第36話 ナオとサンの抱えてたもの
俺はカナタを殺していなかったのだ。
カナタを自分のこの手で殺めて、失ったことを1人抱え込み、ずっと苦しんできた。
でも、こうやってナオに話したことで思いのほか楽になっていた。
「ってことは、俺の記憶は書き替えられた‥?」
と俺はナオに確認した。
「そう考えるのが普通だよ。」
とナオは言った。
「でも、夢の話が本当だとしたら、誰なんだ、俺とカナタを拘束していたやつ。カナタを攻撃していたやつ。毎回その光景だけがぼやけてて、わからないんだ。」
と俺が言うと、
「うーん。誰なんだろうか。」
とナオも考え込んだ。
俺は思い出しかのように
「あっ!ヒロは何か知っているようだった。」
と言った。
俺がこの話をした時は明らかに、何かを知っていたように見えた。
「なんか、ヒロ怪しくないか?」
と、ナオは言った。
「なんで、お前の夢の話をその段階で他の人に話すなとか、忠告できるんだ?その場にいたのはヒロなんじゃないのか?」
とナオは推測を続けた。
「でも、俺はあの時、人は何人かいた感じがしたんだよね。1人って感じじゃなくてさ‥。」
そういうと、
「グレーボーダーが関わってるとか?」
とナオは驚きの発想を俺に示した。
「グレーボーダーが?」
俺は驚きのあまり、繰り返すことしか出来なかった。
「そうだよ‥。複数人いるなら、グレーボーダーが関わっていたのかも。」
と俺たちの話は思いもよらない方向に行った。
「まぁ、今のままじゃあ、根拠が薄すぎるけどね。」
とナオが言った。
この話はここらで行き詰まった。
俺が大切な話をしたからか、今度は、ナオがヒロとペアだったことを話し始めた。
ナオが俺に心を開いてくれてると感じた俺はとても、嬉しかった。
「俺は、昔は、サンみたいにヒロとペアになることを目指していて、周りにもそれを言い回ったりして。ヒロとペアになることが最強の人材だと信じてきたんだ。」
とナオは言った。
「その言い方だと、俺が言いふらしてる奴になるじゃないか。」
とナオに対して俺が突っ込むと、
「まぁ、細かいことはいいから。」
と話を続ける。
細かくはない。俺は言いふらしてなどいない。これは真っ赤な嘘である。
そんなデリカシーはないナオは話す。
「俺はどうしてもヒロとペアになりたくて、毎日努力して、ミシェとかにも、ヘッドフォンを改造してもらって、やっとの思いで下剋上でSランクに上がったんだ。」
と言った。
俺より幼かったわけだから、ナオがしてきた努力はきっと計り知れないだろう。
「それで、初めて、直接ヒロに会ったのは、Sランク戦の時だった。その当時、ヒロは誰ともペアを組んでなくて、ペアを探していたんだ。だから、俺は半強制的にペアにしてもらったんだ。
最初は、ヒロのスピードについて行くので精一杯だったけど、最終にはなんとかスピードについていけてた。
時々、ヒロは尋常じゃない化け物のような動きをすることもあった。そんな底知れない恐ろしさも相まって、最強なメンバーであるとして憧れていたし、周囲からも一目置かれた存在であった。
しかし、ある日突然、お前とペアを組みたくないとはっきりヒロに言われてしまった。理由を聞いても、お前とは無理だとしか言わなかったヒロに俺は失望した。それと同時にグループ1を去ったんだ。」
とナオは俺に説明してくれた。
俺はそれを聞いて感じたのは、ナオが感じているような裏切りといったことよりも、ヒロはペアを解消すべきと決断しなければならない、きっと何か理由があったにちがいない。
でも流石に、訳も分からず、憧れの人にそこまではっきり言われてしまえば、不信感を抱き、慕っていた分だけショックは大きいものだろう。
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