第14話 トーナメント

その頃のサン


俺はグループ1の食堂でアーシャと話をしていた。アーシャは普段からヒロと仲が良い。ヒロについての雑談などをしていた。俺は、その流れで、戦闘大会に出ることをアーシャに伝えた。


「えっ!?お前も大会でんの!?」


とアーシャが驚いて言った。


「うん。指名権目当てでね。」


「そっかー。お前とは敵になっちまったか。まっ、もし戦うことになっても遠慮はすんなよ。」


とアーシャは笑った。


俺は、アーシャと敵になるなは少し嫌な気がした。


「アーシャも指名権目当て?」


俺はアーシャに尋ねた。


「うーん。まぁね。どうしても組みたい奴がいてよぉ。」


とアーシャは言った。


その瞬間俺は反射的に


「ヒロ!?」


と言ってしまった。


「いやいや、俺にはヒロと組むほどの対応力がないわ。」


とアーシャはまた、笑った。


「でも、ヒロじゃないなら、誰?」


俺は聞いていいのか迷ったが、好奇心に負けて聞いてしまった。


「俺にはひとつ年下の弟がいるんだ。ずっと弟と組みたいって思ってたんだけどな。」


とアーシャは言った。


俺はますます、アーシャと敵になるのが嫌になっていた。

俺と同じでみんな、それなりの目的があって、それを手に入れれるのは一名のみだ。


「弟かー。俺と同い年じゃん。」


「まぁ、サンより、だいぶ生意気だけどな。」


とアーシャは嬉しそうに言った。


アーシャに弟がいると言った時あまり驚かなかったのは、アーシャがもともとお兄ちゃん気質だと感じていたからだろう。

俺は少し、兄弟というものが羨ましくなった。


それから1週間がたち、大会まであと一ヶ月となった。そして、大会でのトーナメントも発表され、その件でヒロに呼び出された。


「サン、お前、本当に運いいな。シードだぞ。シード。」


とヒロは嬉しそうに俺の背中を数回叩いた。


トーナメント表を見ると、エントリー者は50名であった。


「50人って少ない気がするんだけど‥。指名権ってみんな欲しくないのか?」


普通、2000人以上いる組織なら、最低でと300人ぐらいいてもいいはずだ。


俺は不思議に思い、ヒロに尋ねだ。


「いや、実際は、300人以上いたが、physicalテストで人数が調整されてるんだよ。」


とヒロは言った。


「physicalテスト?」


俺はヒロに聞いた。


「まぁ、単純な理由さ。そもそも、300人以上でトーナメントを行うのは時間的に難しいから、Sランク、Aランク以下は身体能力に関するphysicalテストをうけて、成績が上位のものがエントリーできるってわけ。一次審査的なものさ。」


「へー。そこで残った奴含めた50人ってことか。」


「まぁ、だから、結構強いやつばかり集まる大会にもなるんだ。

んで、今大会でランクが1番高い出場者は‥

えーっと。Sランク4位のアレクか!」


アレク‥。聞いたことない名前だ。まだ会ったことないみたいだ。


「4位ってことはスリーよりは下か。」


俺がそういうと、


「あぁ。たしかにランクはスリーより下だが、あいつはSランクの4位。しかも、お前と同い年なのにも関わらず、14歳の時からSランク入りを果たしている。そして、注意すべきはアレクだけじゃない。お前も知ってると思うが、同じチーム1のアーシャもでる。」


とヒロに念を押された。


「アーシャ‥。あいつとは当たるとしても決勝か。」


すると、俺のアーシャと闘いたくない気持ちを察したのか


「何?もしかして、当たりたくないとか思っちゃってる?サン、お前にそんな余裕はないんだ。一応、言っとくけど、アーシャはSランクの7位だぞ。そう簡単に勝てる相手じゃない。」


とヒロは俺の弱さを突きつけた。


たしかに、こんな態度の方がアーシャに対して失礼だ。それこそアーシャは望まない。俺はヒロのおかげで焦りを感じることができた。


「たしかに。そんなこと気にしてる場合じゃないよな。ごめん。ありがとう。

‥ん?でも、トーナメント的に普通にいけば、Sランクの2人が先に当たるから、俺は2人のどちらかと戦うことになるのか。」


と俺が言うと


「まぁ、そうだね。でも、俺の見解だとどっちが勝ってもおかしくないと思う。」


ヒロのその言葉にはヒロのアーシャに対する信頼にも感じられた。


「まぁ、どっちが来ても俺は勝つけど。」


と俺は自信満々に言った。


「その意気だ。ただ、何度も言うが、間違ってもSランク10位だったシグマと一緒にするなよ。今回はサンの能力も必要になってくると思う。そこのところ、しっかり理解しとけよ。」


とヒロが言った。


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