第9話 チーム グループ犬


「あっ、そういえば、チームって何だ?」


ヒロは唐突な質問に驚いた顔をしている。


「うん?」


「俺がトイレに行く前にヒロ、ミナもチームの一員とか言ってなかったか?

さっきもシグマって奴にチームはどこか聞かれたし…。」


「ああ。チームっていうのは、いわば団体だ。

人数の定員はないから、3人以上いればチームとなる。

チームに入ると活動幅も広がる。

ミナはそのチームの一員。

言い忘れてたけど、お前は俺のチームに入ってもらう。


今、お前、本部に泊まってるだろう?

普通はチームの敷地に泊まるんだよ。

このままチームに入んないと、寝る場所なくなるぞ。」


と言った。


そういう大事なことは早く言って欲しい。


改めて、ヒロのいい加減さに呆れる。


「そうだ、今から行くか。」


「えっ、今から?」


「そうだ。」


俺はヒロと共にチームの敷地とやらに向かった。


「着いたぞ。」


そこには、大きな屋敷があった。


そして、入り口には看板が立っていた。


グループ犬‥?変なチームなのか?


俺は少しの不安とともに入口に入った。


「あっ、言ってなかったけど、今日からお前もうここに泊まるから。」


とヒロはあっけらかんとして言った。


「えっ、でもさっきはそんなこと‥。」


「だって、もう、お前が本部に泊まる必要ないだろ?

だから、お前の寝床は必要ないって俺が親切に報告してやったから。」


と嘘っぽい笑顔で言った。


この人はほんとに勝手である。


中に入るとそこは静まり返っていった。


「他のメンバーは?」


「あー。今は、みんな食堂でミーティング中だから。」


俺たちは食堂に向かった。


ヒロは食堂の扉を開けるや否や、


「よぉ!」


と言った。


6人ほど向かい合って座っていた。


すると、こちらに気づいて、1人の赤い髪の男がヒロに向かって飛び蹴りをする。


「おい、ヒロ!ミーティングサボってんじゃねぇよ。」


ヒロはそれを避けた。


「くっそ。避けんじゃねぇよ。日頃の鬱憤をだな‥」


赤い髪の男は俺に気づいた。


「おまえ、誰だ?」


すると、みんな俺の方を見た。


そこにはSランクの練習試合の時に会ったミナの姿もあった。


「こいつ、この前言ってた、悪者になろうとしたやつ。」


赤髪の男はピンときたようで、


「あ〜!もしかして、チームに入れたいとか言ってた奴?」


「そうだ。」


すると、俺の周りをジロジロ見て、ニヤっと笑った。


「俺は、いくらお前がヒロの一押しだとしても、コネで入らせたくないんだよ。」


コネ‥?何を言ってるんだ。


「というわけで、君もこのチーム伝統の儀式を受けてもらわなきゃな。」


「儀式?何それ?」


「儀式っていうか、まぁ、簡単な入寮テストみたいなもんかな。」


とミナが言った。


「ヒロ、そんなこと聞いてないんだけど!」


「あれ?言ってなかったっけ?」


と、とぼけるヒロに対して団員たちも呆れたようで、


「そういうのはここに来る前に伝えろよな。雑ヒロ!!」


と赤髪の男が言った。


「どうする?受ける?」


俺は少し考えた。


普通に受けないとこのままだと今日泊まる場所がない‥。


野宿なんてごめんだ‥!だったら受けるしかない。


「受けます。」


「そうこなくっちゃ!」


と赤髪の男が言った。


「試験内容は何ですか?」


「試験内容は至って単純!

