第15話 順位なしSランク
大会のトーナメントが発表された翌日、学校に登校すると、クラスメイト数人に話しかけられた。
「お前、Sランクになったと思ったら、今度の大会にも出るのかよ。」
「やっぱ、目的は指名権?」
「そうだよ。ヒロと組むんだ。」
と俺が言うと、クラスがざわついた。
すると、話しかけてきたクラスメイトたちの顔つきが変わった。
「おまえ、それ、ガチで言ってんの?いくら、Sランクの10位でも、1位のヒロさんと組めるわけないじゃん。」
と言った。
「ガチだけど。」
と俺が答えるとクラス中で笑いが響いた。
「俺、面白いこと言ったか?」
と俺はみんなに聞いた。
「サンは馬鹿にされてるだけよ。」
と後ろからミナが答えた。
俺はクラスメイトたちにイラッときた。
なぜ、笑われなきゃならないのか。
クラスメイトは、まだ笑っていた。
すると、後ろから声が聞こえた。
「朝から、ワーワーワーワーうるさいんだよ。ちょっと、静かにしてもらってもいい?
あとさ、本気でやろうとしてる奴を何もしてない奴が笑ってんじゃねぇ。」
とその人の一言でクラスは一斉に静まった。
俺は俺のことを庇ってくれたことが嬉しくて、そいつのところに近寄った。
「ありがとう。おかげで、なんかスッキリした。」
と俺が言うが、そいつは首にかかっているヘッドフォンを耳にあて、返事もしない。
俺は何かの間違いだと思い、もう一度同じことを言ったが、そいつは一切目を合わせないでまたもや返事をしない。
俺は無視する理由がわからず、
「おい。何で無視すんだよ。」
とさっきより大きめの声で言った。
そいつはやっとこっちを見て、喋ったと思ったら
「うるさい」
とだけ言い、ヘッドフォンの音量を嫌味のように上げた。
昼休みの時間となり、ミナと俺は先程まで任務を行っていたスリーとごうりゅうした。
すると、スリーは学校の食堂に座るやいなや、俺にバッチを渡してきた。
「これは、Sランクの人に与えられるバッチだよ。これを制服につけといてね。さっき、ヒロさんに会って渡しといてくれって言われて。」
たしかに、スリーもこのバッチをつけていた。
「ふーん。つけとけばいいのね。」
と俺はいい、自分の制服にバッチをつけた。
なんだか、特別感があった。
「あれ?てか、何でそんなサン機嫌悪そうなの?」
とスリーが聞いてきた。
俺はいつのまにかしかめっつらになっていたようだ。
「別に悪くはない。」
と俺は言いながら、眉間にシワを寄せた。
すると、ミナがスリーに
「カクカクシカシガで」
と今朝あったことを説明した。
「それで、サンったら、よっぽど悔しかったのか、その後も懲りずに何度も何度も話しかけててさ。」
とミナが笑って話した。
「へぇー。でも、あのナオがそんなこと言ったんだ。」
とスリーが言った。
「えっ、スリーはあいつと仲良いの?」
と俺が聞くと
「仲良いも何も、ナオは元グループ1のメンバーだからね。」
とスリーが答えた。
「え、じゃあ、もしかして、ミナも知り合い?」
と俺が皆に尋ねると
「私は知ってはいたけど、私がグループ1に入るタイミングでナオはいなくなっちゃったから、あまり関わりないけどね。」
とミナが答えた。
「ふーんじゃあ、スリーは詳しいのか。」
俺は体の向きをスリーの方に向けた。
「僕は詳しいよ。ナオはね、Sランクの順位なし。グループは所属してないし、ペアもいない。組織は一応グレーボーダーだ。」
俺は順位なしと言う言葉を初めて聞いた。
「順位なしってどういうこと?」
「順位なしっていうのは順位戦には参加してないのさ。でも、ポイントとか実績的にはSランク並みだから、ランクだけ決まってるんだ。」
「へぇ。あいつ、結構強いんだ。だから、今朝あいつの一言でみんな黙ったのか。」
「あ、あと‥。」
俺はすぐさまナオの元に向かった。
教室には音楽を聴いているナオがいた。
俺はナオのところに行き、ナオの肩に手を置いた。
「おまえ、ヒロとペア組んでたんだな?」
と言った。
すると、ナオはナオの肩に置いてある俺の手を振り払った。
「おまえこそ、ヒロとペア組みたいんだよな?」
とナオは聞いてきた。
俺がああっと答えたのに対して
「それなら、ヒロとペアを組むのはやめといた方がいい。あんな奴、人のことを戦う駒、いや捨て駒としか思ってないからな。」
とだけを言い残して立ち上がって教室から出て行った。
それを言われ俺は立ちつくす。
ヒロが人のことを駒としか見ないような人に俺は見えない。少なくとも、俺や俺の周りの人との接し方を見たら、そんなことをするような人ではないはずだ。
そして、それと同時に、俺の友達が目の前で化け物の姿の悪者になったあの日を思い出した。
たとえ、ヒロが胸糞悪い奴だったとしても俺の本来の目的はあいつを、悪者になったあいつ、助ける方法を探すことだ。
俺は何が何でもヒロとペアにならなければならない。たとえ、捨て駒でも‥。
俺はそう思いながら自分の制服についているSランクバッチを握った。
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