第7話 Sランク1位

次の日、俺はヒロに連れられてSランクの練習試合会場に行った。


既に開始間近とあって、会場の中は既に観客たちで賑わっている。


俺たちはかろうじて、会場の後ろの方の空いている席に座って、試合が始まるのを待っていた。


「じゃあ、俺ちょっと、行ってくるわ。」


とだけ言ってヒロは行ってしまった。


トイレでも行ったのだろう。


すると、空いた席に女の子が座った。


「あっ、隣、勝手にごめんね。」


と俺に顔を覗かせて言った。


「いや…別に。」


すると、今度はさっきより顔を近づけて


「あなた、見ない顔だね!?」


と言った。


「あぁ。俺は昨日、グレーボーダーのメンバーになったばかりだからさ。」


おれはずっと目を見てくる女の子の目を逸らして言った。


「へぇー。そうなんだ。私はミナ。あなたは?」


「俺はサン。よろしく。」


と言葉を交わした。


「それでは、本日の練習試合を始めます。

第一試合を開始します。」


と放送が鳴った。


「第1試合はいきなり、1位と2位か。どんな奴なんだろう。」


と、俺は唾を飲み込んで身構えていた。


すると、1位と2位の人が入ってきた。


俺は自分の目を疑った。


なぜなら、そこにいたのは、先程まで一緒にいたヒロの姿があったのだ。


俺は思わず、


「ヒロ!?」と叫んだ。


その声でヒロは俺に気づき、


「やっほー!」と手を振っている。


俺は半信半疑の状態で思わず手を振ってしまった。


すると、隣にいたミナも大声をだして、


「ヒロと知り合い!?」


と大変驚いた様子でいる。


「まぁ、そうだけど…。Sランクの2位ってのは知らなかったけど。」


「何言ってんの!Sランクの1位はヒロだよ。」


とミナが目を丸くして言っている。


俺は驚きのあまり、席を立ち上がって


「えぇー。」と叫んでしまったのであった。


「あいつ、1位だったのか。」


「知らなかったの?ヒロと一緒にいられるなんてラッキーね。」


とミナは笑った。


その後、試合開始の合図が鳴った。


その頃、フィールド内。


「おい、ヒロ、今回こそお前に能力を使わせてやる。」


と相手のSランク2位のロキが言った。


その言葉を聞いて、ヒロは少しニヤッとしながらロキの真上に飛び上がる。


「ロキさんに能力を使われるのは厄介なんで、早いとこ終わらせて頂きますね。」


そう放った瞬間、ヒロは目で捉えられないくらいのスペードでロキの後ろに周り、首を切り裂いた。


すると、ブザーが鳴った。


「第1試合終了です。」


ヒロの圧倒的強さに観客達も俺も呆然としていた。


俺は、首を切られているのを見て、


「あれ、大丈夫なの?」


と俺はミナに質問した。


「うん。あれは、仮想空間だからあそこで怪我しても死なないし全く痛くないよ。」


とミナが答えた。


「そんなことも可能なのか…。」


「ヒロの試合すぐ終わっちゃうからほんとつまんないよね。


あの人、自分の能力あるのに一切使わないんだよね。まぁ、それくらい強いってことなんだけどねー。」


俺はヒロが戦闘しているところを初めて見たが、あんなに素早い動きが人間にできるのが不思議である。


しかも、能力は使ってないって…。


俺はヒロがすごい人だと言うことを知った。


すると、試合を終えたヒロが戻ってきた。


「おい、サン、ちゃんと見てたか?」


と聞いてきた。


「お前、なんでSランク1位だって教えてくれなかったんだよ!!」


「あれ?言ってなかったっけ?」


「言ってない!」


俺は興奮のあんまり声を少し荒げた。


「俺はヒロとペアを組む。組ませろ。」


というと、ヒロは少し嬉しそうに俺の肩をポンッと叩いて


「今のままじゃ無理だな。お前、Fランクの最下位だし。」


と馬鹿にして言った。


「今に上がってみせるさ。」


俺はヒロをじっと見つめた。


「あっ、そうだ。トイレってどこ?」


と俺はヒロに聞いた。


すると、ヒロは拍子抜けしたのか笑っている。


「トイレは、出て右の角を曲がるとあるよ。」


とミナが言った。


「あれ?ミナじゃねぇか。おまえなんでここにいんの?」


とヒロが驚いて言った。


「ヒロの戦いぶりを見ようと思ってきたんですけど…。


早く終わりすぎですよ。


せっかくミーティング、抜け出して来たのに。」


と頬を膨らませて言った。


その様子を見ていた俺は


「2人は知り合い?」と聞いた。


「あぁ。俺と同じチームの奴。お前らもう知り合いなのか。


ってか、サンは早くトイレ行け!」


と背中を押されて、俺は一瞬忘れていたトイレに向かった。

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