第22話 訓練相手の男
「でさ、お前には能力も使える戦闘の訓練相手必要じゃん?でも、俺は能力使ってあんま、戦わないからさ。」
「能力使わないって?」
そう、いいかけたものの、その後の言葉は発しなかった。
そもそもヒロの能力が何なのか、俺は知らない。
俺が知っているのは、この男がとにかくSランク1位の「最強の男」ということだけだ。
その圧倒的な強さと、それとは対照的に強さをひけらかさない、むしろチャラさすら感じさせる、勝つことへの執着すら見せないあっくらかんさに、本物の強さ、カリスマ性ともいうべきか、そんなヒロに俺は魅力を感じているのだ。
俺の発した言葉を交わすように、ヒロは言った。
「お前がグループ1でまだ会えてない最後の奴がちょうど今日帰ってくるから、そいつならお前の訓練相手にちょうどいいと思う。」
今回の瞬間移動に対応するためには、前回のスリーのような『喪失』のような直接的に相手に攻撃できない能力に対応する訓練では、歯が立たない。
「その俺が会ってない奴は、今日のいつ帰ってくんだ?」
と、俺が聞くと
「あー、多分、午前中には帰ってくると思う。」
とヒロは答えた。
とりあえず、俺はそいつがくるまで、ヒロとミーティングをすることした。
「‥ってなわけで、こいつは当たってもサンなら能力なしで勝てるだ‥。」
ヒロが話している途中でバン!っと大きな音が聞こえた。
するとヒロは半笑いで
「おっ、帰ってきたな。」
っと言った。
さっき言っていた、俺がまだ会えていないグループ1の最後の1人が帰ってきたようだった。
すると、どんどんこちらに近づいてくる足音がする。
そして、扉をバンっ!っと開けた。
「ヒロ!俺と戦ってくれる後輩はどいつや!」
と男が入った。
「お!マサ!久しぶり、任務お疲れ。こいつがお前に言ってたサンだよ。」
と俺の方を見ながら言った。
「おぉ!お前が、サンか!わいは、Sランク順位なしのマサや。ヒロからほとんどのことは聞いとる。よろしゅうな。」
とマサはハキハキと言った。
「よ、よろしく。」
と、マサの勢いに圧倒され、俺は恐る恐る言った。
そんな、俺の様子を見て、
「まぁ、勢いはあるけど、とにかくいい奴だから安心しな。なんっつても、こいつは順位こそないけど、スリーは勝てたことない強さだから。」
とヒロが言った。
それこそ、壁を感じたスリーだったが、そのスリーすらが勝てたことがない奴というのは、相当だということが戦わなくてもわかった。
「能力の制御はできてるのか?」
とマサが聞いてきた。
「できてるっていう意識はないけど、ヒロ曰く、出来ているらしい。」
と俺が答えると
「さよか。意識がないタイプか。」
と一旦マサは考え込んだ。
「とりあえず、明日から訓練を始めようと思う。今日は、考えさせてくれ。」
とだけ言って自分の部屋に帰っていった。
俺は心配になって、ヒロに聞いた。
「ほんとに、大会まで1ヶ月ないのに、大丈夫なのか?」
と俺が聞くと
「はは。何とかなるよ。あいつはしっかり明日までに絶対お前を成長させてくれる方法を持ってきてくれるさ。」
俺は少し嫌な予感はしたが、ヒロの言葉を信じて、その日は特に変わったことはしないで就寝した。
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