第28話地上へ1

100階層に有った品々の鑑定を一通り終わらせアイテムボックスとアイテムバックに収納し終わったので、当初の目的地であるキャールの街に向かう為にダンジョンを出る準備をする。


カトレアの話では、階層主は大体1日経つとダンジョンの魔力で復活するとの事だったけど、100階層に数日留まって居たが階層主は現れなかった。


「カトレア、100層の階層主現れないのってカトレアが階層主で生きているから?」

「多分、階層主が現れない所を見るとそうなんでしょうけど、居なくても問題は無いでしょ。 そのうちカツヒコが空けた最下層の宝箱も復活するでしょうし、100階層に着いたら階層主と戦わずにお宝が手に入るんだから誰も文句はいわないんじゃない?」


「まあ確かに、最深部に溜まった魔力で生まれた品々は 最上級のSランクポーションだけでも4個、そ他のポーションもAランクかBランクばっかだし、宝石も魔道具もかなりあったから、100階層に到達した人は笑いが止まらないだろうね」

「いや、そうはならないわよ、今までは結界で魔力が100階層に溜まっていたけど今は上層階にも魔力が流れているからそこそこ良い魔道具や宝石とかぐらいでしょうね。 それにしても女神の血、今はSランクポーションって呼ばれてるのね。 どんな傷も病気も、そして欠損部位すらも癒し、生きてさえいれば全快するポーションが4つもあったなんてね」


「女神の血って昔は呼ばれてたんだ、欠損部位すらも治すって売ったらどの位の価値になるんだ?」

「さあ知らないわ、私が生きていた時は、欠損部位を治すぐらいの治癒魔法を使える人間は何人か居たから…。 まあ400年以上の月日が経ってるから普通に作られてるんじゃない?」


「昔はそんな治癒魔法を使える人がそれなりに居たんだ…」

「そうよ、冒険者のランクも変わったみたいだけど、私の頃は、木、石、鉄、銅、銀、金、白金の7階級で石ランクならオーガを一人で倒せるぐらいだったのに、今はG~Sの8階級、それもDランクの4人ぐらいのパーティーでオーガを倒せる程度って聞く限り質が落ちたとしか思えないわ、まあそれだけ平和って事かもしれないけど」


「じゃあこれは? 転移魔法陣って鑑定結果が出たんだけど」

そう言って2メートル四方の紙に何やら複雑な魔法陣が書かれた紙を広げるとカトレアが慌ててそれを止める。

「待ちなさい!! それに絶対魔力を流し込んだりしたらダメよ!! 何処に飛ばされるか分からないんだから」


「えっ? そんなに危険な物?」

「危険な物ではないわ、ただそれは魔力を流し込んで発動すると、転移魔法が発動するのよ。 何処に転移するようになっているかもわからない物を使うと最悪辺境や孤島に飛ばされる可能性もあるから注意が必要なのよ」


「うわぁ、えぐ…。 それで何処に転移するかを調べる方法はあるの?」

「無いわね…。 だから危険なのよ、分かった? 絶対に魔力を流し込んで発動させたりしたらダメよ!!」


カトレアが必死に止めるって相当危ない代物なんだろうな…。

アイテムボックスに保管して死蔵させよう。


その後、アイテムについて聞きながら雑談をしていると、カトレアは長く暮らした100階層から出られるのが嬉しいのか時々、感傷深い目で広い部屋を眺めている。


「カツヒコ、準備はもう出来たか? アイテムバックの中にアイテムバックは入らないがアイテムボックスの中には入っただろ? そうすればアイテムボックスの容量以上に荷物を持ち運べるから便利でしょ?」

「うん、確かにね、それにアイテムバッグごとに宝石類、魔道具類、武器類、防具類と分けて入れておけるから取り出すときも便利だしね」


そう話しているとふとカトレアが真顔になります。


「どうしたの?」

「いえ、そう言えば帝国の賢者達が国を6つに分けて統治してるのは聞いたけど、どんな感じに分かれたの?」


「う~ん、地図を見た事ある程度だけど、今いる場所が樹の国、建国の賢者の名前からルイラバーク王国とも呼ぶ人も居るみたいだけど、樹の国で通ってる。 6国の中心にある光の国、サイパーレン王国の南側に位置してる」

