二、 二人

小さい時に火鉢で顔を火傷をしてから、私には友達がいませんでした。

今ではだいぶ綺麗になりましたが、顔の左側がケロイドで覆われていた時期があったんです。


そうした中、いつの間にか私には一緒に遊ぶ相手が出来ました。

名前も知らないその子は、いつも私に近くにいて遊んでくれました。

一度は友達がいなくなった私にできた新しい友達。

毎日、毎日遊ぶたびにその子のことが好きになっていきました。


一緒に遊ぶ日が続くうちにおかしなことに気が付きました。

その子は顔の右側を見られるのを妙に嫌がるのです。

「お顔、どうかしたの?」

「私ね、この顔のせいで友達がいなくなっちゃったから、あまり見られたくないの」

「同じだね、私もそうだったんだよ」

「同じなの、あなたもそうだったの?」


私は自分の顔の左側を見せました。

「同じだよ」

その子は顔の右側を見せてくれました。

「同じだね」

同じ思いをしていたという事実はより強く二人を結び付けてくれました。


ある時、お化粧で遊ぼうという事になりました。

お化粧と言っても子供のすることです。

母のほお紅をこっそりと持ち出して二人で大鏡のある蔵に入ったのです。


その子は言いました。

「私、綺麗になれるかな」

私は言いました。

「あなたはきっと綺麗になるよ」


二人で鏡の前に立った時、鏡には何も映りませんでした。

その子は言いました。

「私、綺麗になりたいの」

私は言いました。

「私も綺麗になりたいの」


「でも、綺麗になれるのは一人だから」


そのあとのことは記憶にありません。

私は蔵の中で眠っていたところを発見されました。

顔の火傷の跡が消えた状態で。


それ以来、あの子と遊ぶことはなくなりました。

私の元に以前の友達が戻ってきたんです。

それからは穏やかな日々が続きました。


ある時、皆でかくれんぼをすることになり、私は蔵に隠れました。

そこには布のかけられている大鏡がありました。

以前、私とあの子の姿が映らなかったあの鏡です。


私は布を取りました。

なぜか、そうしなければいけないと思いました。


鏡の向こうには、

顔の両側がケロイドに覆われている私が映っていました。


それ以来、私はどんな鏡も見ていません。

おそらく鏡の向こうに見えるのは私でなく、ケロイドに覆われたあの子だから。

ケロイド以外、私と全く変わらないあの子だから。

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