第53話 真実そして過去
俺は咄嗟に聞いてしまった。
「どこでだって?決まってるだろう。政府だよ。政府。」
とスリーが言うと
みんなに衝撃が走った。
「政府?」
反射的に出た言葉には信じられない気持ちが込められた。
「俺は政府の回し者でここにいる。
昔、お前の記憶を書き換えたのは僕だよ。」
とスリーはニヤッと笑った。
「あ、そうそう。僕ののこと裏切り者って思ってもいいけど、嘘つきならもっと他にいるよな。」
「なぁ、ヒロ。」
とスリーがヒロの方を向いた。
まるでヒロが嘘つきかのように言った。
ヒロは何もいい返さない。
「何で、ここでヒロがでてくるんだ。」
俺は困惑した。
「だってさ、調べとは、
ヒロの能力は全く違うじゃん。
お前の方がよっぽど嘘つきじゃん。」
とスリーが言った。
「どういうこと?ヒロが偽造してたってこと?」
とミナがスリーに聞いた。
「そう言うことじゃなくて、あいつ自身も能力を2つ持ってるって可能性の話。」
とスリーは片目を細めて言った。
俺たちはヒロの方を見た。
「おいおい、ヒロの能力は『未来予知』じゃねぇのかよ。」
とアーシャが言った。
「『未来予知』‥?」
俺含めてミナとナオが共鳴していった。
『未来予知』‥。これもまた、聞いたことない能力だ。でも、未来が見えるって‥。
「ふー。スリーの調査能力と頭の回転は流石だと思う。さすが、政府の回し者さん。
そうだ。俺も能力が2つだ。
1つは、アーシャの言う通り、元々持っていた能力『未来予知』。
2つ目は、さっきも使った、人工的に加えられた能力『絶対服従』だ。
たぶん、俺の能力を知ってる人はみんな俺の能力の『未来予知』だけを知ってる。」
とヒロは言った。
それを聞いた瞬間、皆んな驚いた。
「『絶対服従』ね。また、そんな変なの。」
とミシェが言った。
俺は先程のヒロの目が赤くなり、スリーを言った通りにしたのがそれだということに気づいた。
「じゃあ、ヒロも政府の回し者?」
とミナが眼を泳がせながら聞いた。
「あんな、胸糞わるいとこと一緒にしないでくれよ。」
とヒロの内通者説は否定した。
「じゃあ、何で‥。」
俺は不安とともに言葉が溢れた。
また、大事な人を失うのか。
いや、この人を信じなくてどうする。
ヒロはいつも俺を信じてペアになってくれた。
とにかく、疑う前に話を聞くんだ。
「あーあ。ついに、この話をしなければならないのか。この話をするってことは、その瞬間からお前ら全員を巻き込むことになる。
サンには一度確認したよな?
覚悟がいるんだ。今までスリーが話した内容もだが、今から話すのは紛れもない真実だ。さぁ、どうする。」
とヒロは俺たちに言った。
俺はとっくに覚悟など出来ていた。
しかし、グループ1のみんなはどうだろうか。
俺が周りを見ると、みんなの顔は真剣な眼差しであった。
それは誰1人として逃げようとせず、立ち向かおうとしていることの表れであった。
「わかった。じゃあ、話す。」
とヒロは言った。
「まず、最初に言う。スリーの話からもわかるように、カナタを襲って化け物にしたのは、紛れもなく、この国の政府だよ。
俺には、両親はいなかった。小さな頃に政府に拾われた。
俺の持っていった能力『未来予知』はとても珍しいかった。
そんで、俺は剣術が特に得意だった。
俺の能力に目をつけた政府が、俺を実験体にしだしたんだ。
なんのだと思う?
最強の化け物になるための実験だよ。」
とヒロは言った。
みんな、聞きたいことがたくさんあるがとりあえず、その質問を飲み込んだ。
皆んな、最強の化け物という言葉にゾクっとした。
俺は思い出した。ナオがヒロの動きを化け物のように見える時があると言っていたこと。
これと関係していたのかもしれない。
「そして、俺は『絶対服従』という絶対的な力を人工的に手に入れた。
最初は、気づいていなかったよ?
自分が化け物になりかかってたなんて。
俺は日に日に、誰も手に負えないくらい強くなっていった。
大人相手にぶちかましてるような悪ガキでさ。
毎日がとにかく退屈でね。
したらさ、政府が実験体を捕まえに行くって言うから、それを見に俺は勝手に抜け出したんだ。
そしたら、何。政府によって、化け物になる俺と同い年くらいの子、それを助けようとしてもがく子供を抑えている政府。そういや、もう1人‥。スリーみたいなやつも見たかもな。それを見て俺は気づいたんだ。
俺もあーなる運命なんだって。
その日から俺は政府に帰らなかった。絶望したんだ。何が正しいかわからなくなった。
そんな時に、俺は今のグレーボーダー本部長の鶴さんに出会った。鶴さんは全部知ってるようだった。
政府も、鶴さんに下手に手を出せないから、俺はそのまま鶴さんの元で過ごした。
したら、いつのまにか、能力も使おうとしなくなっていった。
したら、Sランクになってた。
したら、サンと出会った。
ほんとに、気づかないうちにさ。
俺は人目見てわかった。サンが俺が見た化け物になっていた友達を必死に助けようとしてた子だって。俺には未来が見えた。お前が化け物になろうとしている未来が。それを阻止したわけ。」
とヒロは言った。
ヒロは昔俺とカナタを見たことがあったんだ。
「そんで、俺がスリーが回し者だと目をつけた理由。
まず、俺に似ていたような気がしたこと。あいつ、なんかしゃべってる時に変な‥違和感を感じた。
1度俺が話しかけた時
『僕、名前スリーって言うんです。3位だから。』っ言ったもんだから、こいつすげぇなって思った。
自分の名前がスリーだから3位って、わざわざ合わせて順位になれるなんてただもんじゃないなって。
そもそも、スリーって名前が何でか俺的に気になった時、スリーに聞いたら『三男だから』って答えた。
でも、後にお前に家族がいないことを知った。そして何となく、お前の三男は実験体3号からとった名前なんじゃないかって今は思ってる。
決定的なのは、やたらとサンとくっついて回ったことだ。
そして、お前とスリーが戦ったことも。能力を使わせてね。」
とヒロは言うと
俺は思わず
「それは、多分違う。たまたまだ。」
と言うとスリーが吹き出した。
「そんな訳ないじゃん。サンの情報を手に入れるためだよ。」
とスリーは笑いながら言った。
「僕とサンで対戦したのちゃんと覚えてる?あれは、わざとお前の意識をなくさせて、戦闘不能にするためにしたことだ。」
とスリーは続けて言った。
「嘘だ。俺がいないと困ることがひとつもない。スリーは本当は俺が狙われていることがわかっていたから、能力を使わせて、戦闘に参加させないようにしてたんじゃないのか?」
と俺が言うと
「それ、自分で言って悲しくない?」
とミナがボソッと言った。すると、ナオがミナの頭を叩く。
「いて。」
ミナが自分の頭をさすった。
「スリーが見せたことが全部嘘だとしても、俺はスリーの友達だ。」
と俺は言った。
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