第71話樹の国王都バラムイ

王都に入る人達が並ぶ審査の列を素通りし、衛兵に冒険者証を呈示すると特に何か聞かれるでもなくすんなりとバラムイに入る事が出来た。


王都と言うだけあってキャールと比べ人口も、そして商店などの規模大きく、大通りは人が溢れ、荷馬車が行き交い、食堂と言うよりレストランと言うようなしゃれた店が多くある。

そして並べられている商品も、多様で服屋などは店先にラノベなどでよくある貴族が着る服や豪華なドレスなどが飾られ、食品を扱う店にも多様な野菜や果物が並んでいる。


道行く人もキャールより多様で獣人にドワーフに加え見た事ない種族の人なんかも居る。

ボソッと流石にエルフは居ないかと言うと、それを聞き逃さなかったルイーズさんが少数だけど居ると教えてくれた。

ただエルフの殆どは王都に定住している訳でなく、森の中にある里から売買の為に来るだけらしく滅多に見かける事はないらしい。

そしてエルフが作る魔道具やポーションそしてその他の物も品質が良く国としても国内に流通をさせたい為、身分証などが無くてもエルフと言うだけで自由に街や王都に出入りできるとの事だ。


エルフの里か…。

一度、いやエルフの中に居るかもしれないエロフに会えるかもしれないから何度でも言ってみたいな…。


そんな妄想をしつつ大通りを歩いていると、まずは冒険者ギルドに行こうというルイーズさんに対しカトレアはまずは宿を確保してからと言い、街の警備の為に巡回している兵士に声をかけ宿の情報を聞き出している。

恐らく金に糸目は付けないとでも言ったのか、兵士から教えられた宿2軒ともキャールで泊まっていた宿と比べようもない程大きく冒険者が気軽に泊まるような場所とは言えないような宿だったが、1軒は満室、もう1軒は4人用の大部屋と1人部屋が空いているのみとの事で、カトレアが4人用の大部屋をとりあえず10日間確保した。

どう見てもその辺の宿と違い内装も豪華で従業員も洗練された動きで出迎える姿から高いだろうと思ってはいたが、予想通り1人一泊二食付きで金貨1枚との事で4人で10日間、金貨40枚だった。

なぜにリーズが一緒なのか疑問だったのでカトレアに聞くと本人の意思とは関係なく魔闘技使いの割にはまだ未熟で応用が出来てないから自分達と一緒に鍛えるという言葉が返って来た。


いや、まずは本人の意思確認をしようよ…。

お金は沢山あるけど、1泊一人金貨1枚って日本円にしたら10万円だよ?

日本でも1泊10万の宿って高級ホテル並みなのに仲間でも無いただ途中で知り合っただけの人の分までお金払って泊めるのおかしくない?


そんな自分の抗議も、カトレアがリーズさんに説明をすると、高級な宿に泊まれるうえ、魔闘技とその応用を教えてくれるとの事に大喜びし、しばらくの間一緒に行動を共にする事となった…。

カトレアもだけど、リーズさんももう少し警戒しようよ。

カトレアが悪意ある人間だったらどうするんだか…。


そして1人部屋空いていたんだよね?

そこを自分用に確保とかしてくれないの?

なぜに女性3人、男1人同部屋なの?

もうすぐ16歳になるとはいえ中身は30代の男なんだから間違えは…、カトレアとルイーズさんが居るから起きないだろうけど着替えとかさ…、色々と目のやり場とかに困るじゃん。

そう思うも、どうせ野宿した際など同じテントで寝る事もあるのだからと言われバッサリと1人部屋の件は却下された。


部屋を確保し終え、ギルドへ行くと、キャールにあったギルドの3倍はあろうかという建物、そして中も広々として、ゆったりと間隔を開けて設置されている受付や買取カウンター、ランクごとに依頼が張り出された掲示板、そして小綺麗な酒場、そして話によると地下には広い訓練場、2階には資料室まであるらしい。


都会は凄いと言うべきなのか…、それともキャールより王都の方が割の良い依頼が多くあってギルドが儲かっているからなのか…。

そう思いつつ、張り出された依頼の中にストーンキラービーのハチミツ採取依頼が無いか探しに行ったカトレアとルイーズさん、そしてそれになぜかついて行ったリーズだったが、ルイーズさんに酒場の席を確保しとくように言われたため、空いてる席に座り王都を拠点としている冒険者の観察をする。


見た目は普通の冒険者ばかりで豪華な鎧を着ていたり、圧倒的な威圧感を出している人は居なさそうだけど冒険者の数はキャールより多い気がする。

とは言え昼間から酒場でたむろして酒を飲んでいるぐらいだからそこそこ収入があってお金に余裕があるのか、依頼達成の祝いをしてるのかだろうけど、見た限りはそこそこ金回りは良さそうな感じだ。


そう思いつつ、席でカトレアたちを待っていると、5人程の冒険者に囲まれた…。

いや、何でギルドに着くと毎回絡まれるの?

