第40話 見たことのない敵

「俺は‥。」


とヒロが話した瞬間であった。


グレーボーダー全体に警報が鳴った。


「グレーボーダーグレーボーダーの隊員に告げます。ロップ町で危険レベル5の悪者が現れました。グレーボーダーの皆さんは一斉に出動してください。」


とアナウンスがされた。


ヒロは立ち上がった。


「サン、とりあえずグレーボーダー本部のところ行くぞ。」


とヒロは俺に言った。


俺とヒロは急いでグレーボーダー本部に向かった。


そこには、グループ1のメンバーはもちろん、ナオやグレーボーダー本部長の鶴さんなどがいた。


すると本部長の鶴さんは指示をした。


「グレーボーダーのSランクとAランクの者は、悪者のいる現地にいけ。


残りは住民の避難を優先しろ。」


と鶴さんは言った。


現場に行くのは俺、ヒロ、スリー、ナオ、アーシャ、グレー、ミナであった。


俺たちはすぐさま直行した。

俺たちはグレーの運転する車で移動した。


そして、俺たちは現地に到着していた。


既に町の一部は破壊されていた。


先についていたグレーボーダーの隊員が住民の救助、避難を促している。


「俺たちは悪者が出没しているところに行くぞ。」


とグレーが言った。


俺たちは悪者の前まで行った。


その悪者は結構な大きさであった。


「ここからは、近距離型のヒロ、ナオ、サン、スリー、アーシャの5人がメインで戦ってもらう。


そして、援護は残りの俺とミナ後ろで援護だ。

一斉にいけ!」


とグレーが言った。


俺はミシェから貰った薬を3粒取り出して飲み込んだ。


俺たち5人は、様子を見ることも兼ねて5人で一斉にその化け物にかかった。



その悪者の体は粘土のようなもので覆われていて、サイズが普通の悪者と比べて大きい。


その化け物は身体を硬直させ、攻撃をしても上手くあたらない。


「これはちと、厄介だな。」


とヒロは言った。


すると、後ろから声が聞こえた。


「待って!!人がいる!人間!」


とミナが叫んでいる。


悪者の中に人がいると言う。


もしかしたら、取り込まれた人かもしれない。


「下!下にいる!」


とミナが叫んだ。


俺たち5人は一斉に悪者の下を見た。


そこには1人の人間が取り込まれていた。


「あっちの、救出を先にやるぞ!?」


とアーシャとナオは人間の方に近寄っていった。


そして、2人が取り込まれている人間を救出しようとした瞬間


悪者はさらに暴れ出した。


「これ、本当に取り込まれているのか?今までそんな化け物、見たことないぞ。」


とナオは言った。


救出を行なっているナオとアーシャは苦戦していた。


また、俺とスリーとヒロはというかと、相手の悪者の出方を伺っている。


「ダメだ、一向に人を救出できそうにない!」


とアーシャは言った。


そうアーシャが放った瞬間、悪者に取り込まれていた人間が目を覚ました。


その間も俺たちは無下に攻撃はしないで町の影響だけを考えて動いていた。



「あれ?起きてる?」


ナオが言うとアーシャも人間の方を見た。


「おい、今救出してやるから、こちらに出てこい。」


とアーシャがその人間に手を差し出した。


「え‥。ここは?うわっ!ドロドロしてる!?」


とその人間は混乱していた。


「大丈夫だ。」


とナオがその人間を励ました。


「サン!ちょっときってくれないか。もう1人ぐらい必要かもしれない。」


とナオは悪者様子をずっと伺っていたサンに言った。


「わかった。一旦ぬける。」


とだけいい、悪者下の方に行った。


「あぁ。ここはどこだよ。怖い怖い。」


と怯えている、その人間に


「大丈夫だ。俺たちがついている。」


とナオが優しく話しかけた。


そして、それは俺が取り込まれた人間のところに着いた時だった。


「お兄さんのおかげででられそうな気がします!」


とその人間が言った瞬間、その人間の手から鋭い触覚のようなものが飛びでた。


それがナオの腹部にあたる。


「ナオ!!」


と俺とアーシャは同時に叫んだ。


俺はナオの元に即座に近づくと


ナオは致命傷を負っていた。


「おい、ナオ??」


と俺が叫んでも、ナオは意識を失っている。


すると、先程の人間から声が聞こえた。


「なーんちゃって。あれ?死んじゃった?」


俺はナオをミナの元で治療させるために預けてから、そいつの方を見た。


「お前、人間じゃないな‥?」


と俺が言うとそいつは少し俺を見て驚いた。


「ふっ。気づくの遅いぃぃー!だから、怪我しちゃうんだよ。さっきの優男くんみたいに。」


