第12話 特訓開始

俺は、学校が終わると、グループ1の敷地に向かった。


俺が敷地に帰ってきた瞬間、ヒロが真っ先に俺のところに来た。


「サン!作戦会議だ!!」


とヒロは張り切っていた。


俺は、そのままヒロに連れて行かれ、食堂は行った。


「よしっ!昼休みの続きをしようか。」


とヒロが食堂の椅子に腰をかけながら言った。


俺はヒロの向かいの椅子に座った。


そして、再びヒロが口を開いた。


「まず、お前、シグマの能力は知らないよな?この映像を見てくれ。」


と言って、ヒロはスクリーンに映像を映した。


そこに映し出されていたのは、水や火を巧みに操る能力で、相手を倒しているシグマの姿だった。


ここで、俺はある疑問を持った。


「ん?こいつ、2つも能力持ってんのか?」


と俺が言うとヒロは俺の頭を軽く叩いた。


「違うわ。こいつの能力は『火』でも『水』でもない。『コピー』だ。」


とヒロが言った。


コピーなんて能力、今まで聞いたことない。


「その能力すげー強いじゃん。」


「コピーって言っても、自分が勝った人の能力しか基本的にはコピー出来ない。

あと、1日に能力をコピーできるのは2種類までだ。だから、2種類使っちまったら、それ以外の能力は使えない。」


「意外と制限あんだな。」


「つけ入る隙ならいくらでもあるさ。

でも、シグマが本気を出したら、今まで勝ててない奴の能力もコピーできるかもしれない。

とにかく、あいつはSランク10位だ。

経験もそれなりに積んでるから、簡単な敵ではない。

あ、サンは能力使わないで闘うと思うからいいけど、あいつの前で能力を見せると、

最悪、コピーされるから、

そこんとこ、ご用心。」


とヒロが言った。


「『相手に不足なし』ってこう言う時に使うんだな。俺が一瞬で終わらせる。」


俺がそう言うと、ヒロは笑った。


「何言ってんの。今のままだと剣だけだったら、シグマには勝てないよ。」


とヒロは言った。


「何を根拠に‥。」


と俺が言い返すと


「お前こそ、何を根拠にシグマに剣だけで勝てるって思ってるの?」


確かに、そう言われると、俺は大口を叩いているだけだ。


俺は何も言い返せなかった。


「お前が能力を使えばシグマには、100、いや120%勝てるよ。

でも、能力を使わないとなると、話は変わってくる。

じゃあ、サンがいくら早くても、シグマが早くなる能力を使ったら?

お前が隙を突こうとする間に相手の隙を突く能力を使ったら‥?

全部タラレバだが、こう考えると、お前はまだ遅いし隙だらけだ。」


とヒロは言った。


「‥‥。」


俺は、何も言い返せない。


するとその様子にヒロはニヤッとした。


「そこでだ。そんなお前に、とっておきの訓練相手を用意した。」


と言った。


訓練相手?俺はてっきりヒロがやるのかと思っていたが‥。


「おい!入っていいよ。」


とヒロが食堂の扉の方に向かって叫んだ。


すると、食堂の扉が開いて、こちらの方に近寄ってくる。


「はい!こちらが、サンの訓練相手のSランク3位のスリーだ。」


とヒロが紹介してきたそいつは、今日、教室で話しかけてきたスリーだった。


俺は驚きのあまり、瞳を大きくした。


「スリー‥。ここの3位なのか?」


と俺がスリーに尋ねると、スリーは照れながら


「そうだよ。実は、ヒロさんからサン君のことを聞いてて、同じクラスだって言うから話しかけてみたんだ!!君は僕とちゃんと話してくれるとってもいい人だね。」


とスリーが言った。


「他のみんなもお前のランクとか知ってんの?」


「知ってるよ‥。でも、みんな僕がSランクの3位になってから、嫌われてる気がするんだ。強くなったら、仲良くなれると思ったのに‥。」


とスリーは落ち込んで言った。


たぶん、クラスメイトは嫌ってるっていうより、Sランクの3位に簡単に話しかけられないだけだろう。


こいつの仲良くの仕方は理解できない。


「あ、言い忘れた。僕の能力は『喪失』だよ。」


「『喪失』何それ?」


と俺がスリーに聞いた。


「僕の能力は相手の能力を使用させないようにできる。

まぁ、だから、直接的に相手に攻撃できるような能力じゃないんだけど‥。

って事で、サン君の能力を喪失させたよ。」


「えっ。いつ間に。」


体に特に変化はない。違いがわからない。


すると、再びヒロが口を開いた。 


「で、サンには、この1週間、スリーとみっちり特訓してもらう。スリーはサンをよろしく頼む。」


「はい。任せてください。サン君!仮想室へ行こうか。」


とスリーが言った。


この前、Sランクでの練習試合でも使用されていた、仮想空間で特訓するらしい。


そこでは怪我をすることも痛みを感じることもない。


俺とスリーは仮想室に入った。


中は永遠と続く白の空間だった。


「じゃあ、手始めに、サン君の実力を見たいから、全力でかかってきてよ。」


とスリーが言った。


正直、スリーの余裕っぷりに俺は少しイラっときた。


「じゃ、遠慮なく。」


俺はそう言って、スリーの背後に回り込んだ。


スリーの背後から剣で攻撃をしようとした瞬間、スリーは後ろを見ていない状態で俺が持っている剣を自分が持っている剣で跳ね飛ばした。


そして、その勢いのまま俺の腹部を見事に刺した。それを数回繰り返した。


俺はあまりのはやさに驚いていたが、


「スリー、お前、めちゃくちゃ強いな。」


俺は少し興奮気味に言った。


「いや〜。サン君もなかなかだよ!まぁ、サン君の課題もわかった事だし、さっそく特訓しよう!」


とスリーが言った。


「課題?」


「そう、課題。サン君自身の反射神経とか、能力的には問題ないんだけど‥。

全部本能的過ぎて、パターン的だし、隙がありすぎるんだ。」


とスリーが言った。


「じゃあ、隙をなくせばいいのか?」


と俺がスリーに聞くと


「いや、そうじゃなくて、サン君の場合は、予測したりして考えることが足りないんだ。

だから、特訓は、ひたすら、僕の動きに対応する練習をしてもらうよ。」


とスリーが言った。


「了解。」


俺はそこから1週間、スリーと共に考えながら対応していく特訓を続けた。


俺はこの1週間で、自分がいかに、単純な動きしかしてこなかったかを自覚した。


そして、Sランク3位のスリーという超えなければならない壁も感じた。


食堂にて


「あのさ、ヒロさん。」


とスリーが言った。


「ん?」


とヒロは返事をした。


「何でさ、サン君にわざわざ僕をつけてまで、特訓させたの?

サン君の能力もだけど、剣術だってSランク上位レベルだ。

ヒロはサン君に100%、シグマには勝てないとか言ってたけど、僕は、100%勝てると思うんだけど‥。」


とスリーが言った。


「まぁ、確かに、サンはシグマには200%勝てるよ。」


「じゃあ、何で‥!?」


と、スリーは食い気味にヒロに尋ねた。


「サンは今まで、ここにきてから、入団試験でも負けなしだ。

だから、あーでも言わないと、自分の能力に過信しちゃうだろう。

俺たちは能力だけに頼っちゃだめなんだ。

あとは、サンには強くなれるうちに強くなってほしい。

もっと強くなれるって思ったからな。」


とヒロは言った。

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