第38話 ヒロとアレク














見事に指名権を獲得したアレクはヒロと無事ペアを組無事ができたが、しばらくすると、ナオの時と同様にヒロはペアを解消したいと言い出した。


しかし、アレクは全くヒロの言葉に耳を貸そうとしなかった。ヒロはそれでも、解消を求めていた。


流石にくどいヒロにアレクは解消したい理由を聞いた。


「なんで、そこまで解消したがってるんだよ。そんなに、サンと組みたいか?俺に負けたやつだぞ。」


とアレクはヒロに言った。


ヒロはそれに対して何も答えなかった。

 

「お前は、アーシャと組んだ方がいい。」


とヒロはアレクに対して断言した。


「兄さん?なんでここで兄さんがでてくるんだよ。」


とアレクは言った。


「お前もアーシャもそれを望んでるはずだ。」


とヒロは言った。


この発言にアレクは激怒し、そして、そのままその場をさっていった。


2人はペアなのにも関わらず、すれ違っていった。





俺とナオは数日後ミシェに研究室に呼び出された。


「これが、サンの能力の制限を伸ばしてくれる薬よ。たぶん、普段の1.5倍は確実に役に立つはずだわ。


ただし、一度の服用は3個までね。


次、薬を飲みたい時は、3時間、時間を空けて飲んでね。


これ、意外と重要だから!!摂取量を超えると身体が反応しちゃうから。」


とミシェは言って、薬を渡してくれた。


「あと、これを飲んだからって何か良くなるわけじゃないからね。

これを飲んで眠くならない分、後で、一気にくるから気をつけてね。」


とミシェは言った。


「ありがとう」


と俺は言った。


俺は無事、能力の発動時間を上げることができるのだ。


翌日、早速、俺は薬を一粒飲んだ。

ナオと仮想空間で模擬対戦を行った。


効果は絶大であった。

一粒だけでも1.5倍ほどの効果があった。


これは、教えてくれた、ナオと作ってくれたミシェに感謝しかない。


俺は自分の弱点を克服までとはいかなかったものの、改善することは出来た。


その1週間後、俺はアレクの元に訪れた。


「ヒロとペアを解消してほしい。」


と俺はまず、目的をアレクに伝えた。


「ぜっっったい、嫌だね。」


とアレクは拒否した。


ここまでは想定内だ。


「ただでとは言わない。俺と条件付き戦闘をしてほしい。」


と俺は言った。


「条件は、俺が勝ったらペアを解消して欲しい。もし、お前が勝ったら、俺は二度とヒロに近づかないし、グレーボーダーも辞める。」


と俺がそう言うと、アレクは笑った。


「ふーん。辞めるか。まだ足りないと思うな。こっちは必死で掴んだ物を放棄しろって言われてるんだぞ?だったら、お前はランクもポイントも放棄しろよ。」


とアレクは言った。


「わかった。言われた通り負けたら、ランクもポイントもグレーボーダーも全て放棄する。」


と俺は言った。



俺が心配だったのは、どんな苦しい条件よりもアレクがこの条件付き戦闘を行ってくれるかだった。

俺にとって条件などは気にするべき物ではなかった。


「じゃあ、明日でいいか?」


と俺が聞くと


「ああ。明日、仮想室で行おう。」


とアレクは言った。



そして、翌日、仮想室に行くと、誰にも言っていないはずなのに、たくさんの人がいた。


そこには、ナオ、アーシャ、ミナ、スリーもいた。


「おい、お前ら何でいるんだ?」


と俺が聞いた。


「アレクがみんなに言いふらしてたから。」


とミナが言った。


アレクのやつ、いつのまにか言いふらしているなんて。本当に勝手なやつだ。


いや、俺も十分、勝手なやつだった。

俺はナオの顔が見れなかった。勝手にヒロとアレクのペアを解消させようとしていたのだ。ナオには申し訳なさでいっぱいである。


「頑張れよ。」


とナオは言った。


俺はその時、ハッとした。


きっと、ナオはこうなる事をわかっててミシェを紹介してくれたのかもしれない。


ナオには感謝しかない。


「おお。」


と俺は笑顔で返した。


「あんまりさ、プレッシャーとか良くないとは思いつつ、絶対勝ってね!」


