第25話 能力の欠点
俺は目を覚ました。
真っ先に目に写ったのは、俺の部屋の天井だった。
俺はベッドで寝ていたみたいだった。
時間感覚が全くなく、たくさん寝てしまったのではないか、今一体何時のか、気になり、すぐさま食堂に行った。
「もう、大丈夫なのか?」
とヒロに言われた。
マサもヒロと一緒にいたようだ。
「全然大丈夫だ。俺、どれくらい寝てた?」
と聞くと、
「そないに寝てへんし。ほんの、小1時間や。」
とマサが答えた。
小1時間。確かに、窓の外を見ると、明るさはそんなに変わっていなかった。
「急に、体の意識が抜けたんだ。何でだろう。自分でもわからないけど、もう、何ともないから、訓練を続けたい。マサ、よろしく頼むぜ。」
と俺が言うと
「うーん。どうやろう。もしかしたら、意識飛んだのは、『時間』の欠点かもしれへん。」
というマサにヒロも頷いた。
「どんな能力にも欠点はあるんだから、その可能性も考えておいたほうがいいかもね。」
とヒロは珍しく真面目に、慎重な口ぶりで言った。
「ま、とりあえず、もう1度対戦してみないとわからへんけど。 ちょっと、そこのところを注意して戦っていこう。」
とマサは言った。
俺の能力に弱点があるかもしれないのか。
他のみんなにもあるように、俺にもある。最強の能力なんかないんだ。
俺は、とにかく、早く詳しく知らないと何も始まらないことを察した。焦りにも似た感情が走るも自分の持つ能力への可能性を試してみたい気持ちが強まっている。
何ら根拠もないが、ただ目の前の戦いに挑み続けることで、自分の能力に自信が持てる、ただそれを信じていた。
俺は、それから何度かその後も対戦を行い、マサとの訓練に日々励んだ。
そのうちに、能力、『時間』の弱点がマサやヒロが言った通り、ある一定量を使うと意識が遠くなって眠ってしまうというものだということがわかった。
基本的には1時間以内で目を覚ますが、時に、一気に能力を使った場合のみ、1時間以上眠りについてしまうことがあるようだ。さらに、不思議な現象にも気づいた。
俺は何度も時間の能力を使った後に眠りにつく度に毎回同じ夢を見るようになった。
それはカナタが化け物の姿になって悪者になった日の夢であった。
この能力を使って眠ってしまった時のみに、この夢を見る。そして、この夢は俺の記憶とは少々違うものとなっていた。
俺の記憶と夢は、俺がカナタに間違えて攻撃をしてしまうところまでは一緒であった。しかし、夢の中では、カナタの姿は消えることなく、1人叫び暴れ狂い続ける。
そして、カナタが何者かによって、一斉にレーザービームのような武器で攻撃され、もがきくるしんでいるのを見て絶望している俺の姿があった。そして俺自身の身体も何者かによって取り押さえられており、カナタを救うことができないという夢であった。
同じ夢は、何度も見るのにどうしても、その何者が誰なのかがわからない。
そして、どうして、毎回全く同じ夢を見るのかも不思議だった。
それと同時にまた、自分の記憶に自信を持てない自分がいることに気づいた。
俺はそんなことを感じながら、マサと訓練を続けた。
そして、最初は、マサはほとんど能力を使っていなかったが、次第に能力を使う回数が増え、対処するのが難しくなっていた。
ある日訓練終わりに、マサは俺に尋ねた。
「サンは何でそないにヒロとペアを組みたいんだ?」
俺は、真面目な面持ちでマサの目をしっかり見つめながら、
「俺はヒロとペアを組んで真実に近づきたいんだ。」
と答えた。
「そっか、なら、がんばらんとね。」
とマサが軽い笑みを浮かべながら答えた。
共感と励ましにも見えたマサのその表情をみて、俺はふと尋ねた。
「マサは、なんで、グレーボーダーに入ったんだ?」
「わいもサンとそんなに変われへん。サンは、真実が動くことがないものだってこと、わかっとるか?」
と、逆に質問をされた。
「言われてみれば、真実は真実だし。」
「せやけど、それ以外は動くんだ。人も物も記憶も‥。わいは、動かないものが見たかった。
ちょうど、そん時にヒロと出会って、ここに入ったら、何がわかる気がしたんだ。」
とマサは言った。
マサのグレーボーダーに入った経緯の説明は、あまりにも抽象的で詳しい事情は全くわからなかった。それでも、特にそれ以上のことを聞くまでもないと俺は思った。
ただ、マサも俺も似ていると感じれたことで、十分には分かり合えた気がしていた。
「サン、お前はまだまだ強くなれる。なんしか、強くなれ。強くなればきっと、何か、掴めるはずや。」
とマサはきっぱりとした口調で俺にそう言うと、肩をポンと叩いた。
「じゃあ、訓練再開すっか。」
とマサの声かけに、俺はただうなづき、訓練を再開した。
それから大会まで約3週間の毎日、マサと俺との訓練は朝から晩までみっちりと続いた。
その訓練を通じて、ようやくサンは自分の能力の欠点が明確になった。
自分の戦闘スタイルが完成しつつあった。
そうして、大会の日が近づいていったのだ。
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