第11話 サンの能力②
「『時間』って何だ?」
俺は聞いたことのないその能力に混乱した。
「その名前の通り、時間を操れるんだよおまえは。」
俺は驚きのあまり目が泳いでしまう。
「心当たりない?」
とヒロは聞いてきた。
俺は少し考えた後、答えた。
「言われてみれば、ないわけじゃない‥のかも‥。似たような日が2度続いたりはあったかも。でも、瞬間移動とかは全然心当たりがない‥。トーナメントで対戦の時は調子が良かった気がするけど。」
それを言うとヒロはすかさず
「その、似たような日が2度とかは、最近はない?」
と聞いてきた。
「最近はない‥。」
すると、ヒロは俺の目をみて真剣な表情で
「お前に能力について2つ約束を守ってほしい。
1つ目は、この能力を、他人に公言するのはダメだ。バレるのは仕方ない。
つまり、なるべく秘密にしてほしい。
そして、2つ目。お前の能力『時間』は大幅に時間を戻すことが可能だ。
1日単位で時間を戻すことを俺に知らせないで勝手にするな。
それをされると、色々問題が起きるし、何より、状況が混沌とする可能性がある。」
たしかに、時間を無闇に戻したりした場合、決まっていた未来が変わってしまう。
でも、俺は能力に自覚がない。やるなといわれてもできる保証がない。
「俺は能力の制御できないぞ。」
「いや、できてる。お前はもう出来てるはずだ。」
そんなこと言われても、自覚もないのに‥。
「何でそう思うんだ?」
と俺はヒロに聞いた。
「だって、出来てなきゃ、こんな上手くこのトーナメントの試合でちょうどよく能力が発動して、勝てるわけないじゃん。
でも、仮に制御できていても、本人に自覚がない時は『時間』の能力の一部が開花出来てないのかもしれない。
たぶん、それが開花できるようになればもっと、強くなれるはずさ。」
俺は納得したが、少しまだ混乱していた。
「まぁ、この話を踏まえて、サンはこの能力とお前の剣術と素早さなら、絶対、Sランク10位のシグマに勝てるよ。」
まてよ、ヒロはこの前、Sランク2位の人にですら、能力を使ってなかった。
なぜか負けた気分になった。
「嫌だ‥。」
と俺は言うと、ヒロは困った顔をして
「どういうことだ?」
と俺に聞いた。
「ヒロは能力使わずに、シグマに勝てるんだろ?だったら、俺も使わない。」
と俺が言うとヒロは笑った。こんなことを言ったから、見放されてしまうだろうか。俺は少し不安になった。
笑いが収まった後、
「その意気込みは素晴らしいことだけど、相手を知らずして、そう言うことをいうのは戦闘者として良くないよ。」
とヒロが言った。
俺は顔が強張った。
もっともの意見すぎて言い返せない‥。
ヒロはまた、続けて話す。
「でも、能力を一切使わないで勝つってのは、それはそれで面白いかもな。それをやってもいいけど、そのかわり、絶対勝てよ。」
と言って、ヒロはグーの手を俺に差し出した。
ヒロは俺の我儘を認めてくれたので、一安心した。
差し出されたその手に俺がどうすればいいか戸惑っていると
「こういう時は、お前も手をグーにして俺のグーの手にグータッチだ。」
と言った。
俺はグータッチをした。
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