第41話 ダイヤモンドリリー

ミシェの薬を3粒飲んだ俺だったが、能力をほとんど使わなかったことから、1、2時間の睡眠で目を覚ました。


その後、俺たちは今回、突如として現れた化け物についてのミーティングがグレーボーダー全体で行われた。


「直接現場で戦闘していた者の衣服から確認できた物質と皆の証言から今回現れた化け者の詳細を調べて見ました。


化け物の体に覆われていたドロドロの物はヘビロニンという物質から出来ています。


これは人工的な物で、私たちのよく使用する仮想空間にも使用されている物質です。


能力に人工的な物が含まれているケースは大変珍しいケースと見られます。」


とミシェが映像を使って説明をしていた。


「また、悪者では、珍しい、人間の姿の者が中にいたといいます。今回、グレーボーダーの隊員の1人が救出を試みたところ、不意をつかれ

攻撃をまともに受けた隊員もいました。


その人間の姿自身も悪者として意識があったそうです。私たちの中では未知である以上に恐るべき存在だと思います。」


とミシェが言うと


「そうか、ミシェご苦労であった。」


と本部長の鶴さんが言った。


「今回現れたターゲットは、未知な点が非常に多かった。

取り逃してしまったからには、次現れた時は必ず対処する。」


と鶴さんが言うとグレーボーダーの隊員の全体が


「はい!」


と一斉に言った。


俺はミーティングが終わった後、1人でナオのいる治療室にいつもより歩幅を大きくして向かった。


すると俺が治療室に入ろうとした瞬間、扉が開いた。


そこにいたのは、ヒロであった。


先に見にきていたのであった。


「命には別状ないから。」  


とだけをヒロはすれ違い様に行った。   


俺はとりあえず、一安心して治療室に入った。


ナオはまだ意識が戻っていなかった。


ナオの目は開かず、何やらよくわからない器具が何個かつけられていた。


ナオの部屋にはヒロが置いていっただろう淡いピンク色の花が飾ってあった。


見舞いというのが始めだった俺は花ではなく、ナオがいつも愛用していたヘッドフォンを置いた。


一応花と迷ったが、花のことはよくわからなかった。


ヘッドフォン自体、壊れているかは、俺にはわからないが目が覚めた時にいつでも戻って来れるといいと思って、ヘッドフォンを置いたのだ。


俺がしばらく治療室で座っていると


「ドンドンドン」


とこちらに近づいてくる足音がした。


俺はほとんど察しがついていた。


扉がガラッと開いた。


「ナオ!!生きてる!!??」


とやはりその正体はミナであった。


普通、いくら命に別状は無くても、意識のない病人に向かって生死について言うだろうか。


ミナとは一緒に過ごしていくうちに、ミナの大雑把さが垣間みえてくる。


普段なら、ナオがツッコミをいるだろう。


「あれ?サンじゃん。」


とミナはこちらに気づいたようだ。


「ミナ、入る時と来る時、うるさすぎだって。」


と俺が微笑しながら言うと


「あっ!そうだった。静かにします。ごめんなさい。」


とミナは素直に謝って、声を小さくした。


すると、ミナは花瓶に入った花に気づいた。


「あれ?これ、ダイヤモンドリリーだ。可愛い色だよね。」


とミナが言った。


「この花言葉知ってる?」


とミナが俺に聞いてきた。


「知らない。」


と俺が言うと


「この花言葉は、『また会う日を楽しみにしています。』って意味なんだよ。

お見舞いにぴったりな花だし、あたしが患者だったら、頑張りたくなるな。」


とミナが嬉しそうに言った。


その話をしてる時のミナは、ちょうど夕日が差し込んできて、普段は見られない茶色な瞳が潤って見えた。




『また会う日を楽しみにしています。』


花にはあまり興味はなかったが、素敵な花言葉だと思って、俺まで嬉しくなった。


俺たちはナオが復活することを待つことしかできないということに気づいた。


「早く戻ってこい。ナオ。」


俺は心の中でそう呟いた。






俺は治療室に行った後、ミシェの研究室に行った。


ミシェの研究室につき、俺は研究室の仲間に尋ねた。


「ミシェは今研究室にいるか?」


その1人が


「いないですぅ。」


と目を泳がして言った。


「どこにいるか知ってる?」


と俺が聞くと


またもや動揺していた。


「わからないですから、今日はお引き取りください!!」


と俺を押し出してきた。


俺はミシェに話しに行くのを諦めて、ヒロとペアの話をしようと思い、ヒロを探した。



グループ1の敷地に戻ると、スリーと任務から帰宅していたマサがいた。


「3週間ぶりやな!ワイがおらへん間に色んなことがあったみたいやな。」


とマサに気づいて言い、俺に近づいてきた。


「アレクに勝ったんやったって?

おめでとう。ほんまに嬉しい。」


と俺の頭をポンポンした。


「ありがとう。」


と俺はポンポンしてきた手を優しく振り払いながら言った。


「サン君さ、俺と戦わない?」


とスリーが唐突に言ってきた。


「今、わいとサンの再会の時間やで。ほんまに唐突やな。」


とマサは驚いて言った。


確かに、突然すぎて俺も驚いた。


「今、ふと思ったんだよね!本気でサンと戦ったことないなって!」


とスリーはキラキラした目で言った。


「俺、今からヒロのところに行こうと思ってたんだけど‥。」


と俺が言うとスリーは大幅にテンションを下げた。


「えぇー。サン君、僕と戦ってくれないの?」


と上目遣いを駆使してスリーが言った。


「1回だけなら。」


と俺はスリーの勢いに押されて戦いを承諾した。




















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