そして自分を囲んだ5人組に目をやると、恐らく自分と同年代ぐらいだろう冒険者がいきなりつっかっかって来た。


「お前、見ない顔だな! 何処から来た? ランクは? いつ登録した?」

5人組のリーダーらしき奴がそう続けざまに質問をして来たので隠す必要も無いので出身村と、キャールから来たこと、冒険者登録をしてまだ1年経ってない事まで言うと、5人組は何が可笑しかったのか大笑いをしだした。


「お前、田舎村から出てきて一攫千金を狙って冒険者になっただけの田舎もんか!! まあお前みたいな田舎もんが王都に憧れるのは分かるが身の程をわきまえろ! ここはお前みたいに実力も無い奴が来るところじゃ無いんだよ!!」

挑発なのか蔑みなのか、5人組はそう言いながら人を見下した目で見ているが、恐らく同年代ぐらいという事はGランクかFランクぐらいだろうから自分がムキになるのも大人げないと思い、とりあえず無視を決め込むことにする。


「おい、田舎もん!! 聞いてるのか? 悔しくて言葉も出ないのか? お前みたいな奴はとっとと村にでも帰って畑でも耕してろよ!」

流石15~6歳ぐらいが思いつく挑発するような言葉を更に無視をしていると、相手にされてない事にやっと気が付いたのか、いきなり胸倉を掴んで来た。


「てめぇ! 無視してんじゃねえよ!! 依頼もロクに受けられねえような奴が調子乗ってるとどうなるか教えてやろうか!!!」

「どうなるの? 反対にこっちが聞きたいけど?」


そう言い、胸倉を掴む腕を掴み力を込めると先ほどまで威勢よく絡んで胸倉を掴んだ冒険者が苦痛に顔を歪め、掴んだ胸倉を放し、自分が掴んだ腕を強引に振りほどき距離を取る。


「てめぇ!! なにしやがる!!」

「何しやがるって、いきなり胸倉掴まれたから、その腕を握って少し力を込めただけだけど? まさか痛すぎて泣きそうになった? そんなに力込めて無かったのになんかゴメンね。 絡んで来るぐらいだからそこまで弱いとは思わなくて…」


挑発されたお返しに挑発をしてあげると、先程掴まれた場所をさすりながらも剣の柄に手をかけようとした瞬間、不意にスパァーンと言う音が聞こえたと同時に自分の後頭部に鈍い痛みを感じその場に頭を抱えてしゃがみ込む。


「カツヒコ、あなた席を確保しとくように頼んだだけなのに何弱い者いじめをしてるの! どう見たって格下の格下、見た限りGランクか良くてFランク程度相手に何やってるの!! あなたはCランク冒険者なんだから駆け出しには優しくしなさい!!」

後ろから自分の頭を叩いたカトレアは5人組を見ながらそう言うと、依頼書をテーブルに置き、椅子に座る。


「いや、自分は絡まれていた被害者なんですけど…」

そう抗議の声をあげるも、カトレアは何言ってるの? という顔をし、ルイーズさんも程々にしとけよって感じの顔をしている。

リーズは…、呆れた顔をしている!!

いやだから、自分は絡まれた被害者だってば!!!!


そして絡んで来た5人組は、カトレアやルイーズさん、リーズを見ると自分がCランクだという事に驚くよりも、ちょっと力があるからって女を囲い良い気になりやがってと捨て台詞を言って去って行った…。

そこの5人組!! 女に囲まれていい気になってるって、そこは訂正が必要だよ!!

思いっきり振り回されてるし、カトレアとルイーズさんに至ってはマジ強いし、手合わせしてもボコられるだけだからね…。

ボコられた後で回復魔法を毎回自分にかけてるから魔法の練習にもなるけど、結構痛いからね! いつも一方的にボコられているからね!!


そこんとこ間違えないで!!!

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