とそいつは不気味な笑みを浮かべていた。


いちいち、俺の勘に触った。


「お前、何でナオを傷つけてそんなに笑ってられるんだ?」


と俺は怒りのこもった言葉をぶつけた。


「ナオって、あの優男くん?あれは、こっちを弱いと思いすぎだね。不意にやられるって相当バカな優男だね!」


俺は何か怒りを抑えられなくなった。


俺がそいつに攻撃をしようとすると、


「サン!アーシャ!そいつから離れろ!」


とヒロが上から俺に言ってきた。


俺が攻撃しようとするのをアーシャに止められた。


俺とアーシャは一旦その場から離れた。


「今回のこいつは簡単に倒せる相手じゃない。怒りに任せて攻撃することこそ、無意味だ。」


とヒロは俺に向かって言い放った。


俺は下を向いたまま考えていた。


俺は今の状況を飲み込めていない。


ナオに意識がなかった。酷い傷を負っていた。


ナオは大丈夫なのか?あいつは何者なんだ?


ヒロの言っていることもなかなか入ってこない。


「サン、お前いい加減にしろ!」


と俺の様子を見ていたアーシャが俺の背中を飛び蹴りをした。 


「おい、おいあんま傷付けなんって。」


とヒロはアーシャを止めた。


「こうでもしなきゃ気づかないよ!」


とまたアーシャら飛び蹴りをしようとしたが


スリーが何とか止めた。


「まぁ、こんな状況にも対応できないようじゃ、ペアは無理だな。」


とヒロは俺に背を向けて言った。


俺は戦闘の現場で何を考えていたんだ。


するとヒロはまだ俺に背を向けたまま


「俺に見せてくれよ。お前の覚悟ってもんを。」


とヒロは言った。


俺その時はっとした。


俺には心配より先に行動すべきことがあらだろう。


怒りに任せちゃだめだ。ナオのように冷静に。


俺の覚悟はこんなことで挫けるものじゃないはずだ。


「ヒロ、ごめん。」


と俺はヒロに言った。


そして、俺は気持ちを切り替え、ヒロの後ろをついていった。



「さっきナオを襲った奴は完全に人間に見えた。でも、体が変形しだした。あれは明らかに化け物だ。」


とアーシャが言うと


ヒロは神妙な面持ちになった。


「こいつは、とりあえず俺が対処する。お前らは援護しろ。」


とヒロは俺たちに言い残して、化け物のところに直行した。


ヒロはまず、真っ先に先程ナオを襲った人間の姿のところに行った。


「あのさ、弱点とかない?ドロドロしてて全く攻撃が効かないんだけど?」


とヒロはまさかの本人にその質問をした。


俺たちは援護しながら驚いた。


「そりゃあそうさ!攻撃を避けるための体なんだから。」


とその化け物はウザさMAXで答えた。


「そっか、それは残念。でもさ、珍しいよね〜。人間が入り込んでるって。」


とヒロは相手の攻撃を華麗に避けながら言った。


「人間?これ全体が僕の体さ!!」


と化け物は再び不気味な笑みを浮かべながら答えた。


「ふーん。じゃあ、その触手と君の体のドロドロしているのは、能力ってことか。」


とヒロはニヤッとした。


「おい!スリー!こいつにお前の能力を使え!」


とヒロは援護していたスリーに言った。


「わかりました!」


とスリー言って、スリーの能力『喪失』を化け物に使った。


スリーの能力『喪失』は相手の能力を消すことができる。


「出来ました!」


とスリーはヒロに向かって叫んだ。


「あんがとよ。後は、どっちか‥。」


と言って、先程と全く形容が変わらない化け物のドロドロした体を切り刻む。

しかし、ドロドロしたままであった。


「おっ、ビンゴ!」


とヒロは触手の生える人間の方に行った。


すると、そいつの触手は生えていなかった。


「なんだこれは?攻撃ができないじゃないか。」


と化け物は意外にも、あっけらかんとしていた。


「そこを狙ってんだよ。」


とヒロはそのまま、触手の生えていた人間のところに飛びかかる。


「あれ、これまずい感じの奴?今日は実験のはずなのに‥。」


と触手の生えていた人間がボソッと言った。


「僕もまだまだってことか、とりあえずこれ以上面倒くさい立場は嫌だな。」


とそいつが笑って言った。


すると、化け物からいきなり、眩しくて目が開けられないほどの光が放たれた。


「あいつ、逃げる気か!」


と光ので見えない中からアーシャの声が聞こえた。


そして、光はだんだん小さくなり次第には消えていった。


その時、そいつの姿はなかった。


残されたのは、あたりが破壊された町のみであった。












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