第52話 内通者


そこにいたのは俺の頭に手を置こうとするスリーであった。


「スリー‥。」


俺とスリーは目があった。


「なんで‥。」


スリーはいつもと目つきが違っていた。


俺は咄嗟に何かあった時のためのヒロを呼ぶボタンを押した。


「なんか、バレてるかんじ?」


スリーはいつもと口調が明らかに違った。


「まぁ、これも消せば一見落着になるかな。」


と言って、俺に襲い掛かろうとした。

消す‥。記憶を消すのか。スリーか、その言葉がでてきていることが信じられない。


俺はすぐさまベッドから出て、壁にかけてあった自分の剣をとる。


「おいおい、友達だろ?仲良くやろうよ。」


と不気味な笑みでこっちに来る。


これは完全に俺の知っているスリーじゃない。そもそも、スリーの能力は『喪失』のはずだ。



しかし、ここは正直、驚いてる暇などないくらい緊張感が漂ってる。


「やっぱりね。」


とスリーの後ろから声が聞こえた。


そこにいたのはヒロだった。


「あれ?なんでヒロがいんの、お前らグル?」


とスリーが言った。


「ピンポーン!」


とヒロは軽い口調で答えた。


すると、さっきまで俺に襲い掛かろうとしていた、スリーは自分の剣を床に置いた。


「1対2。しかも、ヒロとサンは勝てそうにないね。」


とスリーはお手上げモードを出した。


「いつもみたいにヒロさんってさん付けしてくれないんだ〜。残念。


ってか、降参するのはやくない?


お前の豹変っぷり明らかにアカデミー賞男優並みだよ。」


とヒロはジョークを飛ばした。


「あんなの、ただいい子いい子してればいいだけさ。あと、この状況で戦って痛い思いしたくないし。」


とスリーは言った。


俺はヒロの方に向いたいるスリーに方を向いて


「お前が、内通者だったのか。ヒロ、お前もしかして知ってたのか?」


とヒロに聞いた。


俺はグループ1に内通者がいたことにまだ信じられないでいた。しかも、それがスリーだなんて。


「うーん。疑ってる程度だけどね。サンが言ったろ?あいつが俺の能力知ってたって。俺の能力あいつに言ったことないんだよね。」


とヒロはサラッと答えた。そして、スリーに剣向けて


「お前はどこの回し者だ。」


とヒロがスリーに尋ねた。


「どこだと思う?サンの記憶を消させてくれたら答えてもいいかな。」


とスリーは余裕の表情で条件を出してきた。


「ふっ、嫌だね。そんなのお前の目的を達成して終わるのがオチだわ。」


ヒロは笑っているが目が笑っていない。


「そうか、それは残念だ。穏便に終わらせたいのにな。」


とスリーが言った。


「悪いけど、こっちが有利なのは変わりない。いつまでその調子で行けると思う?」


とヒロはそう言い、剣を再び使った。


流石スリーだ。ヒロの攻撃も避けた。


「お前、しっかり、能力の『喪失』使った方がいいよ。サン。ちゃんとみとけよ。」


とヒロはスリーに警告し俺に言った。


「そんなの、当たり前だろ。ヒロの能力を使われたらたまったもんじゃない。」


とスリーは戦闘体制に入った。


「3秒以内に終わらせてやんよ。」


とヒロが言うと、


ヒロの目がいつもより赤くなった。


「武器を捨てて手を上げろ。」


とヒロが言った瞬間、スリーは言われた通り、剣を床に置き、手を上げた。


俺は一瞬何が起きているかわからなかった。


スリーは動けないでいた。すると、スリーが手を上げた状態で


「‥違う。俺が知っていた能力と違うぞ。」


とスリーは困惑して言った。


これは能力なのか?だとしたら、どう言うものだ。


すると、ヒロの目が赤色から元の色に戻った。


「はいはい。しゃべらないしゃべらない。」


と言ってスリーを紐で縛りつけた。


「じゃあ、今から質問するから答えて。答えないなら、今ここで監禁でも始めようかな〜。」


とヒロはスリーを脅した。


「まず、お前の能力について話せ。」


とヒロが言うとスリーはしばらく黙ったのち、諦めたようで


「俺の能力は2つある。『喪失』と『記憶』だ。」


とスリーは正直に言った。


2つ能力を持っている人など今まで見たことがない。でも、スリーが嘘ついているようには見えない。既に俺に襲いかかったことで証明されているが。


「あと、俺に打たれた化け物になる注射、あれは本当はサンに打つためによういしたものだろ?」


「まぁ、本当はその予定だった。」


スリーは最低限しか答えず、詳しいことは言わない。


「お前はどこまで関係してる?」


「たぶん、ヒロとサンが思ってることほとんど関係してるんじゃない?

あーあ。もういいや。これから、全部話たとして、俺をどうするんだ?」


とスリーが言った。


「お前を使う。」


とヒロはニヤッとしながら言った。


すると、バタバタと俺の部屋にグループ1のメンバーが来た。


「どうしたの!?」


と騒がしかったため起き上がってきたのだ。


「何で、スリーが縛られてるの?解いてあげてよ。」


と何も知らないミナは、スリーに近寄ろうとした。


ヒロが自分の剣でミナの行き場を塞いだ。


「そいつは、ミナが思っているスリーじゃない。」


とヒロはミナに伝えた。


「いや、スリーじゃん。」


と頭があまり良くないミナは状況を理解していないようだった。


「わーお。ヒロの言った通りになった。」


と後ろからミシェが言った。


ミシェもなんとなく知っていたようだ。


俺たちは食堂で一旦話すことにした。


スリーの縄は一旦離した。


「お前の知っていることを全てはなせ。」


とヒロはスリーに言った。


「さっきも話したのに。まぁ、わかったよ。

俺はさっきも言ったが、能力が2つある。

『喪失』と『記憶』だ。 


俺は元々は、能力『喪失』しか持っていなかった。

でも、人工的に『記憶』を手に入れた。この能力は、記憶を消したり、書き換えたり、記憶に関することを自由自在に操作できるものさ。」


とスリーが言った。


俺は反射的に聞いた。


「どこで手に入れたんだ?その能力。」








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