第27話 開会式
そして、開会式が始まった。
俺は列に並ばさせられ、対戦に臨む選手一同とともにパレードをしながら会場に入ることになった。
俺にとっては、小さい頃以来の行進パレードで、気恥ずかしさもあった。
しかし、会場に入ったとたん、俺は満席の会場を目にすると同時に、大勢の歓声を耳にした。
その瞬間、小学生のパレードとの比較などとは、かなり次元の違う事態だと苦笑いした。
開会式が始まった。
改めて大会のルール説明や、トーナメント、そして優勝賞品が発表された。
よくあるスポーツの大会にはお決まりな段取りで開会式を終えた。
緊張はしてないはずなんだ。してないはずなのに、感動してなのか、心拍数が上がっていた。
俺たちは控え室に戻った。控室は、出場者を応援しにきていた人たちで混雑していた。
俺のところには、スリーとマサが来た。
「緊張してる?」
とスリーが俺に聞いてきた。
「いや、してない‥はずだ。」
と俺は自信なさげに言った。
「大丈夫や。サンがやってきたことは間違ってへんから、自信を持てよな。」
とマサに励まされた。
「あれ、ヒロは?」
と俺が2人に聞くと、
「ヒロは、なんか、今大会の実況するらしいから、実況席にいると思う。だいぶ、めんどくさがってだけどね。」
とスリーが笑って答えた。
ヒロが実況を真面目にしてる姿は想像できない。なんだか、嫌々やってる姿だけが目に浮かんで、俺も思わず笑ってしまった。
するとスリーが何か思い出したようで
「あっ、そういえば、ヒロから伝言預かってたんだった!」
と言って、スリーはポケットから小さな紙を取り出した。
「はい。」
とスリーが渡してくれた、手紙を見るとそこには、「優勝しろ」と書かれていた。
俺は嬉しくなっていつの間に自分の口角があがっていた。
「サンは何回戦?」
とスリーが聞いてきた。
「俺はシードだから、10回戦以降だったと思う。」
と答えると後ろから聞き覚えのある甲高い声がした。
「サンー!サンー!おーい!」
と後ろを振り返るとそこにいたのはミナだった。
「大きい声でやめろよ。」
ミナの声で振り返った周りからの視線が痛かった。
するとミナは口を膨らませて
「なによ、せっかく応援しにきたのにぃ。」
と言うと、後ろにはナオもいた。
俺は驚いた。ナオがここにくるとは思いもよらなかった。
「なんでナオまでここにいんの?」
俺が質問すると、ナオはいつもの冷静さはどこにいったのやら、ここにいることが恥ずくしなったのか、
「お、お前の能力に興味があってな。」
とボソっと、覇気のない声で言った。
「そう。それで、さっき会場で見つけたから、サンのところに連れてこうと思って引っ張ってきたの。」
とミナが屈託のないやり切った顔をしていた。
ナオはミナの謎のお節介?に付き合わせられたのだ。
「ミナちゃん。勝手に連れきちゃ、ナオ君が可哀想じゃないか。ここはどう見たってナオが来る場所じゃないじゃん。」
と、スリーが言ったが、一見庇ってるようにも見えるがナオを少しバカにしてるようにも捉えられる言い方だった。
「おい、それはちょっと失礼じゃないか?」
と流石のナオもつっかかってきた。
「じゃあ、私たち、アーシャのところにも行ってくる。」
とナオ以外のメンバーは皆アーシャの元に行ったようだ。
その場に1人残されたナオは何か俺に言いたそうだった。
「何だよ。」
俺はナオに言い放った。
「いや、本当に指名権をヒロにするのかなって思って。」
とナオはゆっくりと尋ねる。
ナオはヒロと元ペアで、その時に何か2人にトラブルがあったのだろうか、ヒロのことをとても嫌っていた。
「もちろん。」
と俺は言った。
ナオは他に言いたげな様子であったが、それ以上の言葉を飲み込み、何かを言うのを諦めたようだった。
大会の1回戦が始まったのは、それから20分程してからのことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます