第6話 グレーボーダーって?

ヒロは1人、本部長室に残った。


ヒロは本部長に入団テストにおけるトーナメントでのサンの戦闘映像を見せた。


「これはすごいな。ヒロがどうしてもっていうから、メンバーにすることにしたけど、こりゃあ、敵に回さなくて大正解だったよ。」


と本部長が言った。


「まぁ、本人は自分の能力のこと全く自覚がないみたいでしたけどね。あと、経験値もそれなりにはあるみたいですし。」


「サンくんならヒロのペアになれるんじゃないか?」


すると、ヒロは頭をかいた。


「…。期待して落ち込むのは何度も経験してるので、あんまり考えたくないですね。それに、ペアになっても続かないですもん。」


「そう、悲観的になるな。ヒロには、1人ではなく共に高め合い、助け合うパートナーが必要だ。

サンのような特殊で強力なものはお前を必ず成長させるさ。それは、サンも同様だがな。ちゃんと鍛えればお前の能力にだって…。」


「いやいや、鶴さん。俺ははたから、能力で張り合うつもりはないよ。それに、なるべく能力は使いたくないんだ。


でも、たしかに、俺も心のどこかで期待してるところはあるよ。とにかく、ルーキーの成長がどこまで行くか、楽しみで仕方がないことは確かなんだけど。」


俺はヒロが本部長室から戻ってきたあと、グレーボーダーについて話していた。


「ところでさ、気になったんだけど、なんで反政府組織の名前が『グレーボーダー』って言うんだ?」


俺はヒロに尋ねた。


ヒロの話を聞く限り、グレーボーダーなんて呼び方をされているのはこの組織だけである。


「あー、それはな、皆んなからうちらの組織があまりいい印象ないのは知ってるよな?


それはさ、俺たちが政府の味方か敵か分からないからなんだ。」


「なんで、分からないんだ?そもそも政府から来たんだろ?」


「いや、味方なんだけどさ、ここには結構、政府の方針と価値観が合わない人とかが配属されることが多いんだよね。


その人たちの中には、政府に反感買っちゃった人とかもいるわけでさ。あとは、この前も言ったけど、政府の本部がやらないような仕事をするから基本的にはソリが合わないのさ。


それで『グレー』は白と黒の中間の灰色、『ボーダー』は境界線つまり、悪なのか正義なのかわからないところにいる『グレーボーダー』って名前なんだよ。」


「へぇー。なるほど。」


「ヒロ、グレーボーダーは政府の敵だと思ってる?」


俺の質問に対して、ヒロは少し考えてからこう答えた。


「そもそも味方がいるって考えないようにしてる部分があるからな。

あと、俺は敵と味方って区別するのも好きじゃない。そもそも、おまえの味方の基準は何だ?そんなんしっかりわからないだろう。」


意外と真面目な答えが返ってきて驚いた。


「ちゃんとしたことも言えるんだな。」


と俺が言うと


「失礼な。いつもちゃんとしてるじゃん。」


と言い、俺とヒロは笑った。


「あ、言い忘れてたんだけど、明日、Sランクだけの練習試合があるから、見に来いよ。

ランク上げのためにもSランクのやつの試合を見とくのは、お前のためにもなるだろうし。」


「そうだな、確かにそれはいい機会だ。」


すると俺の硬い表情を見てかヒロは俺の背中に手を置いて


「なーに、身構えてんだよ。お前が出るわけじゃないし、そう固くならないで気楽に行こうぜ。」


とヒロは笑顔で言った。

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