とスリーがゴリゴリにプレッシャーをかけてきた。


アーシャは何も言わなかった。

弟を負かそうとしてる奴に何で言えばいいかなんて俺だってわからない。


「あれ?ヒロいない?」


とミナが言った。


「え。」


と俺が言いながら皆の指す方を見ると、確かにヒロがいた。そして、隣にはミシェもいた。


ヒロも知っていたのだ。


「ま、気を抜いて頑張ってよ!応援してるから!」


とミナが笑顔で応援してくれた。


「ああ。みんな、ありがとう。」


と俺は言った。


俺は対戦の準備をした。


そこにアレクが来た。


「前回のようにはなりたくないから、最初から全力でいかせてもらうよ。」


とアレクが言った。


「それは、楽しみだな。」


と俺はぼそっと言った。


俺とアレクは仮想室に入った。


そして、試合開始ブザーが鳴った。



俺は、試合前、薬を3つ飲んだ。


まだ薬は2つまでしか試したことはなかったが、念のため3つ、飲んだのだ。


俺は前回の決勝戦とは違い、緊張していた。


力まないようにジャンプをして、緊張を和らげた。


「お?なんだ、緊張してるんじゃないか。昨日は自信満々に条件を呑んでくれたが、やっぱり、無理な条件だと気づいたのかな?」


とアレクは俺の気持ちを煽り立てるように言った。


「そんな気持ちだったらここに来てない。」


と俺は答えた。


すると、早速アレクが仕掛けてきた。


前回と違うのは俺だけではないようだ。


アレクは瞬間移動の速さを究極に早くし、はたから見ると分身がたくさんいるようだった。


しかし、俺とアレクは元々似たような能力ではあった。アレクははやさには対応していたが、遅く対応することは出来ない。これがアレクと俺の違いだ。


俺はアレクが分身に見える速度で襲ってくる前に、能力『時間』を使った。


「遅くなれ」


俺は心の中で呟いた。


遅くなったアレクはゆっくりと動いている。

俺は早速、アレクの右横に行った。


後ろと上に行くのは既に警戒されているだろう。念のため予想外の位置に立ってみることにした。


そして時間が元に戻った。


アレクが瞬間的に右に来た瞬間を狙って剣で斬った。


「そこにくるんだ。」


と少しアレクは驚いた様子で言った。


剣はアレクにあたったみたいだが、致命傷までとはいかなかった。


その頃、ミナとスリーとナオとアーシャ


「なんか、サンの動き、決勝戦と比べてだいぶ攻撃的になってない?」


とスリーが言った。


「それもそうだろ。俺とペアを組んでから任務を3週間で40件もこなしてきたんだ。動きが変わるには、十分経験したんだ。」


とナオが言った。


「よ、40件!?1日に2件を毎日やってたの?学校もあったのに。」


とミナが驚いて言った。


「いや、学校があった日は2件はほとんど、やってない。ない日に4件ぐらい、多くて5件だ。」


とナオは平然と言った。


「サン、全然見ないと思ったら、そんなに任務こなしてたのね。」


とミナが言った。


「確かに、動きに慣れが出て気がする。流れるような。」


とスリーが言った。


その頃、サンとアレクのいる仮想空間


「なんか、先手を取った気かもしれないけど、俺だってお前の弱点はわかってるんだ。」


とアレクは自信満々に言った。


「弱点か。」


と俺はボソッと言った。


アレクに俺の能力の弱点がバレているのは仕方ない。一回対戦した相手だ。それくらいはわかって当然だ。


しかし、問題は、アレクが集中的に能力を消耗させようとしてくることだ。

この場合、俺の能力がいくら前より使えるようになったからと言って無闇にその計画にのるわけにはいかない。


俺はアレクに俺の能力の無限さ、弱点を克服したと思わせるしかない。


とりあえず、能力を使ってアピールしてみることにした。


「俺が前のままだと思うなよ。」


と言いながら俺は時間を遅めるを再び使った。


そして、今度はアレクの左にいき、攻撃をした。


またもや、剣はアレクに命中した。



その頃、ヒロとミシェ


「攻めるねぇ〜。」


とヒロは言い


