第26話トラップ

カトレアの血が入った瓶を持ち上げると、台座に仕込まれた魔法陣が光り出し100階層に振動が起きる。


振動は徐々に大きくなり、奥の部屋が光ったと思うと、暴風のように荒れ狂う魔力が部屋中に吹き荒れ、それが収まると、白い鎧と黒い鎧のリビングアーマーが現れ、仁王立ちしながら剣をこちらに向けて構えた。


デカい!

2メートル以上ある? それに盾と剣持ってるけど、なんか全く隙が無さそうなんですけど…。


そう思いながらカトレアの方を見ると、何故か楽しそうな顔をして剣を構えてるし。


「カトレアさん? 一応聞きますけど、あれ倒せますか?」

「そうだな、相当な魔力に隙の無い構、相当骨が折れそうだが勝てない相手ではないわね…」


そんな言葉とは裏腹に楽しそうな顔をするカトレアですが、自分攻撃魔法はカトレアの1/10ぐらいの威力しか出せないし、剣技とか初心者クラスなんですけど…。


そんな自分の気持ちは全く理解していないであろうカトレアは小手調べだ! と言わんばかりに地面を蹴ってリビングアーマーに斬りかかると、甲高い金属がぶつかる音が数度響き、間合いを取ったカトレアが楽しそうな顔をしている。


「見たか? カツヒコ、こいつらかなりの相手だぞ!本気で無いとはいえ私の初撃を余裕でさばいたわ」


なんでそんなに楽しそうなの?

確かに長い間ここで一人ぼっちで戦う相手もいなくて寂しかったのは分かるけど、こっちは生きるか死ぬかだからね?

自分、戦闘狂じゃないからね?


自分に向かってっ来た黒いリビングアーマーの剣を覚えたての結界で防ぎますが、どうやらギリギリ結界を破壊する威力は無い様でヒビが入ったものの結界は自分を中心に球形を保っている。

よし、このまま結界を維持・修復し身を守りつつ槍でリビングアーマーを突っつこう。

さっき浄化魔法を喰らわしたけど効果なかったから、槍で鎧の継ぎ目を刺してそこから浄化魔法を流し込もう!


そう決めると球状の結界を縮小したうえで念のため二重にして槍を突き出すが、どうやらこれまで戦って来たリビングアーマーとは全く異なる機敏な動きで槍をよけ結界に剣を叩きつける。

結界が二重の為、一撃で破壊されないのはいいけど、自分の槍捌きじゃ有効打を与えられないし、これはカトレアが白いリビングアーマー倒して黒いのも倒してくれるのを待つしかないか…。


そう思いながらもカトレアの方を見ると、楽しそうに笑顔を浮かべたカトレアが白いリビングアーマーと戦っていますが、白いリビングアーマーはカトレアの剣戟を受けて白い鎧の所々がはがれ金属が見えだしているけど、戦いを楽しんでいるようでこちらを見向きもしてくれないし、助けてくれる様子も無い。


まあ魔力に余裕はあるから結界を長時間維持するのは可能だから自分は大丈夫だろうけどなんかこの黒いリビングアーマーを倒す方法とか無いのかな。


そんな事を考えているとカトレアが魔法はイメージと言っていたので、結界は触手っぽくすることもできるのか? なんて事を思ったけど、ふとした思い付きで出来るとは限らないし、二重に張った結界の外周部分を触手のイメージで形を変えようとか、思い付きでできるのか?


一応チャレンジをしてみるが、ニョリニョロと何本も触手が出る感じでは無く、球形の結界がグニュャリと形が変わる感じが精一杯だ…。

その間も黒いリビングアーマーは剣を結界に叩きつけ斬ろうとしてくるし…。


やっぱダメか。

まあリビングアーマーの触手プレイを見たかったわけでも無いし、むしろ見ても面白くないからその辺はどうでもいいんだけど現状が変わらずなのは困るな…。


そう考えている間も黒いリビングアーマーは結界を剣で斬りつけてきますがグニャリと歪んだ結界が攻撃を続けた成果と感じたのか更に距離を詰めてくるんだけど…、いや来ないで下さい!!


う~ん、グニャリと結界を流動的に出来るって事はこのままリビングアーマーを結界で拘束出来ないかな?

そんな事を思いつき、リビングアーマーとの距離を詰め結界をぎこちなく流動的に動かしてリビングアーマーの足に結界を包み込むように動かして拘束を試みる。

リビングアーマーは突如足にスライムのように纏わりついて来た結界に驚いたようで剣で斬りつけるが結界は硬質なものから流動的なものになっている為、斬る事が出来ずで傍から見たらジタバタしている。


これなら行けるかも。

そう思い槍を鎧の隙間に突き刺して鎧の内部に浄化魔法を流し込む。


浄化魔法を流し込まれた黒いリビングアーマーは苦しむ様にもがき暴れ、その度に槍が抜け、再度槍を突き刺し浄化魔法を流し込むを繰り返すと徐々に抵抗が弱くなり遂には動きが止まった。

トドメとばかりに槍を通して浄化魔法を流し込むとリビングアーマーは一瞬、ビクッとし直後動きを止め、内部が浄化された事で鎧もバラバラになり辺りに散らばった。


流石にトラップで出て来るリビングアーマーだけあって魔石も大きいな、大体20センチぐらいか…、色も黄色いし普通のアンデッドじゃなく階層主クラスだったんだろうか。


そんな事を思いながらもカトレアの方を見ると、確実に攻撃を受けているのに決定打を喰らっていないのかボロボロになりながらも動きの衰えない白いリビングアーマーがカトレアと剣を交えている。


よしカトレアと戦っているリビングアーマーも同じ戦法で浄化しよう!!

そう決めると結界を流動的に動かしながら白いリビングアーマーに向かって行く。


やっぱこれって常識はずれな結界の使い方なんだろうな…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る