誰かに勝つこと。」


とミナが言った。


「何で勝てばいい?」


「何でもいいの。

戦ってもオセロでもリレーでも。

しりとりでもいいよ!」


何でもいいとなると、みんなの戦力がわからない以上むやみに戦うのは得策とは言えない。


この場合は自分が確実に勝てる方法で挑まなきゃ。俺は1つだけ自分が確実に勝てる方法にピンときた。


「ほんとにくだらないのでいい?」


「ああ。もちろん。」


赤髪の男は嬉しそうに答えた。


「じゃあ、カウントダウンゲームがいい。」


と俺の発言に不思議に思った、小さめの男の子が、


「カウントダウンゲーム?」


「このゲームは2人で交互に1から順番に数字を言っていって、最後に50って言った人が負け。最大3回数字をカウントできるんだ。」


すると、その小さい男の子は俺の説明に不満を持ったのだろう。


「そんなゲームで決めようってかよ。」


と鋭い口調で言った。たしかにこれは、しりとりに並ぶゲームだから不満に思うのは仕方ない。


「なるほど、、カウントダウンゲームか。対戦相手、好きな人選んでいいよ。」


とミナが言った。


俺は周りを見渡した。

赤髪の奴とヒロとミナそして、小さな男の子。その順番で表情を見た。


「じゃあ、さっきからなんか不満そうな君で。」


と、小さめの男の子を指名した。


「え?僕?」


と驚いている。


「じゃあ、始めていいよ。」


「先攻後攻どっち?」


男の子は俺に聞いてきた。


「じゃあ、先攻で。」


俺はカウントを始めた。


「1。」


男の子

「2。」


「3、4、5。」


男の子

「6、7、8。」


「9。」


男の子

「10、11。」


「12、13。」


男の子

「14。」


「15、16、17。」


男の子

「18、19、20。」


「21。」


‥‥


「40、41。」


男の子

「42。」


「43、44、45。」


男の子は悔しそうな顔をした。


男の子

「46‥。」


「47、48、49。」


男の子

「ご、50‥。」


「サンの勝ちだな。」


と、ヒロが言った。


「こんな、運みたいなゲーム‥。」


と小さめの男の子が俺を睨みつけて言った。


「運だとしても、サンの勝ちは勝ちだろう?ゲームで負けたことには変わりないさ。

まぁ、たまたまじゃねぇけど。

おまえ、ほんとずりぃな。」


と俺の方を見て笑いながらヒロが言った。


「えっ?どういうこと?」


小さめの男の子が聞いた。


「この勝負はあいつが先攻をとった瞬間に勝敗は決まってたんだよ。」


とヒロが言った。


「このゲームは50を相手に言わせればいいんだ。

そのためには自分が49を言う必要がある。

そして、49を言うためには45をいう。

45をいうためには41、次が、37、29、25、最終的には9、5、1を言えばいいことになる。


つまり、4で割って1余る数を言えれば相手は絶対勝つことができないのさ。

まぁ、相手がこの方法を知っていったら普通先攻は取らせないけど。

お前が先攻をとっていったら勝てたかもな。」


と赤髪の男が言った。


「やっぱ、あんたにしなくてよかった。このルール知ってる人いたら絶対勝ってないし。」


と赤髪の男に向かって俺は言った。

そう、俺はルールを知らない人とたたかう必要があったのだ。


「俺がカウントダウンゲームって言った時に明らかに知らなそうだったから、そこの小さいのにさせてもらったよ。」


「小さいのじゃない!名前はソラ!それに僕は15歳だ!」


とソラが再び睨みつけて言った。


「えっ。同い年!?」


流石に同い年にしては反則並の幼さだ。ソラは少し目が潤んでいた。こうやってみると小学生にしか見えない。


「うるさい!僕は第二次成長期がまだなだけだ!牛乳だって毎日飲んでるし。今に見てろ!君の身長なんて‥もぐぅ。」


ソラの口を塞いだ。ソラはもぐもぐしていた。


「ともかく、君は儀式を無事終えたということで、俺たちのグループのメンバーだ。

俺はアーシャ。よろしく。

あと、さっきから一言も発してない強面なのがこのチームの団長のグレーだ。

ミナはもう知ってるよな。」


と赤髪のアーシャが紹介をした。


「サンだ。メンバーはこれだけか?」


「まだ何人かいるけど、そのうち会うだろ。

改めて、グループ1ワンにようこそ。」


とアーシャが言った。


その時、この建物の入り口にあった看板にグループ犬と書かれていたことを思い出した。


ワン‥だから犬なのか。クソがつくほどつまらなさすぎて、俺は思わず笑いそうになった。


「あ、あと、明日からサンは学校だから。制服はそのうち届くと思う。」


とヒロが言った。


「学校!?戦わなくていいのか?」


俺は驚きが隠せない。


「何言ってんの。ここにいる人たちは団長とあと数名以外は18歳未満なんだから行くだろ。

そこでは、戦闘に関することも学べるぜ。」


とアーシャが言った。


俺はふと疑問が浮かんだ。


「えっ、みんな歳いくつなの?」


「女子に年齢を聞くなんて‥なーんて、私はソラと同じ学年の16歳。」


とミナが言った。


「俺は17歳だ。」


アーシャが言った。


「ヒロは?ヒロはいくつなの?」


と恐る恐る聞くと、


「俺は、アーシャと同い年の17歳。お前の1つ上だ。」


「1つしか違わないのか!?」


俺は思わず声を張った。


「あれ?いってなかったけ?」


といつものようにヘラヘラしている。


まさか1つしか違わないなんて、、。

俺と年齢がほとんど変わらないのに、あの強さ‥。本当にヒロは何者なんだ。

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