第27話蘇生
「ふぅ~、何とか倒せた!!」
そう言ってカトレアが戦っていた白いリビングアーマーを浄化し安堵の顔を浮かべますが、カトレアは何故かジト目でこちらを見てる…。
えっ? なんかまずい事しました?
「カツヒコ、リビングアーマー相手に剣とか槍で戦わなかったの? 何のために剣技や槍技を教えたとおもってるの? あなた魔法に頼り過ぎてるけど、魔力が尽きたら頼れるのは自身の技術だけなのよ! ここは魔力の密度が濃いからいくら魔法を使っても魔力の回復速度が速いから魔力が尽きる事は無いけど、普通こんな特殊な場所は無いんだからね…」
カトレアが真剣な表情でお説教を始めたので、大人しく聞いていますが、言われていることがごもっともな為、反論が出来きないけど、あれは剣とか槍で何とかなる相手じゃ無くない?
「一応、槍で応戦したんですが、あっけなく防がれて手も足も出なかったので…」
「あなた魔力を剣に纏わして扱う方法を教えたわよね? 使ったの?」
「いえ…。 今言われるまで覚えた事忘れてました…」
そう言う自分に対し、カトレアに追加のお説教をされた。
そしてそんな事では冒険者として下の下との事で、追加修行が決定した…。
いや、100階層の結界が無くなったんだから修行じゃなくてダンジョンの外に出るのが先じゃない?
「まあそれは後でいいとして、カツヒコ、このリビングアーマーの残骸は回収しときなさい、これはただの鉄じゃなくて、濃い魔力が籠った鎧、それに剣も盾もそうそう手に入らない代物よ。 まあ白い方は傷だらけだから潰して素材にする事になるでしょうけど、それでも買い手は付くわ」
そういいカトレアは、リビングアーマーの残骸を手に取り説明をしてくれますが、剣は刃渡り2メートル以上、盾もかなり大きく、どう考えても使える人間がいるとは思えないんだけど。
まあ鍛冶屋さんとかで打ち直して人間が使用できる大きさにしたりするんだろうな…。
そう思いながらアイテムボックスにリビングアーマーの残骸や剣と盾を黙々と収納しておきます。
ていうかアイテムボックスはどれだけ物が入るんだ?
結構な量が入っている気がするんだけど…。
リビングアーマーの残骸を回収し終え、一息ついたところで本来の目的であるカトレアの蘇生法を話し合う。
お茶を飲みつつカトレア蘇生計画を話し合い、どうやったら蘇生が成功するか案を出し合ってますが、中々纏まらない…。
カトレアは勝手に生命のネックレス、命の指輪を装着して 「なにも起きないじゃない」 とか言ってるし。
話が進まない…。
そして色々と検討し、推測を立てた結果、アンデッドのカトレアには血が流れていないので、血を飲み干した直後に生命のネックレス、命の指輪を装着して貰う方法を試す事になったけど、飲み干した血液はカトレアの体内をながれるのか?
そう疑念を抱いていると、カトレアは一抱えはあろうかと思われるビンを持ち上げゴクゴクと喉をならし自分の血を飲み干し、手際よく生命のネックレス、命の指輪を装着して何も起きないじゃないと文句を言っている。
やっぱりアンデッドから人間に戻すことは出来ない?
そもそもアンデッドって死んでから死体に新たな命が宿ったって言う分類に入るのか?
「カトレア、アンデッドって一応生きてるって扱いになってる? てことはアンデッドのカトレアを殺したら生命のネックレス、命の指輪が発動するんじゃない?」
「はぁ? アンデッドなんだから死んでるでしょ! 何故生きてるって扱いになるのよ」
「いや、だってカトレアは普通に話してるし剣で斬られたら死ぬでしょ?」
「斬られれば死ぬわよ、でもアンデッドは元々死んだ人間なのよ? 更に殺してどうなるってのよ」
「うん、だからアンデッドのカトレアを殺したら生命のネックレス、命の指輪が発動して行き返るかな~って…。 同じ蘇生効果の物が二つあるから、殺したらアンデッドとして生き返るのを通り越して、人間として生き返るかな~って」
「そんなうまくいくと思ってるの?」
「分からない…。 まあ最低でもアンデッドとしては生き返るんじゃない?」
「何その確証のない曖昧な答えは…。 もしかして私を倒して一旗上げようとか企んでるの?」
「いや、結構な量の財宝や魔道具とかあるから…。 一旗上げる必要ないというか既に一旗上がってるし」
「まあそれもそうね、既に一回死んでるし、このまま消滅しても特に未練も無いから試してみる価値はあるかもね」
そう言ってカトレアは、部屋の中央にある石櫃の中から短剣を持ち出してきます。
「それは?」
「私の命を奪った短剣、一説には神から与えられた金属で出来ていると言われている物よ」
「神から与えられた金属? なんか胡散臭くない?」
そう言いつつ短剣を受け取り鑑定をすると、【神鉄の短剣(神の力が宿った鉄から出来た短剣)】と頭の中に鑑定結果が浮かび上がった。
いや、特殊能力とか無いんかい!!
