第31話 決勝戦 試合開始
決勝戦の時間が刻一刻と迫っていた。
俺は色々考えていたことを一旦忘れようと自分の胸を2回叩いて流し込んだ。
そして迎えた試合開始の直前に、アレクに一言だけ伝えた。
「さっきは、兄弟のことに俺が勝手に入り込んでごめん。それだけ言いたかった。」
と俺はアレクに告げた。
すると俺が謝ったことが意外だったのか、とても驚いた様子で
「わかればいいんだよ。まぁ、お前なんかには負けないけどな。」
とアレクは勝気に口調で言った。
「俺も負ける気はないよ。」
と俺も、アレクに対する宣戦布告を行った。
間もなく、俺とアレクは仮想室に入った。
これまでの試合と違い、俺は観戦の声が聞こえないくらい集中していた。
能力を使うタイミングを考えていたのだ。
アレクの能力の場合は、先手が1番有利に活用できるが、いきなり使っていいものかと迷っていたところがあった。
そして、『時間』には制限があることも忘れてはならなかった。
能力を使い過ぎて意識を失ったら、元も子もない。
だからといって、保守的になって、能力を使うタイミングを逸してしまうのはもっと良くない。
俺は必死に頭の中に能力についてのことをめぐらせた。
そして、決心がついた。
どうせ、『時間』の能力がバレるなら、1番無防備な開始早々に仕掛けた方が良さそうだ。
試合開始のブザーが鳴った。
それと同時に俺は、能力『時間』を発動した。俺は心の中で「遅く」と呟いた。
そして、俺はすぐさま、アレクに背後に回った。
何とか俺は時間が戻る前にアレクの背中に傷を入れることができた。
そして、時間が戻ると、アレク含めた観客は唖然とした顔つきをしていた。
「速い? いや、瞬間移動ではないのか。」
とアレクは独り言を呟く。
その頃、会場では、マサ以外のミナたちは、能力を使っているサンを初めて目の当たりにした。
全員驚きを隠せずにいた。
「ちょっ、‥。何あの瞬間移動みたいなの、ねぇ、見た?見た?」
とミナは興奮してナオの右肩を何回も叩いた。
ナオはそんなミナの行動が気にならないくらい、呆気に取られており、サンに興味津々、凝視していた。
そして、スリーはというと
「さすが、サンくん!初めからかましてくるね〜い!」
とお見通しであるかのように言っている。
サンの訓練相手だったマサと実況中のヒロは口を揃えて、
「ええ判断や。」
「いい判断だ。」
と2人とも言った。
会場中がざわついていた。
俺は、一発目の攻撃が無事決まったことに安心する間もなく、アレクから次々に出される攻撃に対応していく。
また、俺はアレクとアーシャの試合をただ見ていたわけじゃなかった。
この試合を乗り切るために、アレクの
『瞬間移動』の癖を見つけていた。
俺はアレクが『瞬間移動』を使う時、僅かに、体が浮き上がる瞬間があることに気づいた。
実況者はヒロに尋ねる。
「ヒロさんはこの能力が何なのか知ってるんですか?」
とヒロに聞いた。
「ちょっと、静かに。今いいところだから。」
と、ヒロは完全に実況を放棄した。
実況者はヒロにも唖然としたが、実況者も試合に釘付けとなっていた。
俺はアレクの攻撃になるべく、能力を使わずに避けるために、アレクの浮き上がるタイミングを見計らって調整していた。
俺とアレクの接戦ぶりを見て観客からは、
「おー。」
という感激の声すらも聞こえた。
アレクも俺が攻撃に対応してることに気づいたらしい。
「どうして対応できる?」
とアレクは俺に投げかけた。
アレクは必死に考えた。一回無駄に瞬間移動をアレクをした。その時俺の目線をアレクは見た。
俺はそんなことにも気づかないで浮き上がる瞬間を見計らっていた。
その様子を見たアレクは、俺がアレクの浮き上がっているタイミングを狙っていることに気づいたのだった。
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