第44話 助ける方法


俺が自分でも信じられないことを口にしていたことに気づいた。


すると奴は、こちらを向いた。


「気づくの遅いよ。サン?僕がカナタだ。」


と奴は先程と雰囲気が少し変わった。


「本当に、カナタなのか?」


と俺は食い気味に聞いた。


「あいつがお前の言ってた、化け物になった友達なのか?」


とヒロは俺に聞いてきた。


「そうだって言ってるじゃん?俺に攻撃したサンくーん。」


とカナタは言った。


「カナタ、お前は、化け物なのか?それとも人間‥なのか?」


と俺はカナタに聞いた。


「僕はね、その中間さ。化け物にも人間にもなりえる存在。」


とカナタは言った。 


化け物にも人間にもなりうる存在‥。


そんなこと今まで、聞いたことがない。


「でも、なんでお前がこんなことやってるんだ‥!」


と俺は訴えかけるように言った。


「こんなこと‥?お前たちが言えるかよ!」


とカナタは叫んだ。


それと同時に触覚も化け物全体も激しく暴れ出した。


この化け物はカナタの意思で動いているんだ。


変に触発をしてもいい結果は望めない。


「おい、ミナ!!ミシェを呼んでこい!」


とヒロがミナに言った。


俺はこんな状況でもそこまで動揺していない自分に驚いていた。


もしかしたら、心の中で少しでも、カナタは生きていると思っていた自分がいたのかもしれない。自分はカナタを殺してないと。ナオが俺に断言してくれたように。


しかし、こんな形で会うなんて自分でも流石に想像していなかった。


皆に連れられたミシェが来た。


「これが、本物ね!!」


とミシェはこんな状況でもキラキラしている。


「おい、ミナ!この研究バカ、研究しか出来ないから護衛はお前がやれ!」


とアーシャがさけんだ。


「わ、わかった!」


とミナが言い、少し危なっかしいミシェをミナが慌てて護衛をしている。


「何でミシェを連れてきたんだ?」


と俺がヒロに聞くと


「こういう、人間化け物の対処法は、分からないじゃん。ミシェなら、何かわかるかもしれないだろ?」


とヒロが言った。


俺にはヒロが何かに気づいついるように見えたので、その回答がくるとは思わなかった。


「これは、人間を取り出すしかないんじゃない?」


と望遠鏡を使って化け物を見ながらミシェがサラッと言った。


「あっ、ミナ、これ伝えていいわよ!」


とミシェは何故だかご機嫌である。


「自分で言えば良いじゃん‥。何で私が。」


とミナが少しパシられている気がしてミシェに言った。


「ほらほら、戦場は一刻を争うのよ!早く言って!」


とミシェは何故か女王気分で言った。


それを見て少しミシェに呆れていたミナだが



「ヒロ!ミシェが人間を取り出すしかないって!」


と全力で叫んだ。


「ありがとう!ミシェ!」


とヒロは言った。


「人間を取り出す‥。そんなこと可能なのか?」


と俺が心配そうに聞いた。


「可能性じゃないよ。やるんだ、今ここでね。」


とヒロがズバッと言い切った。


「そうだった。」


と俺も気合を入れて言った。


たぶん、ミシェはカナタを倒す前にカナタを救出する目線で言ってくれた。


カナタを倒すんじゃ無くて、助けるんだ。


「とりあえず、サンの友人くんの触手を相手するのと取り出すので分担しよう。

俺が触手を相手するから、取り出すのお願いできるか?」


とヒロが言った。


「わかった。でも、足りるか?」


と俺が人手を心配して言うと


「俺を誰だと思っていってんの?」


とヒロはニヤッと笑って言った。


その自信に溢れたヒロの表情に少し安心した。


あとは、俺が頑張って助け出すしかない。


「じゃあ、触手はよろしく。」


と俺はそう言った。


カナタにもっと近づかなければならない。


ヒロは先程より早いそして、俺の分までカナタの触手に対応している。


さすが、すぎて言葉が出ない。


俺もカナタに近づきたいが、触手が出ているために行っていいものか迷う。


俺はここぞとばかりに能力『時間』を使った。


「遅くなれ」と心の中で呟いた。


カナタの触手を避けながら、近づいた。


「あれ?サンそこにいたっけ。」


とカナタは驚いていた。


「あれ?よそ見してていいのか?」


とヒロがそう言いながら、カナタの何本も生えているうちの数本をヒロの剣で切った。


「めんどくさいな。」


とカナタは言った。


俺は再び、能力『時間』を使った。


思いっきってカナタの入り込んでいるところに近づいた。


「あれあれ?サンまたこんなとこにいる。」


とカナタが言った。


カナタと俺の距離は数メートル。

カナタの触手を俺めがけて直進してきた。


俺はあまりの速さに思わず能力『時間』で


「止まれ」と願ってしまった。


すると、時間は止まり、完全にカナタの触手は動いていなかった。


俺は時間の静止には能力の消耗が割と激しいことを知っていた。


少し後悔しながら、カナタの触手を俺めがけてむかってくる数本のうち一本だけを切り、カナタの体と化け物がくっついている部分に近づいた。


すると時間が元に戻った。


俺とカナタの距離はもう、メートルでは数えられないぐらい近かった。


「サンが消えた?ん?何でそこにいるんだ?」


とカナタは不思議そうに言った。そこまで動揺してはいなかった。


「俺は今からお前とここの体を切り離す。」


と俺は言いながら剣をカナタとでかい化け物が繋がっている部分に当てた。


「簡単に離せると思ってるの?」


とカナタが言った。


「俺は引き離す。」


と言って、剣をそのまま、上から振り下ろした。


キーン。


その音が鳴っただけで、傷ひとつついてなかった。


「無防備すぎるでしょ。」


とカナタが言って俺にめがけてまた触手が真っ直ぐくる。


俺はさっきとは違って、「遅くなれ」と呟くことができた。


そして、遅くなった瞬間に一旦カナタから離れた。


このままでは、ダメだと思った。


硬くてびくともしていなかった。


何か方法はないだろうか。


「そんな簡単に剥がせるようになってるわけないじゃん。」


とカナタは言った。


考えろ。どうすればいいんだ。ヒロにはずっと触手を任せている。余裕ではあるようだが、そう言う問題ではない。他のみんなもずっと、戦っていた。


俺は頭を何回転もさせた。

















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