第32話 接戦の決勝戦
俺はアレクが俺の狙いを見抜いていることに気づいていなかった。
すると、アレクは故意に浮き上がって、『瞬間移動』をしないで、俺が動いたところに向かって瞬間移動をして攻撃をしてきた。
完全に逆手に取られていた。
その時俺は、アレクに浮き上がるタイミングを見計らっていたことがばれていることに気づいた。
俺はアレクがSランクの4位、経験値もかなり高いことを改めて思い知った。
こんな短時間で気づくとはさすがとしか思えなかった。
相手の行動を冷静につぶさに洞察する力は、Sランク上位に上り詰めることで鍛錬されたものだった。
俺はそんな関心に浸る暇もなく、次を考えていた。
俺もアレクも傷は負っていた。
しかし、アレクはまだ、俺の能力をはっきりとは、わかっていない様子であった。
俺から仕掛けるしかない。俺は先に仕掛けることを決めた。
俺は心の中で「遅くなれ」と念じた。
そうして今度は背後ではなく、あえてアレクの頭上にジャンプした。
そして、時間が元に戻ったところで、俺は上から剣を振り下ろした。
しかし、さすがSランク4位。アレクの素早い瞬発力によって対応されてしまった。
俺は、ただ、攻撃するだけじゃダメだと思った。確実に時間が遅くなっている時に、確実に攻撃するのが最良な策だと思った。
その頃、アレクはサンの能力が時間関係ではないかと、勘づき始めていた。
それは、自分が知らない間に攻撃を受けたとことと、一瞬で消えたことから導いた結論だった。
アレクはサンの能力に思わず
「ちょっと、反則だろ。」
と心の声が漏れてしまった。
その頃のサン
俺はひたすらにアレクを確実に仕留めることができるタイミングを狙っていた。
しかし、だんだんと速くなっていくアレクの攻撃に能力を使わずについていくのは、きつかった。
そして俺は、あることを、思った。
時間を遅めた短時間では、確実な攻撃をするのは不可能ではないかと。
確実に攻撃をするなら短時間ではなく、長時間、時間を止めるくらいなことをしなければ難しいのではないかと、思った。
しかし、それをすると、俺の意識を失う可能性が高まる。
アレクのガス切れはあり得るのだろうか。色々のことを考えるが、なかなか思いつかない。
アレクの攻撃は止まらない。攻撃のスピードは更に速くなる。
俺は、これに耐えていたら、キリがないと考えた。
そして、次、タイミングが来たら、確実に仕留めようと決めた。
しかし、なかなか、いいタイミングがない。アレクの攻撃は止まらない。
俺は一旦、時間を遅めてから体制を整えることにした。
「遅くなれ」
時間は遅くなり、俺は攻撃を受けにくい、アレクの真後ろに、場所に移動した。
そして、時間が戻った瞬間、俺はすぐさま
「止まれ」
と願った。
10秒ほど止められそうだった。
そして俺は思いっきりアレクの背中を切った。
時間が動きたすと、俺は完全に切ったと思ったのに、試合終了のブザーが何故かまだ鳴らない。
アレクもアーシャと同様にしぶとかった。
さすが兄弟であった。
その頃会場にいたミナたちは心配そうに、試合を見つめていた。
勘のいいナオはすぐさま、サンの能力がわかったようだ。
「マサさん。サンの能力もしかして、『時間』?」
とナオはマサさんに確認した。
「そうやで。良くわかったな。」
まだ、能力が何か気づいてなかったスリーと、ミナはナオの観察力に驚いた。
その頃俺は、ブザーが鳴らないことに戸惑っていた。
俺からの大ダメージを負ったアレクは、じっとどこかを見つめ、何かを決意したように思えた。
すると、アレクは口を開いた
「お前が、ここまでやることは想定外であることは間違いない。しっかーし、Sランク4位をなめないでもらいたいね。」
その一言を聞いて、俺はとても嫌な予感がした。
アレクの動きが変わっていた。
無駄な力が抜けていた。
俺は何かでかい攻撃がくる気がした。
俺は体制を変えた。
俺は自分の異変に気づいた。
さっきの時間を止めたことが体に影響し始めていた。
意識が遠くなっていくせいで、体が思ったより重くなっていた。
その異変にアレクも気づいたようだった。
すると、俺はアレクがアレクの兄のアーシャに見えてきた。
突如として、俺の勘が働いた。
アレクはもしかしたら、準決勝でアーシャが攻撃してきた技をやろうとしてるかもしれない。
だとしたら、俺は非常にまずいことに気づいた。
俺が、この『時間』を使ったとしても後、残り1回で数秒である。
その頃、実況中のヒロはというと
「2人とも動きが遅くなったように見えますね‥。」
と実況者が言った。
「サンは遅くなっているが、アレクは遅くなったというより、体に無駄な力が入っていない感じがする。」
とヒロが時折くる真面目の返答をした。
「どうしてそれがわかるんですか?」
と言うと
「良く見てみて。2人の足の動きを見れば歴然さ。サンは軽く引きずっている。アレクは一切引きずってないし、むしろ跳ねてる。」
とヒロが説明するが、実況者には違いがわからないようだった。
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