第45話 糸口


俺は一旦、状況を整理した。


カナタは触手を出す。それはカナタの能力だ。


カナタが繋がっているところは‥。


俺はあることに気づいた。


「スリー!能力使えるか!」


と俺がスリーに言うと


「あぁ!使えるよ。」


前回、ヒロの提案で使ったスリーの能力『喪失』が通用した。


だとすれば、この硬直しているところもカナタの能力によって、固められている可能性が高い。


「使ったよ!」


とスリーが言った。


すると、カナタの触手部分は縮んでいった。


俺はその状態でカナタと化け物はを切り離そうとした。


「ここで終わるわけにいかない。」


カナタはボソッと言った。


俺はちょっと嫌な予感がした。


カナタはミシェとミナのいる方に触手を伸ばしたのだ。


この触手は最後の一本であった。残り香のようなものだった。


それはミシェを護衛していたミナの腹に当たった。


「ミナ!」


と俺たちは叫んだ。


なのにミシェは平然としている。


「何、寝てんのよ。早く起きてって!」


とミシェは呑気に喋っている。


俺たちは焦ってミナの方に視線が集中していた。


すると、ミナの横たわっていた体がピクッと動いた。


「防弾チョッキあるから無傷だから、大丈夫よ。」


とミシェが言った。


ただ気絶しているだけのようなだった。どっちが守っているか分からない。俺は少し安心した。


「サン!今だ!行けぇ!」


とヒロが俺に向かって後ろから叫んだ。


完全にカナタは油断していた。ミナの方に視線があっていたのである。


俺はすぐさま能力『時間』を使った。


心の中で「遅くなれ」と呟く。


俺はカナタが何をしでかすか予測できなかった。


そのため、念には念をと、時間で遅くなった状態で、カナタと繋がっている化け物の部分を切り離した。

 

今度こそ、切り離すことに成功したのだ。


時間が元に戻った。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」


と叫ぶカナタがいた。


切り離された部分が痛いのかカナタは叫び続けている。


カナタの辛そうな姿を見て、俺は少し可哀想な気もした。


カナタの化け物の部分はボロボロと崩れていく。


「サン!そいつ担いで、離れろ!」


とヒロが俺に伝えた。


俺は叫ぶカナタを担いで、崩れていくところから逃げた。


そして、カナタの化け物の部分は全て崩れ落ちた。


残っているのはその残骸だけだった。


カナタは完全に崩れ落ちた時には気絶していた。


みんな一斉に俺とカナタのところに集まった。


「サン!大丈夫か?」


とアーシャが俺を心配して聞いてきた。


「俺は大丈夫だ。それより、ミナは本当に大丈夫なのか?」


と俺がミシェとミナの方を向いた。


「大丈夫大丈夫。あいつ、馬鹿だから。馬鹿は風邪ひかないっていうじゃん。」


とヒロが笑いながら言った。


「もっと心配しても良くない〜?みんなして馬鹿にしないでよ!」


とミナが口を尖らせて言った。


周りは笑いに包まれた。


ミナは大丈夫そうだ。


「これゃ、完全に気、失ってんな。」


とヒロがカナタの顔を覗き込んで言った。


「カナタをどするんだ?」


と俺はカナタを抱えながら言った。


「大丈夫大丈夫。倒したりはしないよ。

しかも、見たところサンと歳は同じくらいだろ?若い奴は、罰には問われないさ。」


と俺を安心させるようにヒロは言った。


「じゃあ、そいつ起きるまでグループ1に置いとくか。」


とヒロは言った。


「えぇ!政府に先に報告しなくて大丈夫なの?」


とミナが心配そうにヒロに聞いた。



「何とかなるっしょ。今回やっつけたのは俺たちなんだしさ。」


とヒロはニカッと笑って言った。


「私、何か落ちてないか、現場見てから帰るから先行ってていいわ。」


とミシェが言った。


「りょーかい。」


とヒロがいい、俺たちは現場を離れる準備をした。



「じゃあな!ミシェ!没頭しすぎて時間忘れんなよ!」


とアーシャが言って、俺たちが現場を去ろうと瞬間


「サン。危ない!」


とヒロが突然叫んだ。


「え?」


と俺がいうと、ヒロが俺を押した。


すると、ヒロの首に何かが刺さっていた。


ヒロはそこを必死に抑えていた。抑えているところから何やら赤い物が出ていた。


「どうしたんだ?ヒロ?」


と俺が心配そうに聞くと


「みん‥な、俺から、離れろ‥。」


とだけ言って、ヒロは突然倒れた。


倒れたヒロはその瞬間、ヒロの背中からどんどん黒い物が出てきた。そして、あの時と同じ、一気に化け物と化したのであった。


俺はまた、あの時と同じであった。状況が分からず、立ち尽くしているだけだった。





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