第43話 寝ている間に


試合終了後、すぐに俺は眠気に襲われ、意識を無くした。


そして、俺は、眠っている間いつもの夢を見た。


カナタが何者かによって攻撃され、俺がそいつらに取り押さえられ、カナタを助けられないまま、ただ見ていることしかできない夢。


何度見ても、辛かった。もしかしたら、自分がカナタのことを殺したとわかった時より

きついものがあった。


なんといっても、何もできない自分が嫌だ。


俺の記憶の信憑性だってないに等しい。


俺はこの夢を見るたびに心を握りつぶされている気分だった。


俺は目を覚ました。

どのくらい寝ただろうか?スリーとの戦いでかなり消耗したはずだから、1時間程度じゃ済まないだろう。


意識を失うたびに俺をベッドに運ばさせてしまっているのはグループ1のメンバーには申し訳ない。


俺はふいに頬が濡れていることに気づいた。


無意識のうちに泣いていたのだろうか?


俺は体を起こし、食堂の方に向かった。


いつもなら、食堂に向かう途中の廊下で皆んなの賑やかな声が聞こえるはずなのに。


廊下は終始、静まっていた。


俺はもしかしたら、何かのサプライズかとも考えながら歩いていた。


食堂に行くと、そこはいつも賑やかさは無く、真っ暗な闇であった。


グループ1のみんな、一斉にどこに行ったのだろうか。


俺は食堂の明かりをつけた。


すると、食堂の机の上に置き手紙があった。


手紙の内容は


「緊急任務が要請された。また、この前の化物が出たようだ。グレーボーダー全体で出動することになったから、みんな居ないけど、サンも目覚めたら出動してほしい。


現場は、クックス町だ。案内は、研究室にいるミシェにしてもらえ。」


と書かれていた。


俺が寝ている間に、任務が発動していたようだ。


前回と同じ相手。前回と同じグレーボーダー全体出動。


俺も早く現場に行って、皆の手助けをしたい。


俺は駆け足でミシェの元に行った。


すると、ミシェはもう既に出発する準備が満タンな様子であった。


「サンくん!目が覚めたみたいで、良かったわ!」


と笑顔でミシェが言った。


「待たせちゃって、ごめん。」


と俺が言うと


「謝ってる暇はないわよ!急ぎましょう。」


とミシェが言い、俺たちは急いで現場に向かった。


俺はその際に薬を3粒飲もうとした。


しかし、あることを思い出し、手が止まった。


「俺が寝ていた時間ってどれくらい?」


とミシェに聞くと


「えっと、4時間ぐらいじゃない?」


とミシェが少し指で数えながら言った。


俺はそれを聞いて安心してミシェが開発してくれた薬を3粒を飲んだ。


それにしても、4時間は、だいぶ寝ていたみたいだ。


それのせいか少し、体も重い。



俺とミシェは現場のクックス町に着いた。


ここは割と人口も少ないゆったりとした街であるとミシェは言っていた。


たぶん、前回よりも避難は進んでいるはずだ。


問題は、あの人間が入り込んだ化け物だ。上手くやれているといいが‥。


クックス町の中で明らかに爆発音が聞こえる場所があった。


そこに化け物がいるようだ。


「私はここで避難の手伝いをするから、サンは化け物のいる方に向かって。」


とミシェは言い、俺とミシェはそこで別れた。


俺はダッシュで化け物のいる方に行き、現場に到着した。


そこに映っていた光景は衝撃的なものであった。


俺の予想通り、避難は前回の何倍も早く終わっている。そのため、化け物の対処するのは、Sランク、Aランク以外のBランクの人もいた。


しかし、ほとんどのそれ以外のランクの人は怪我をして何人も横たわっていた。



すると、遠方から攻撃していた団長のグレーとミナが俺に気づいた。


「サン!早くヒロ達と合流して!」


とミナが俺に向かって叫んだ。


「わかった。」


と俺はそう言って、ヒロ達のいる化け物との近距離の位置にいった。


「サン。もう、動けるか?」


とヒロが俺に聞いた。


「動け‥。」


と俺が動けると言おうとした瞬間


「まぁ、動けなくても動いてもらうけどね〜。」


とヒロは俺の話している言葉を遮って、圧のある笑顔で言った。


「とりあえず、今、苦戦してることだけ、わかるけど、なんか知っといた方がいいことあるか?」


と俺がヒロに相手の攻撃を避けながら聞いた。


「あ〜。それだけ分かってれば、充分。

ルーキーくん、最初っからギア全開でお願いね。」


とヒロは言った。


「俺は化け物の下の人間の部分に行く。」


と俺はヒロに伝えた。


「ちょっと待て。俺も行く。」


とヒロも一緒に人間の元に行くことなった。


取り込まれている奴は、触手を使ってこちらに攻撃してきた。


「こないだの奴じゃないか‥。」


とそいつは言った。


俺とヒロはその攻撃を避けながら、時にはヒロが攻撃をしていた。


でも、何故か俺はそいつに攻撃をすることができない。


「サンも攻撃をしろ!」


とヒロに言われ


攻撃をしようとするが体が拒否していた。


なぜだ?もしかして、同情しているとか?ナオを傷つけて、他の人も傷つけている奴なのに。


「サン!!どうした?」


とヒロが俺に訴えかけるが、俺の動きが変わることはない。


するとヒロは一旦、俺に訴えかけるのをやめ、そいつに話しかけた。


「お前の目的って何だ?」


とヒロが言った。


「そんなの言う必要あるかな?」


とそいつは煽り気味に言った。


「だってさ、おかしいじゃん。お前、こうなるのわかってて2回も街を襲うか?悪いことしたいなら普通バレないようにやるじゃん?」


とヒロが言った。


その間俺は必死に攻撃しようとするがやはり、動かない。


「何事も目立ってなんぼだよ。正解は後ろからついてくるものだから、行動した方がいいんじゃない?」


とそいつは言った。


その瞬間俺はそいつの方を反射的に向いた。


俺はそいつの顔をよく見たことが無かった。


いや、見ないようにしていたのかもしれない。


顔とそのセリフ。小さい頃カナタがよく言っていた口癖は「正解は後ろからついてくる。」だった。


俺が小さい頃、人と話すのが大の苦手だった。


そんな時カナタがこんな俺と


「友達になろう。」


と言ってくれた。


俺はそんなカナタと基本的には一緒に過ごしていた。


その中で良く、俺がめんどくさいことに意味を感じない時に、よく自慢げに言っていた言葉だった。


記憶もないお父さんに言われた言葉だったそうだ。


俺はそいつの顔をじっくり、見た。


そいつは雰囲気はだいぶ違えど、カナタにそっくりだった。


俺が攻撃できなかった理由は、これだったのだ。


「お前、カナタじゃないか?」


と俺がポロっと言った。




















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