第8話 Sランク シグマ

俺がトイレに向かう途中、角を曲がった瞬間、人にぶつかってしまった。


「いってぇーな。」


「あっ、すみません。」


俺は咄嗟に謝った。


俺がそのまま立ち去ろうとすると、


「おい?お前、ちゃんと謝れや。こちとら、ちょいとイライラしてるもんでな。」


よく見るととても、いかつい体をしている。


人相も悪い。まさに犯人ヅラというやつだ。


しかし、俺はこいつのことを、見たことがある気がした。


「おまえ、もしかして、さっき試合出てた?」


と相手が言っていることを無視して聞いた。 


俺は誰だったか必死に思い出す。


「ああ?人の言ってること無視するんじゃねぇぞ。

まぁ、教えてやらなくもない。

聞いて驚くな、俺はな、Sラン…」


「あっ!さっきの試合ぼろ負けしてた人だ!」


ふと、頭に電球がついたように思い出した。


俺が見たのはヒロの試合を含めて2試合だ。


第2試合の時にこいつは、フィールドにいて闘ってぼろ負けしていた。


「おい!おまえ、俺が誰だかわかってて、喧嘩売ってんのか?」


そいつは俺の胸ぐらを掴んだ。


「俺、事実しか言ってないんだけど。」


と言い、俺はそいつを睨んだ。


すると、びびったのか胸ぐらを離し飛ばした。


「あんた、Sランクなんだよな?


俺と対戦して欲しいんだけど。


えーっと、何だっけ、うーんと…。


あ、そうそう『下剋上チャンス』使わせてよ。」


「はぁ?お前、人を馬鹿にすんのもいい加減にしろよ。

おまえ、ランクとチームなんだ?」


「F。」


チームがなんなのか、いまいちわからなかったのでそっちの返答は、スルーした。


すると、そいつは両手を叩いて大声で笑いながら


「Fランクのくせに、俺に挑もうとしてんのか。

お前が俺に勝てんのかよ。

やだね。時間の無駄。無駄無駄無駄。

他を当たれよな。

まぁ、闘ってくれる人がいるのなら、だけど。」


「でも、今のSランクの人のほとんどは『下剋上チャンス』使って、上に上がってきたんでしょ?

やってみなきゃわかんないだろ。それとも、俺に負けるのが怖いとか…?」


俺はニヤリと笑いながら言った。


見た目、頭悪そうだから、単純野郎ならすぐ乗っかってくるはず。


「あぁぁぁん?何だとテメェ。 俺がお前に負ける?

訳のわかんないこと言ってんじゃねぇよ。

そんなに、死にたいならやってやったていいぜ。」


よしっ、のった。


こいつが単純で良かった。


こうも簡単にのってくるとは。


「試合は来週だ。ボコボコにしてやっからな。」


俺はSランクのやつと試合を行えることになった。


そして、俺はトイレから帰り、ヒロのもとへ戻った。


「あれ?ミナは?」


先程までいたミナの姿が見えない。


「あいつは、抜け出して来たミーティングに戻った。」


「ふーん。あ、あと、さっき、『下剋上チャンス』の相手に申し込みして来た。」


「おっ。さっそくか。で、誰にしたんだ?」


「あっ…。名前聞くの忘れた。」


「おい、まじかよ。どんな奴だった?」


俺はヒロにぶつかっ時の出来事を話した。


「あー。そいつは、シグマだ。」


「あいつ、シグマっていうんだ。」


「シグマはSランク10位だ。

今となってはSランクでは下の方だが、昔は3位だったこともある奴だ。」 


「そっか。」


「そっかってお前…。ふっ、まったく。いつやんの?」


「来週。」


「来週か…。まぁ1週間あれば、最低限、教えたいことを教えられそうだな。」

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