギルドを逃げるように出て行ってしまった。
まあね、いきなりギルドに来て依頼を受けた直後に依頼品を納品、しかも依頼された量よりもはるかに多い量を納品し合計で金貨470枚も受け取ってればそうなるよね…。
そして席に戻ると、食事を注文し、食べながら今後についての話をする。
依頼書を一通り見て来たらしいけど、依頼内容はキャールと同じでCランクの依頼が最高位でBランク、Aランクの依頼は無かったとの事。
さらにCランクの依頼で一番難しそうな物でも開拓村候補地周辺の魔物討伐という依頼らしく、期間は1週間、魔物、魔獣の討伐数100匹以上という内容で金貨5枚、別途討伐した魔物、魔獣の買取という内容らしい。
「せっかく高級な宿を10日分お金払ってるんだし、1週間以上かかる依頼を受けるのはどうかと思うんだけど…」
「そうね、これは参考までと言った感じよ。 とりあえず10日間は王都周辺で常時依頼の薬草採取と魔物討伐をして、午後は森で訓練ってとこね。 キャールでは狩り過ぎてオークとか魔獣の買取価格が値崩れし始めてたけどここなら10日ぐらいで値崩れもしないでしょうし」
「そうだな、ただあたしとしては、迷宮探索もしてみたいんだけどな」
「迷宮ね…、確かに、王都の冒険者の多くは迷宮探索で生計を立ててる人が半数近く居るみたいだし、上層階は荒さずに下層を攻略するのもいいわね。 そこそこ強い魔物とか居そうだからいい訓練になるし」
う~ん、元迷宮の主が迷宮探索…。
いやむしろ他人の迷宮を襲撃する計画を立ててる!!
そんな事を思いつつも、ギルドを後にして宿に戻る。
宿の部屋はリビングとは別に四つのベッドがある寝室、そして広い風呂場、さらには個室トイレがあり、ソファーやベッドもふかふかで、その他調度品も部屋の高級感を引き出している。
まずは風呂場を見ると、結構広く作られており、湯船だけでも3×3メートルはありそうな感じで思いっきり足を伸ばして湯に浸かれそうなうえ、魔道具を使用しているのか常に湯船にお湯が流れ込んでおり見るからに清潔感が保たれている。
そう思っていると、ルイーズさんは早々に鎧と服を脱ぎ全裸になると風呂に飛び込む。
「だぁ~!!!! 男の前で全裸になるのもだけど、せめて掛湯をしてから入って!!!!!」
「んん? なんだ掛湯って?」
そう言いながら湯船に浸かり全身の凝りをほぐすかのように伸びをしているルイーズさんに入浴のマナーを伝える。
とは言え自分の、と言うよりも日本の入浴マナーでこの世界では湯に浸かりそして湯の中で汚れを落とすのが普通らしく、不思議そうな顔をしている。
「なんかカツヒコが居た世界では風呂入るのもめんどくさいんだな…」
「いや、普通ですから!! そして個人的には風呂に浸かる前に身体と頭を洗ってから湯船に浸かって欲しいくらいですから!! 石鹸もあるんですから、まずは身体を洗ってから湯船に入ってください!!」
そう言うと、ルイーズさんは渋々と言った感じで湯船から上がり、身体を洗い出す。
いや、そこは自分が外に出てからとか、隠すとこは隠すなりしてよ…。
なんで堂々と男の前で全裸を晒してるの!!
逃げるように風呂場から出るとリビングのソファーで寛ぐカトレアとリーズの所に行きカップに注がれたお茶を飲む。
「カツヒコ、あなたルイーズに入浴マナーだって説教してたけど、あなたの居た世界では風呂に入るにも作法があるの?」
「う~ん、まあ掛湯をするのは作法と言えば作法だけど、まあ湯船は複数の人が入るものだから最低でも身体に着いた埃や汗を流してからって感じかな…。 身体と頭を洗ってからと言うのは自分が前世で実践していた事だけど…、それに先に身体と頭を洗ってから湯船に入ればヒートショックになりにくそうだし…」
カトレアは少し考えた後で「ヒートショックとは何?」との事だったので、簡単に説明をし何となく納得してもらう。
決してカトレアをお年寄り扱いした訳じゃないけど、若くてもヒートショックになる可能性もあるから気を付けないとね。
そんなカトレアとのやり取りを聞いていたリーズが、何故か驚いたような顔をしている。
「どうかしたの?」
カトレアがそう問いかけると、リーズはハッとした表情をし、恐る恐ると言ったように質問をして来た。
「あ、あの~、転生者って…、カツヒコさんは転生者なんですか?」
「あっ! 言ってなかったっけ…、って言ってなかったよね。 前世の記憶がある転生者なんだ、まあだからと言って何か特別な力がある訳でも無いんだけど…」
あれ? リーズはフリーズした…。
そんなに転生者って驚くべき存在なの?
ルイーズさんはふ~ん、って感じで終わったんだけど、あれはルイーズさんだから?
フリーズしているリーズの目の前で手を上下させ声をかける。
「あっ、スイマセン、なんか転生者とか召喚者とかって耳にする事はあっても会ったのは初めてだったもので…。 それにしても転生者って意外と普通なんですね」
「いや、転生者や召喚者ってどんなイメージなの?」
なんかペコペコ頭を下げるリーズに気にしないでといい、お茶を飲む。
それにしても自分が転生者って知っただけでフリーズするぐらいならカトレアの事を知った時はどうなるのやら…。
先が思いやられると思っていると、風呂上がりのルイーズさんが全裸のまま風呂場から出て来た。
「お~い、いい風呂だったぞ~! カトレアも入れよ! 400年以上ぶりの風呂だろ、ゆっくりと堪能してきたらいい」
「えっ? 400年以上…ぶり?」
あっ、再度リーズがフリーズした…。
カトレアはルイーズさんと入れ替わる様に風呂場に行った為、リーズの再起動を待って説明をする。
ただルイーズさん、とりあえず服を着てください!!
毎回言ってますけど、お年頃の男が居るの忘れないでください。
見た目は15歳でも中身は20代後半なんですから、視線が勝手に胸や下半身にいくんですから!!
いや、変態でもスケベでも無いよ! 健全な男の性だからね。
それにしてもリーズがカトレアの事情を受け入れてくれるかな…。
それが心配だ。
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