第13話 大会

シグマとサンの下剋上チャンスでの闘いはスリーとヒロが言った通りとなった。


試合の決着は開始時間5秒でサンが圧倒的な力を見せつけ、勝利した。

能力を使わずに素早く相手を仕留める姿はまるで、ヒロのように見えたに違いない。


誰もが予想していなかったその結果は、瞬く間にグレーボーダーだけでなく、組織全体に広まった。


見事に下剋上を果たしたサンはSランク10位となった。そして、敗北したシグマはSランク11位となった。


政府本部ではサンについて、会議で話が出ていた。


会議メンバー同士で会話している。


「最近、Sランク10位のシグマが下剋上に敗れて順位を落としたと聞きましたよ。」


「あ〜。それ、確か対戦した相手は、まだ入って1か月も満たない新人だと聞きました。どうやら、その新人、シグマ相手に能力を使わずに瞬殺で勝ったとか。しかも、所属がグレーボーダーみたいで。」


「また、グレーボーダーですか!?強い人材はいつもグレーボーダーに抜かれる。あそこは政府をよく思っていないみたいですし‥。」


「何言ってんですか。所詮、グレーボーダーも政府の下の団体の一つにすぎない。そう、脅威にはならないだろう。」


「本部長、ほっといても大丈夫ですかね?」


「あそこの部長は鶴崎だ。あいつは何かを仕掛けるタイプではないはずだ。特にいうとしたら、あの、Sランク1位のヒロ、あいつは何を考えているかわからない。念のため、情報は仕入れておけ。何かあれば報告しろ。」


と本部長は言った。




試合終わりの帰りでは、俺はヒロとともにグループ1の基地に向かった。


「あのさ、ヒロ、俺はもうお前とペアを組めるのか?」


と俺はヒロに尋ねた。


「おいおい、俺の誰かと組みたい気持ちは無視かよ。まぁ、今のお前と組んでもたぶん、周りから引き離され、非難されるだけな気がするけどな。お前が俺のペアになるなら自力でなれって言ったろ。」


とヒロは言った。


たしかに、悪者上がりだとか俺は何かと評判が良くない。ヒロとペアになって、なにか、理由をつけられるのは目に見えてはいる。


「でも、Sランクにはなったし‥。これ以上なにを‥。」


俺は頭を抱えた。


「これに出てみんなを黙らせろ。」


とヒロが見せてきたのは、政府の組織全体で行われる自主参加の戦闘大会のチラシであった。


「これで、優勝して、力を見せつける‥?」


と俺がいうと


「それもあるが、ここを見ろ。」


とヒロはチラシの左下を差した。


そこには優勝賞品について書いてある。


「優勝賞品‥指名決定権授与‥?」


「そうだ。ここの優勝賞品は、指名したやつとペアになることができるんだ。条件なしに、強制的にな。」


とヒロは嬉しそうに言った。


「なるほど‥。そこで、指名権を得れば、確実なわけだ。」


「ただし、これに出るなら本気でやってもらわないとね。もし、お前が出ないならおれが出る。」


「え?なんでヒロが出るんだ?」


俺はヒロに聞いた。


「これで、変な奴に指名決定権使われてペアになったらたまったもんじゃない。

だから、出るなら優勝しろ。」


今まであまり考えたことはなかったが、Sランク1位のヒロとペアになりたい人はたくさんいるんだ。

これはそのために必要な手順なんだ。

早く追いつく。

そして、真実を。


「で、出るの?」


とヒロが俺の目をしっかりと見て言った。


「でるにきまってんだろ。」


俺の返事に満足したのか、ヒロは少しニヤッとした。


すると、ひろの受信機が鳴った。

ヒロが受信機にでる。


「ヒロ!!どこにいるの?本部の集まりもう始まるよ。」


と受信機越しでも聞こえる大きな声であった。ヒロは大きい声に耳を叩いた。

きっと、ランク上位だけが集まる会議だろう。


「すまん。俺、急ぐから、とりあえず、大会まで頑張れ。」


とだけ、言い残し、走って本部の方に行ってしまった。


本部にて


「ヒロ!!遅い!!もう、本部長来てるし。」


とSランク5位のララが行った。


「いや、ちょっとイベントがあったからさ。」


とヒロが言った。


「へ〜。イベントね。こんな会議より大事ってか。」


とSランク4位のアレクが割り込んで言ってきた。


「まぁね。」


とヒロはアレクの目を見ずに言った。


アレクはまだ続ける。


「聞いたよ。随分と肩入れしているんでしょ?新人なんかに。もしかして、その新人、ヒロとペアになる気なのかな。残念だったね。生憎、ヒロは俺とペアを組む運命だから。」


とアレクはドヤ顔で言った。


「おまえ、運命って、よくそんな気持ち悪いセリフ男の俺にふりまくよな。」


とヒロは若干ひいている。


「は!?きもっ、え。ふぅー。brotherって意味さ。次の大会の指名権こそは俺がもらう。」


「ふーん。俺、お前とは組みたくないな〜。まぁ、せいぜい頑張れ。」


とヒロは棒台詞で言った。


「頑張る?今大会は、Sランク4位の俺より上の人は出ない。もう確認済みだ。これはもう、確定したも同然だ。」


とまたもやアレクはドヤ顔で言った。


ヒロは完全に呆れた様子で


「あっそ。」


と言った。


その後本部での会議が始まった。


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