第20話 赤毛のミシェ
グループ1の基地に着くと、思い出したかのようにミナは用事があると言って本部の方にそそくさと向かっていった。
取り残された俺は基地の扉を一人で開いた。中には誰もいないようで静まりかえっていた。
そのまま食堂まで進み、扉を開けると、真っ暗で一瞬どうなっているのかと当たりを見渡している間に、暗闇の中から「バーン!」と何かが破裂する音が聞こえた。
その瞬間電気がついた。
目の前に見えた数人が、何か叫んでいる。
「%@#¥~!!」
俺は何を言っているかさっぱり聞き取れなかった。
周りを見渡すと、
そこには「サン、ようこそ」という幕が張られ、見覚えのあるグループ1のメンバーの顔ぶれであった。
「もう、ちゃんとそろえようっていったじゃない」
と、グループに混じっていた見知らぬ女性がぽつりと言い放った。
俺が戸惑っている様子をみて、そこにいたグループ1のメンバー達も動きが止まっている。
皆が固まっているその場の空気を見て、アーシャとその見知らぬ女性は焦った様子で、
「さあ、座って、座って。」
と言って、俺に声をかけて誕生席に座らせた。
どうやら、俺がグループ1に入ったことを祝福してくれるらしい。
「グループ1には、ヒロとまだサンが会ったことないメンバーが今いないが、久しぶりに今日1人戻ってきたメンバーがいるのだ。あと2人は今日もここにはいないが。」
と、団長のグレーが言った。
俺は見覚えのない女性の方をちらりと見た。
すると、その女性の方から俺に近づいてきた。
「私はミシェ。私は基本的に戦闘とかよりも、能力をサポートするものを開発するのが好きだから、何か作ってほしかったら、遠慮せずに言ってね。」
と、赤毛のロングヘア―をなびかせながら、
首をななめにしてウィンクした。
「かわいそうに、おばさんのウィンクなんて。。。」
と、アーシャが引き気味に、顔を引きつらせながら言い放った。
すると、「おばさん」という言葉に反応したのか、ミシェはアーシャの方を素早く振り返った。
「髪逆立ち野郎に言われたくないわよ。」
「うあぁー? これが最新のファッションなんだよ。流行りだよ。は·や·り」
という具合に、二人は言い合いを続けている。
そうしているうちに、いつの間にか戻ってきていたミナが俺に話しかけてきた。
「あの二人、いつもそろうとあーなるのよね。本当に仲が良すぎでしょ。」
とミナが言うと
2人はここぞとばかりにいいあいをやめ、
「仲良くない!!!!」
と息ぴったりに答えた。
「もう、ほらほら、今日の主役はあなた達じゃないですからね。ほら、祝賀会はじめましょうよ。」
とソラの声で、食べ物やら飲み物が準備された。
なんだかんだとワイワイとご馳走を食べて、その日の祝賀会は終わった。
その日の夜、任務を終えて帰ってきたヒロとミシェが話をしていた。
「どうだった?政府の開発機関は。」
とヒロがミシェに尋ねた。
「設備に関しては、まぁまぁかな。問題はなさそうだったけど‥。
何せよ、規模がでかいったらありゃしない。全てを確認できたわけじゃない。
ただ、唯一、気になるのは、
まだ実験は続いてるみたい。」
とミシェが答えた。
「そっか。また、何かあったら教えて。ありがとうね。」
とヒロは言った。
すると、ミシェは思い出しかのように
「あっ。そういえば、サン君。今日初めて会ったわよ。サン君、あの子、面白いね。
あなたとペアになりたいって、明言して、頼もしい感じね。」
とミシェが伝えた。
「ヒロがめっちゃくちゃ肩入れしてるって、アーシャが。最近、つるんでもらえないから嘆いてたわ。ほんっと、めんどくさかったんだから。」
「お前も、俺がサンに肩入れしてるように見えるのか?」
とヒロがミシェに聞いた。
「そんなの、知るはずもないってば。今日帰ってきたばかりなんだから。」
とミシェは赤毛を左手でかきあげながら言った。
「でも、俺は、あいつには自分で上がってこいって言ってあるから、最低限のことしか助けない。」
とヒロが言うと
「最低限は助けるのね。」
と関心深げにミシェは言い、続けて、
「やっぱ、ヒロはサン君に肩入れしてる。」
と、やや上目遣いで微笑みながら、先程とは違う答えをぴしゃりと言い放った。
ヒロにしては珍しく期待をかけている人物がサンであることをミシェは悟ったが、それをヒロに対して言葉にすることはなかった。これからが面白そうとひそかにミシャは思った。
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