第54話  目指すべきもの


「は?何言ってんの?全部演技に決まってんじゃん。」


とスリーが俺に言い返した。


「あんた、そっちの性格の方がいいわ。」


と突然、ミナが再び割り込んできた。


「確かに。あの、いい子いい子よりいいかもな。」


とナオも賛同していた。


「今までのが全部嘘でも、一緒に過ごしたことは変わらないでしょ。本性を出したってことでいいじゃない。」


とミナにしては良いことを言った。


「そうよ。ナオなんてね、昔は甘えてくる可愛い子だったのに今は『1人の俺かっこいい?』の厨二病キャラなんだから!」


とミシェの特有のナオいじりが始まった。


「ぷっ。」


俺とヒロも思わず吹き出した。


「おい、やめろ。お前らも笑うな。」


といじられ慣れていないナオは動揺して言った。


「俺はお前たちを裏切ったんだ。」


とスリーはいつのまにか、ほんわかした雰囲気を切り刻むように叫んで言った。


「あーあ。せっかく、スリーを攻める流れを俺が作ろうとしたのに。相棒に完全にかえられっちまったよ。」


とヒロがゲス発言をした。


「わかったろ?今問題なのはお前が裏切ったことなんじゃない。

本当のことを知ることだ。」


とヒロは言った。


俺はその一言にさっきまでの動揺が消えた。


すると、スリーはシュンっとして黙った。


「俺はヒロの話を聞いていて、質問がある。何で、政府自身が悪者と呼ばれる化け物を開発したんだ?」


と俺がヒロに聞くと


「良い質問だねぇ〜。何でかは、本人達に聞かないとわからない。

あとこれはただの、俺の見解でしかないが、この世界の悪者と呼ばれるほとんどが、政府によって作られた人たちかもしれない。」


とヒロが言った。


「悪者が政府によって作られてる‥?それだと、俺たちがやってることは自作自演ってことじゃねぇか。」


としばらく黙っていたアーシャが言った。


「あんた、なんでさっきから黙ってたのよ。」


とミシェが目を細めてアーシャに聞いた。


「いや、なかなか理解が追いつかなくて。」


とアーシャは謎に照れながら言った。


そして、俺はふと、思った。アーシャはもしかしたら、この内容を理解していたミナより馬鹿なのかと。


「なに?あんた、ミナよりバカね。」


とミシェは俺が思ったことを言った。


どうやらみんなも思ってたようで、ニヤついていた。


「ちょっとー!あたしを基準にしないでくれる?」


とお決まりにミナが口を膨らました。


「おっと。話が脱線した。

アーシャの言う通り、もしかしたらその可能性が高い。」


とヒロは言った。


「ヒロはどうするつもりなんだ?」


俺はヒロに聞いた。


「サン君。また良い質問です。」


そして、ヒロは息を吸った。


「俺はこの国を変えるためにこの国を乗っ取る。」


とヒロはいつものドヤ顔を交えた顔で言った。


「乗っ取る?!」


みんな一斉に放った言葉だった。


「ああ。お前たちの中で嫌なら奴がいるなら、この情報を知ってしまったと言うことで監禁するけど、抜ける奴いる?」


とヒロは脅しながら言った。


しばらくの沈黙の後、


「俺も国を乗っ取る。」


俺は真っ先に言った。


「ねぇ、あの子、乗っ取るの意味わかってるのかしら。それとも、何も考えてないのかしら。」


とミシェが俺のことをジョーク混じりに言った。


「サンは本当に僕でも、予想できないや。」


とスリーがミシェに困った様子で同調した。


「俺もやる。」


と2人目に声を出したのはナオだった。


「あ、あたしも!」


と他のグループ1のメンバーも続々声を上げるの中、残りはミシェとスリーのみとなった。


みんなが一斉に2人の方を見た。


「もう‥!私も行くわ。」


とミシェが渋々言った。


あと、残すはスリーのみとなった。


「スリーには悪いけど、強制的についてきてもらう。仮にらお前を今ここで放したら、政府に入れられて全部話されるのがオチだ。

だったら、俺がずっとまで終えるところに置いとくまでだ。もし、それでも逃げたいなら‥?」


とヒロは圧力をかけた。



「僕には拒否権なしか。仕方ないな。」


とスリーは言った。


「じゃあ、あと1人か。」


とヒロが言った。


「おい、隠れてないで、出て来いよ。全部聞いてたんだろ?」


とヒロが言った。


ドアの影からカナタが出てきていた。


「あ、でもその前に、スリー?」


とヒロお得意の圧力をスリーにかけた。


「わかったよ。カナタ、サン、来い。」


とスリーは言って


俺たちを呼んだ。


スリーは俺とカナタの頭に手を置いた。


すると、あの時の本当の記憶が蘇った。


カナタにも記憶を戻したのだ。


カナタは突然涙を流し、俺に抱きついてきた。


「サン‥。僕、ずっと君のことを忘れて友達も傷つけた。ごめん。」


とカナタは言った。


「その上で聞く。カナタは来るか?」


としばらくして、落ち着いてからヒロはカナタに聞いた。


「僕は僕のようになった人を救いたい」


とカナタは答えた。


こうして、グループ1が全員が国を乗っ取るっという目標を持つことになった。



俺はふと思った。悪者の定義とは何なんだろう。


この世界は残酷だ。人間の行いに関係なく不幸が降り注がれる。


カナタが悪者になったように。


俺たちはこれから、悪者を見つけるんじゃない。そこの境界線を見つけるんだ。グレーな存在で。

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