第19話 サンの記憶

俺たち3人は特に注意が必要とルリからいわれていた、廃棄ビルに入った。


その中は薄暗く、目が暗さに慣れるまで時間がかかった。


目が慣れると、中の細かいものまで見えてきた。


そこは、悪者到来事件の時から誰も足を踏み入れるていないような。


デスクなどは埃が被っているが、当時のままである。


すると、ナオが突然、


「何かくる。」


と言った。


俺とミナは戦闘態勢に入った。


すると目の前がいきなり目が開けれないほどピカッと眩しく光った。


少し時間が経つと


「2人とも無事?」


ミナの声がした。


「ああ。」


と俺とナオはその声に答えた。


光りも消えて周りを見渡した。


すると、そこには、何もない白い空間で、あった。


「ミナ?ナオ?」


2人の名前を呼ぶが返答がない。


それにしてもこの空間には、本当に何もない。


これは、悪者の仕業だろうか。


すると、後ろから足音が聞こえた。すかさず、足音の方を向く。


俺は目を疑った。なぜなら、そこには俺の目の前で悪者となったはずの俺の友達、カナタが立っている。


その頃、ミナ、ナオもそれぞれ白い空間にいた。


ナオの空間では


ナオの目の前に、ナオの母親が立っていた。


「なるほど。そういうことか。」


早くもナオは状況を理解していた。


そしてナオはナオの母親に向かって襲いかかった。


ナオのお母さんは瞬時に攻撃を避けた。


「お前、俺の姿に驚いてないな。」


と、ナオの母親は喋った。


「声まで一緒なんて、タチ悪いな。」


「なぜ、驚かない?」


「母親がこんなとこに来るわけないでしょ。それに毎週会ってるから、さすがにわかる。」


すると、ナオの母親の姿から化け物に変身した。


「なら、力ずくで倒すのみだな。」


と言ってナオの方に襲ってくる化け物に


「お前うるさい。」


と言って、ナオはあっという間に悪者に睡眠薬を打ち、捕まえてしまった。


すると、今まで白かった空間が元いた場所に戻った。


そこには、すでにナオと同じように悪者を捕まえたミナがいた。


「よっ。無事だったみたいね。学校で幻影の可能性について習っといてよかった。あっ、まだサンが来てないみたい。あいつ大丈夫かな。」


とミナが心配そうに言った。


「あいつに耐性がないと、もし、本当に思い込んでいたりしたら、ちょっとやばいかもな。」


サンの空間にて


「カナタ…。」


俺は思わず言葉がこぼれた。


「お前、カナタだよな…?」


再会したのは化け物になったカナタだった。あの日以来だった。


「久しぶり。」


カナタであった。


とても懐かしい声である。


「お前、無事だったのか。」


俺はカナタに近づいた。


すると、カナタはニヤリとし、俺を刀で切ろうとした。


俺は瞬時に避けた。


「何してんだよ。」


「何してる?そりゃ、もちろん、君を殺そうとしているだけだよ。」


そこで俺はハッとした。俺の昔の記憶が蘇る。


カナタが化け物になった日。


カナタは理性を失っていた。


そこにいた人たちを誰彼構わず暴れていた。


俺はずっと、カナタは化け物の状態で逃げていったと思いこんでいた。


「お前は誰だ?」


俺はカナタが偽物であることに気づき、偽カナタに刀を向けた。


「あれれー?さっきまで信じとったのに、なんでわかったん?」


すると、そいつはカナタの姿から悪者の姿に戻った。


「お前のおかげかな。」


と言って、素早く、睡眠薬を打った。


すると周りが元いた場所に戻った。


「おっ!よかった〜。無事だったんだね!ちょっと、遅いから心配しちゃったよ。」


とミナが俺のところに近寄った。


「お前ら、早かったんだな。」


「お前が遅いだけだろ。変に心配しただろ。」


ナオも一応、心配してくれてたみたいだ。


「てか、今回の受付の人が言うほど強くなかったね。」


とミナが言った。


「今回みたいなタイプは経験値の問題だ。

多分こういう想定ができなかった人たちが幻覚で苦戦したんだと思う。

お前みたいな…。」


と言って俺の方を見た。


確かにこのまま昔の記憶を思い起こせなかったら、俺はこの空間を抜け出せなかっただろう。


それと同時に俺は、思い出してはいけないことを思い出してしまったことに気づいた。


カナタは化け物になった後、逃げたんじゃない。


あの時、カナタは化け物として自我はなく、体の制御ができていない状態であり、暴れまわっていた。


俺は自我を保てないカナタに対してカナタの攻撃を避けながらカナタの名前を呼び続けた。


いくら呼び続けても暴れまわるカナタに俺は近づいた。


その時、俺はカナタの不意にきた背後の攻撃に思わず自分の剣で攻撃してしまった。


するとカナタは致命傷をおい、化け物の状態で叫ぶと次第に小さくなった。


小さくなったカナタのところにいったが、そこにはもうカナタの姿はなかった。


そう、カナタは俺が殺した。


そのことを思い出したのは、偽物のカナタを目の当たりにしたからだろう。


「サン…。大丈夫?」


ミナが俺の方を心配そうに見た。


「うん…。」


俺たち3人は任務を無事終えて、捕まえた化け物三体を受け付けのルリに引き渡した。


「みなさん、任務お疲れ様です。三体とも受けとりました。あなた方に報酬として、5000ポイント入れておきました。」


とルリが言った。


「3000ポイントじゃ…?」


ミナが聞くと、


「先に帰って任務放棄した後の2人の分です。あの2人には、ポイントの没収と罰があるので、もう帰ってきた瞬間に拘束しました。」


とにっこりと微笑みながら言った。


俺はグループ1の基地にミナとともに戻る途中、ある考えごとをしていた。


それは俺の記憶についてだ。


今まで気にしたことはあまりなかったが、俺はカナタが化け物になった時の記憶が今日思い出したもの以外、その後自分がどうしていたか断片的な記憶を、持っていない。


記憶がないのではなく、あの日の記憶のみが、曖昧であった。このことに少し疑問を感じていた。


俺は隣にいるミナに質問をした。


「この世にさ、記憶関係の能力あると思う?」


するとミナは不思議そうな顔をしたが答えてくれた。


「あるんじゃない?見たことはないけど。珍しい能力の人なんてこの世にたくさんいるでしょ。」


「そうか…。そうだよね。」


俺はその後も記憶のことについて基地に着くまでずっと考えていた。

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