第16話 初任務①
次の日、俺はナオの発言が気になりつつも、ヒロと共に大会の対策と称してミーティングをした。
「まず、トーナメントに書いてある一番最初にお前と当たるやつは、順当に行けば、こいつだと。」
とヒロはトーナメント表の名前のところを指で差した。
「こいつの能力は『柔軟』だ。身体がとても柔らかいから、しっかり的を絞って攻撃しないと、普通の人が無理な体勢でも避けられる。えっと、一応Bランクみたいだ。油断は禁物だぞ。」
そして、黙々と俺と大会で当たるであろう相手の説明をしていく。
「まあ、今日はここまで。残りはまた他の日にしよう。」
とミーティングは終わった。
「あ、そういえば、サン。お前まだ、任務に参加したことなったよな?」
とヒロが思い出したかのように言った。
「そうだけど‥?」
俺たち学生の中で、ペアがいないものは、組織の任務というものになかなか参加する機会がない。そのため、俺自身未だに、任務には出たことがなかった。
「Sランクは任務1つは強制的に参加しなきゃいけないんだよね。」
とヒロはあっけらかんとして言った。
「えっ!?そうなの?」
「あれ?言った気がするんだが。」
とヒロが言った。
少し久々だが、相変わらずヒロは適当であった。そんなことは一切聞いていない。
「急すぎる。任務って何やればいいの?」
俺はヒロに聞いた。
「任務は基本的に2人1組か、5人1組の単位て遂行するんだ。まぁ、サンはペアはいないから、5人1組単位の任務に出るしかないんだけどな。たしか、明日に初任務にはちょうど良いのがあった気がする‥。サン明日は?」
とヒロが俺に聞いてきた。
「特に用事とかはないけど‥。」
「じゃあ、俺が任務の受付しといてやるから、詳細は後で連絡するよ。」
といつのまにか、勝手に決まってしまった。
次の日、俺はヒロから聞いた任務の集合場所に向かった。集合場所に着くと、既に俺以外の3人が到着していた。
すると、その3人の中に見覚えのある顔がいることに気づいた。
「ナオじゃん。俺、初任務なんだ。よろしく。」
というと、ナオは俺に気付き、俺の顔を見てかなり嫌な顔をした。
ナオは一息つき、口を開き
「もしかして、この任務にしたの、ヒロに勧められた?」
と聞いてきた。
さすが元ペア。相手のことをよくわかっているみたいだ。
「そうだけど‥?」
すると、ナオは何か言おうとしたが、そのタイミングで俺は背中を誰かにどつかれた。
「サン!初任務?」
と声のする後ろを向くと、そこには、同じクラスで同じグループ1のミナがいた。
「お前も任務‥?」
と俺が聞くと
「そうそう!あれ?ナオもいるじゃん。2人も知り合いがいるのは心強いな。」
とミナは笑顔で言った。
すると、既に任務場所に到着していた俺ら以外の2人が、俺に聞こえる声で
「悪者になろうとした裏切り者のくせに。」
と言った。
すると、それを聞いたミナが眉間にシワを寄せて、その2人の前にいき、
「言いたいことあるなら、直接いえば?」
と言った。俺とナオは思いもよらなかったミナの行動に、一瞬青ざめたが、まだ、続けようとするミナを2人でなんとか取り押さえ、その場を収めた。
「ミナ。庇ってくれるなら嬉しいけど、暴れるなよ。」
と俺が笑いながら言うと、
「だって、なんか、何にも知らないくせに周りが言ってるのいい加減、ムカついてきちゃって。」
とまだ、ミナの顔にはシワが寄っている。
その時、ふと、ナオは俺の悪者にろうとしていたことをどう思っているのか気になった。
「ナオはさ、俺が悪者になろうとしたの知ってんのに警戒しないんだな。」
と俺が言うと、ナオは微妙な顔をした。
「なに勘違いしてんのか知らないけど、そもそも俺、お前と普通に話す気ないし。」
とナオははっきりと言った。
正直にはっきり言ってくれること自体、俺は嬉しかった。
「そうそう、それぐらい面と向かって言ってくれた方がまだ、ましだってば。」
とミナが言った。
「俺はこっちの方が傷ついてる気がする。」
と笑いなが言うと、ミナとナオも笑った。
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