第10話 サンの能力

無事入寮テストに合格した次の日。


俺は部屋の前に置かれていた新品の制服を着て学校に行った。


そして、俺は転校生として、教室に入った。


「今日は転校生がいるから。」


と先生が言った。


「自己紹介をどうぞ。所属とグループがあれば、あと、ペアとか。」


「えっと、グレーボーダー所属で、グループ1でペアはいません。あ、サンです。」


すると、教室が急にざわめき始めた。


「君の席は左の一番端のところで。」


俺は言われた席に着席した。自分の席にたどり着くまでにやけに視線を感じたが、転校生とはこんなもんだろう。


そして、休み時間になり、数名の男女が俺の机の周りを囲った。


「ねぇ、悪者になろうとしてたって本当?」


「えっ。どこでそれを?」


ここは情報が筒抜けなのか。


「まぁ、そうだよ。」


それを確認した瞬間、再びクラスがざわつき始めた。


今度はどんな視線かわかる。軽蔑する目だ。やはり、悪者になろうとしてたというのは、相当厄介なことみたいだ。同じクラスのミナが俺のところに寄ってきた。


「ただでさえ、グレーボーダー、イメージが良くないのにそんなこと答えなくていいからね!」


とミナが言ってきた。


他にも周りからボソボソといろんな声が聞こえた。


「てか、あいつFランクじゃん。俺より下かよ。」


「あんま、関わらない方がいいかもね。」


俺はあまり気にしなかったが、ミナが何か言いたげだ。


すると、教室の扉がガラッと開いた。


「サンー!?いるか?」


そこには顔を覗き込むヒロとアーシャがいた。


再びクラスがざわつき始めた。


「ヒロ、アーシャ。何か用か?」


と俺は尋ねた。


「いや〜。おまえ、学校とか苦手そうだから心配で見にきたんだよ。友達できた?ってあれ。何だこの空気‥?」


ヒロとアーシャは固まった。2人は寒そうなジェスチャーをした。


俺には寒さは感じなかったが。


「ちょうど今、サンがクラスで要注意人物に認定されたところ。」


とミナがため息をし、2人に説明した。


「へー。じゃあ、まだ友達いない?」


とニヤニヤしてヒロが言ってきた。

ほんと、嫌味なやつだ。


「友達なんて、そんなすぐできるわけないし、友達作りに学校来てるわけじゃないじゃん。」


と俺は言った。


すると、背後から


「Sランク1位のヒロさんだ!」


「かっこいい〜。」


黄色い声が聞こえる。


「ヒロってなんか、ムカつく。」


なぜこんな奴がかっこいいのか理解できない。


「おい、急に酷くね。」


とヒロは眉を下げた。


すると、それに乗っかり


「わかるぜ。俺もヒロ見てると蹴りたくなるわ。」


とアーシャも俺の両肩に手を乗っけて言った。


「お前は黙れ。」


とヒロはアーシャの頭を叩いた。結構痛そうだ。こういうタイプは怒ると怖いのかもしれない。普段から面倒くさいし。


「んで、用は本当にそれだけ?」


と俺が聞くと、ヒロは急に真剣な顔になった。


「実は、1週間後の試合の話をしに来たんだが‥。こんなに注目されてるのはちょっと、あれだし、昼休みにまた別のところで話すわ。」


とヒロが教室のドアの方向を向いた。


そして、ヒロとアーシャは自教室に戻った。


昼休みになり、俺とヒロは誰も使ってない教室に入った。


「で、試合の話って?」


俺が聞くとヒロは教室にあるモニターをゴソゴソといじった。


「この1週間はお前の能力も含めて戦闘力のアップの訓練をみっちり行ってもらおうと思う。」


その時、俺は耳を疑った。


「能力?俺にそんなのあるの?」


「サンが無自覚なだけで、ほとんどのみんなが持っているさ。」


知らなかった‥。


能力があるなんて、考えたこともなかった。


この世界に能力があることは知っている。でも、自分には火も水も操れないのでてっきり無能力者かと思っていた。


「それで、俺の能力って!?」


「これを見てくれ。」


とヒロは言ってモニターがついた。


「これは、サンの入団テストのトーナメントでの様子だ。」


そこには1回戦から全ての試合で消えたり、素早く動いている俺の姿があった。


それは、俺が知っている俺の姿ではない。


こんな風に見えているのが信じられない。


この能力はまるで‥。


「じゃあ、俺は瞬間移動が能力か?」


とヒロに聞いた。


「いいや、違う。お前の能力は正真正銘、『時間』だ。」


「『時間』‥?」


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