「完全に動きが前と違う。」


とヒロは真剣な眼差しで言った。


「サンくんが変わったのは、それだけじゃないわ。」


とミシェはニコッと笑いながら言った。


その頃、仮想空間にて


アレクは前回の大会で、俺が見抜いたアレクの能力を使う前の癖をわざと使って俺を動揺させようとした。


「あれ?見極めなくて大丈夫?」


とアレクは俺の能力の心配をしているかのように言った。


確かに薬をもらう前の俺だったら、能力を使い過ぎないように見極める必要があった。


アレクは、やはり、俺の能力の消費を気にしているようだ。


「そんなに、能力を使ってほしいんだな。」


俺はアレクの瞬間移動してきた攻撃をすべて能力『時間』で対応した。


何個もされる攻撃に対し何回も発動しながら対応していった。


流石にアレクも前の俺とは違うと気づいたのか、少し動揺を見せてきた。


少しずつだが、俺に対して無数に攻撃をするペースを落とし始めた。


俺は知っている。アレクは最初から全力でいけるタイプであるかわりに、後半バテる傾向がある。能力が無限でも、体力は失われるのだ。


「大丈夫?ペース落ちてるけど。」


と俺は言った。


「うるせぇ‥。」


とアレクが言った。


俺は気づいた。とっくに、時間の能力の弱点を気にしなくても勝てることを。


ペースが確実に落ち始めた時、ここぞとばかりに畳み掛ける。


時間を3連続使っての3連続攻撃だ。


3回ともアレクに命中した。


まだ、試合終了に合図がならない。相変わらず、しぶといみたいだ。


俺は次の攻撃で終わらせようと思いっきり前から攻撃することにした。


「遅くなれ」

と心の中で呟く。迷うことなく、アレクの前に行き飛び上がった。


時間が元に戻り


俺は前からアレクを斬った。


試合終了のブザーが鳴った。


その頃ヒロとミシェは


「面白い。」


とヒロは口角を両方上げて言っていた。


すると、ミシェのいる方向を向いた。


「サンの能力の使い方に前にはなかった、余裕を感じられる。ミシェ、お前何かやった?」


と鋭い観察力を持つヒロは、ミシェに聞いた。


「頼まれたから。能力の改善を。」


とミシェは言った。


「なるほど。」


とヒロは言った。



試合ブザーが鳴った後、俺は仮想空間から出た。


すると、アレクが俺に近寄ってきた。


「完敗だ。約束通り、ヒロとペアを解消する。」


とだけやけに素直に言ってアレクはその場を去っていった。


そのあと、みんなが駆け寄ってきた。


「かっこよかった!」


とスリーとミナが声を揃えて言った。


「お疲れ。」


とだけ、ナオは言った。


そこにはアーシャの姿はなかった。


「アーシャは?」


と俺が言うと


「試合が終わったらいなかったんだよね。」


とスリーが言った。


「ふーん。」


その頃アレクはヒロのところに行った。


「おい、ヒロ。俺とお前はペア解消だ。」


とアレクは意外とあっさりとヒロに言った。


「これは、ほとんど俺の我儘でもある。ごめんな。」


とヒロはアレクの頭をぽんっと一回叩いて、ヒロはアレクの元を去った。


「そういう時だけ、謝るのはずるいぞ!!」


とアレクは叫んだ。


「おいおい、これはそういう雰囲気なのか‥。」


とアレクの後ろから声がした。


「お前、本当、変わってないな。」


と近寄ってきたのは、アーシャだった。


「何がだ。」


とアレクは下を向いている。


「究極な負けず嫌いあーんど、泣き虫なところ。」


とアーシャが言った。


「別に、泣いてないし。」


とアレクが言った。


「そういうところだって。素直になればいいのに。」


とアーシャは少し笑った。


アレクの目には涙が溜まっていた。


アーシャは、アレクの頭をポンっと優しく叩いた。


「お疲れ様。」


とアーシャは言った。






















































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る