第47話 前と違う自分

「サン君!大丈夫?」


「サン!大丈夫か!?」


とスリーとアーシャがよろけた俺を心配そうに声をかけた。


「大丈夫だ。少し血迷っただけだ。」


と俺は平静を装った。


これは多分、能力『時間』のリミッターが外れかけているということだろう。


今日1日、能力を使いまくったためだろう。


カナタとの戦いでも、消耗の激しい「時間静止」を使ってしまった。


意識が薄れていっている。


俺はポケットにあった残った薬を取り出した。


この薬を渡してくれた時のミシェの言葉を思い出した。


「ただし、一度の服用は3個までね。


次、薬を飲みたい時は、3時間、時間を空けて飲んでね。


これ、意外と重要だから!!摂取量を超えると身体が反応しちゃうから。」


薬を渡す時にミシェが言っていた言葉だ。


さっき、薬を飲んでから3時間はたっていない。


しかし、この状況‥。飲まないわけにはいかない。


俺は薬3粒を流し込んだ。


すると、さっきまで重たかった体が次第に軽くなっていった。


俺は再び能力『時間』を発動した。


「遅くなれ」と心の中で呟きながら、


俺は化け物背後に近づく。


俺は『時間』を連続的に発動して、攻撃を避けながら隅々まで移動した。


すると、俺は、化け物の首のあたりに小さな注射器のようなものを見つけた。


「あった。」


俺は声に出し、スリーとアーシャに場所を伝えた。


「サン!それを抜け!」


とアーシャが言った。


俺は再び能力『時間』を連続的に使い、化け物の首の位置にたどり着いた。


俺はそこに刺さっている注射器を握り思いっきり引っ張ると、あっさりと抜けた。


注射器が抜けた瞬間、化け物は少しずつ縮んでいった。


どうやら、俺たちはヒロを助けるのに成功したようだ。


その頃ヒロの心理では


「う‥。体が動きにくいぞ。」


と奴が言った。その様子を見たヒロは


「あれ、思ったより早かったな。」


とサンが注射器を抜いたことに早くも気づいたようだった。


「残念だったな。もう、お前と会話するのもおしまいだ。」


とヒロが笑顔で言った。



化け物はどんどんキラキラと灰になって縮んでいった。


ついに化け物の姿がなくなると、中から犬のような生物が出てきた。


「あれ?ヒロなんか、可愛くなってない?」


とアーシャが言うと


「なんか、犬みたいね。お疲れ。姿を変わっても、ヒロはヒロよ。」


とミシェはその犬を抱き上げた。


「ふぁ〜。」


とヒロがあくびをしながら、コンクリートの崖の上から出てきた。


「あっ!ヒロだ!」


とミナがヒロの方を指さした。


「おい、あいつ、欠伸あくびしてんぞ。こっちの苦労も知らないで。」


とアーシャが告げ口の感じで言った。


「なんだ。残念。これから、たくさん犬としてパシってあげようと思ったのに。」


とミシェが眉を下にしていった。


「よぉ!みんなありがとうな!」


とヒロが手をひらひらとさせていてる。


俺は何も言わずにヒロに駆け寄った。


「サンが抜いてくれたのか?注射器。ありがとうな。」


とヒロはサンの頭を軽く叩いた。


「もう、大丈夫なのか?」


「本物か?」


「怪我はしていないのか?」


「実は犬の方とかじゃないよな?」


俺はいつのまにかヒロに次々と質問をしていた。


「大丈夫だよ。心配かけてごめんな。」


とヒロは安心させるように俺に話しかけた。


そして、気づいた。


俺の頬に涙がつたっていた。


「お前、泣くなよ。俺生きてるんだけど〜。」


と少しヒロは困っているようにも見えた。


「ふざけんな!」


と俺は止まらない涙をゴシゴシしながら、ヒロに背を向けた。


「サンに嫌われてやんの!」


とアーシャがヒロにちょっかいを出した。


「あれ〜?なんか、まずいこといったかな〜。」


とヒロは迷宮入りしていた。


俺はヒロに背を向けたまま


「ふっ、はははははは。」


と笑った。


「何?あいつ1人だけ深夜テンションじゃん。」


とアーシャもいきなり笑った俺に驚いている。


すると、今度はヒロから俺に近づいてきた。


「俺をサンが助けたんだ。何もできてなくないじゃん。流石、俺のペアだな。」


とヒロはまた、頭を一回軽く叩いた。


「ペア‥?」


俺は思わず後ろを向いてしまった。


「そうだよ。お前はもう俺のペアだよ。」


とヒロはニカっと笑った。



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