九十九語り(つくものかたり)

奇印きょーは

一、 騙り

この話は、

私が興味を惹かれたちょっとした出来事などを追いかけ手に入れたものを焼きなおしたものにすぎません。

なので私というフィルターが物事を本来とは違った形で伝えてしまうこともあるかもしれませんが、そこはインターネットでもよくある事。

あくまで伝聞の伝聞だと思って流してもらえれば幸いです。


この話は、

私が村とも呼べぬ、ある集落で聞いた話がきっかけで始めるものです。

そこでは「百物語」が浸透していない、

というより忌避され、意識的に住人から切り離されていた。

と言える環境がありました。


しかし似通ったものは存在しています。


それは、

「九十九語り」。

「つくものかたり」と呼ぶのだそうです。


「なぜ、百ではなく九十九なのですか?」

と尋ねたところ、

「『百』とは完全な状態である」

「この集落において『百』とは尊いもの、敬うべき数字として扱われてきた」

「人の言葉には『語り』であれ『騙り』であれ力が生まれる」

「嘘か真か曖昧なものが完全であってはいけない」

「この集落では『九十九』までしか触れてはいけない」

「普段の生活でも、『百』とは人が扱うには多すぎる数字である」

と教えていただきました。


最期に、

と前置きをして、私は好奇心から聞いたことを覚えています。


「『百』まで話を続けてしまうとどうなるのですか?」


穏やかな表情を浮かべていた老人の顔が、なにか粘着質めいた笑顔に変わったと覚えています。


「私にはわからないが、そうそう機会もない」

「試してみるかね?」


私は、

「ええ」とその提案を受け入れたのです。

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