丈夫とか、魔を払うとか、そう言うのは無いの?
ただ神の力が宿った鉄から出来た短剣って…。 なんで貴重な物で特殊効果も無い短剣作ってるの?
「カツヒコ、これで私の心臓を刺してみろ! 生き返らなくても私の命を絶った短剣で消滅するならそれも一興、既に人では無く魔物になっているんだからな…」
「一興なの? 普通は自分の命を奪った短剣でもう一回殺されるのは嫌だとか言わない?」
カトレアは短剣を自分に渡すと、その場に仰向に寝て目をとじて早く刺せと言った感じを醸し出していますが、アンデッドとは言え、先程まで話をし、魔法や剣術を教えてくれていた相手に短剣を突き立てるのは、どうしても躊躇いが生まれ、身体が思うように動かない。
「どうした、早くやれ、成功すれば生き返るんだから問題ないだろう!」
「ッツ!!!!」
そんなカトレアの声に意を決し短剣を心臓の辺り目掛け振り下ろし突き刺します。
直後カトレアはビクッと身体を痙攣させ身体から力が抜け動かなくなった。
短剣を引き抜くと、血は出ないものの、先程まであったカトレアの存在も希薄になった。
直後生命のネックレスと命の指輪が光輝いた瞬間、ネックレスも指輪も砕け散り、光がカトレアを包み込みカトレアの体の中に吸い込まれていった。
「えっ? これはどうなった? カトレア?」
そんな言葉が口からこぼれるが、返事は無く、カトレアは横たわったままピクリとも動かない。
首筋に手を当てて脈があるか確認をすると、どうやら血液が循環しているのか鼓動に合わせトクトクとした感覚が指先に伝わり、体温もほのかに温かくなっている感じがする。
うん、生きているね…。
一度死んで生き返ったって事で良いのかな?
「う、うぅ~ん、短剣を刺された感覚があった後、意識が途切れたがなんか不思議な感覚があった後意識が戻ったんだが私はどうなったんだ?」
暫くすると寝起きのような感じで、ゆっくりと目を開けたカトレアはそう言いながら起き上がると自分の身体で変わったとこが無いか状態の確認をし満足そうな顔をしている。
自分が見る限り、見た目ではカトレアに変化があった様子はなさそうだけど…。
「カトレア? どんな感じ? 人間に戻った?」
恐る恐る声をかけてみるが、カトレアは自分の言葉が耳に届いていないようで、自身の身体を眺めつづけ、なにやら考え込んでいる。
「カツヒコ、この前あった、真実を移す鏡を持って来てくれるか? 確かに血が巡っているのは分かるがノーライフキングの時と同じような感覚もあるんだけど…。 なんというか人間に戻った感覚が湧かない…」
そう言うカトレアに真実の鏡を持って来て見せると、鏡に映る姿は、人化した時と同じ人間のカトレアが映し出されます。
「蘇生成功じゃない? 鏡に映るカトレアは人間の姿だし」
「そうね、でもなんか、こう、自分の中にノーライフキングの時と同じような感覚があるのよね…。 ちょっとその鏡持ったままでいて頂戴」
そうカトレアが言うので鏡を持ったまましばらくその場で佇んでいると、急に鏡に映るカトレアがノーライフキングになる。
「どういう事? 蘇生失敗?」
驚きの声をあげる自分に、少し何か考え込んでからカトレアが現状を説明しはじめる。
「恐らく蘇生は成功してるわ、ただノーライフキング、言うなれば魔物だったのを無理やり人間に戻した影響なのか私の中に人間の私とノーライフキングの私が居るって感じかしら、まあ自分の意思で切り替えが出来るから人間としての蘇生と併せてノーライフキングとしての蘇生も成功したってところかしら」
「そう、まあ蘇生が成功したなら良しという事でいいのかな…、人間バージョンとノーライフキングバージョンがあるって事は相手によって切り替えて戦えば戦術的に有利かもしれないし良いんじゃない?」
「あなた、やっぱり普通じゃないわね? そもそもノーライフキングだった私と普通に話してるし、人間とノーライフキングのハーフみたいな状態の私にも驚かない、どういう環境で育ったらそうなるの?」
「まあ創作物とかが溢れる環境?」
そう答える自分にため息をついたカトレアですが、人間に戻れたことで幾分か嬉しそうな感じの顔をしている。
「さて、触媒となっていた血も私の身体に戻ったし、トラップも片付けたから結界も消えているわね。 魔力も上層階に流れて行っているし、このダンジョンも正常に戻るでしょ」
「正常に戻るって、100階層に階層主が出現するって事?」
「さぁ~、まあ出現しても倒せば良いだけだし、丁度いい運動にはなるでしょ。 じゃあとりあえずあなたがやっていたアイテム類の仕分けをしてから収納しダンジョンを出ましょう。 私は貴方の戦いを見学するから、剣と槍の技を磨く為に魔法無しでダンジョンを出るわよ」
えっ? 魔法無し?
剣と槍だけ?
ちょっとカトレアさん? 鬼教官じゃないですか…。
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