「そう、光に国を作った賢者はサイパーレンと言うのね…」


「それがどうかしたの?」

「いえ、何でもないわ、それで?」


「それでって…、まあいいけど、光の国を中心に北に火の国、東に水の国、北西に土の国、西に風の国、あとはさっき言ったように南に樹の国って感じ?」

「そう、でも何で疑問形なの?」


「いや、大まかな地図しか見た事ないし…。 田舎の村から出た事なかった人間に詳細情報を期待しないで…」

「まあそうよね、それでキャールの街に行くって言ってたわよね? そこに行けば詳細も分かるでしょうからそこで調べればいいわ。 それにしても私の知っているキャールって開拓を始めたばかりの村だった気がするけど、いつの間にか町になったのね」


そう言ってカトレアはうんうんとうなずきながら一人で何か納得してる。

まあ本人が納得してるならそれでいいんだけどさ。


「それで、この辺りはどんな貴族が治めているの?」

「貴族? いや王国が治めてると思うよ? 村でも貴族とか領主とか聞いた事ないし、気にした事なかったけどそう言えば王の下に貴族が居て普通は領地持ってるのは普通だよね…」


「そうよ、それなのに領主どころか貴族の事を聞いた事ないってどんな田舎に住んでたの?」

「まあ、普通の田舎? 確かに今まで特に気にしていなかったけど、本来なら王様の下に貴族が居て領地を治めているのが封建制度だと普通だよね…」

「ええ、そうよ、国王が居てその下に貴族が居て国家として形を成してるのが普通じゃない? カツヒコの居た世界もそうだったんじゃないの?」


「いや、昔は貴族が土地を治めている国もあったけど、今はほぼ無いに等しいね、貴族制度がある国もほんの一握りだし、むしろ称号だけが残ってるって感じ?」

「貴族階級が無い国? じゃあどうやって国を治めてるの?」


「う~ん、主要な国家は民主主義、まあ独裁国家とか一つの政党が国を運営してたりもするけど…」

「何それ? 言っていることが分からないわ! 民主主義って何? 独裁国家は何となくわかるけど、政党って?」


しまった!!

カトレアの異世界がどんな所か知りたい欲に火が付いた!!!

自分からしたらここが異世界だけど、カトレアからしたら地球が異世界なんだよね…。


「まあいいわ、その辺は今後ゆっくりと聞くとして、カツヒコの世界では魔法はどんな使い方をしていたの?」

「魔法なんてものは無いよ! あるのは科学技術で魔法と言うものは空想でしかなかったから」


「そう、魔法が無い世界なんて信じられないけど、確かに召喚者の中には魔法を知ってる人と知らない人が居たって聞いたことがあるわね…。 だけど怪我や病気になったら薬でしか治せないから大変そうね」

「まあ魔法は無いけど科学技術や医療技術は半端ないよ、ぶっちゃけこの世界の生活レベルは自分が居た地球と比べたら3~400年は遅れてるし…」


「はぁ? よく分からないわ、魔法より科学技術と言うのが優れてるって、科学技術って何なの?」

「う~ん、説明しづらい…。」


カトレアは科学技術に興味を持った感じで説明を求めるけど、いざ知識ゼロの人に科学技術と言うのを説明するにはどうしたらいいんだ?

よくよく考えると、地球では魔法とか物語の世界だけど、異世界では科学技術が物語の世界だよな…。


「その辺は後々説明するとして、とりあえず地上に出て街に向かいません? なんか説明するだけで相当時間かかりそうだし」

「まあそうね、じゃあ100階層に有るダンジョンの核を取って外に出ましょうか」


「ダンジョンの核?」

「そうよ、ダンジョンには核となる魔石があってそれを取らないとダンジョンを攻略したとみなされないのよ、それに核が長い間放置されていると強力な魔物が産まれるの。 だから定期的にダンジョンの核である魔石を取らないと最悪手が付けられなくなるのよ。 ダンジョンから魔物が溢れる事もあるから」


うん、目の前に強力な魔物だった人が居るんですけど!!。

今は人間だけど、ノーライフキング化も出来るから人間と呼んでいいのか分からないけど。

既に強力な魔物だった人がダンジョンから出ようとしてますが…。


そんな事を思いつつ、100階層を後にし地上を目指す。


はぁ~、カトレアは魔法無しで剣のみでって言ってたけど自分一人で戦うの?

魔法と剣の組み合わせで戦ってもいいよね?


あっ、ダメって顔してる…。

蘇生アイテムはもうないから、死なないように気を付けよ。

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