第4話 入団テスト

「サン、サン、起きろ。」


「うるせぇ!」


ヒロに耳元で叫ばれて最悪な目覚めである。


「早く、準備して試験会場いかにいと、遅刻しちまうぞ。」


その一言でハッとした。そうだ、今日は入団テストを受けるんだ。


俺は手短に準備を済ませ、ヒロと試験会場に向かった。


そこにはたくさんの受験者が溢れていた。


「ざっと、100はいるな。

まー、あれだ、やれることをやってこい。落ちたら笑ってやるよ。」


「おまえって、ほんとにムカつくな。」


「ははは、じゃあ、こっからは受験者のみだ。俺は上の観察室から見てるから。では、健闘を祈る!」


と言ってそそくさと行ってしまった。


俺は受付を終えて、会場に入った。


会場に入ると堅いの良い奴らばかりだった。


会場をふらついてると、同い年ぐらいの男に声をかけられた。


「きみは、受かったらどこに所属したいの?僕はね、政府の本部につきたいな。」


と聞いてもいないのに自慢げに言ってきた。


「えっと、俺はグレーボーダー。」

というと、急に笑い出し、小馬鹿にした言い方で、


「君…。笑わせないでよ。グレーボーダーに入る?

あんなの、政府の揚げ足をとっている組織のようなものだ。

グレーボーダーなんて、そんなところ配属されたくないね。」


と言った。


その男がそこまで笑う理由がよくわからないが、どうやら、グレーボーダーは嫌われているらしい。


そして、会場内にアナウンスが流れた。


「入団テストの受験者のみなさん。只今より、入団テストを開始します。

今回の試験はこの会場にいる150名で闘って頂きます。

闘うといいましても、勝ち残り戦です。

トーナメントで1位になった人のみが合格となります。

とは言っても、150名は少し多いので、とりあえず、90名の方は脱落して頂きます。」


その瞬間、会場がざわついた。やはり、150分の1。激戦であるようだ。


「脱落者を決める方法は、5人1組を作って頂き、それぞれプレート番号を胸につけてもらいます。

そのプレートをフィールド内で1枚取った人の勝ちです。ただし、早い者勝ちで2人までとします。」


さらに会場はざわついた。


「いきなり、90名も落とすのか。」という声が周りから聞こえる。


そして、俺は試験官が決めた5人組になり、フィールドに入った。


俺以外の4人は見た目はそんなに強そうには見えない。


「それでは始めて頂きます。1次予選、よーいスタート。」


その始まりの合図の瞬間、俺以外の4人が俺に襲いかかってきた。


流石にそれは妥当な判断だけど、一方的に来てくれた方がこちらとしてはありがたいし、他の4人は隙がありすぎである。


「集団で襲うのにもデメリットあるよ?」


と言い、俺は突っ込んできた4人の後ろに素早く周り、4人がこっちを向く前に1人のプレートを取った。


すると、ビーっと音が鳴り、


「受験番号37番、一次合格です。フィールド外でお待ちください。」


あっという間に一次を合格した。


他のフィールドでも次々と合格者が出ている。


そして、全組が終わったところで休憩に入った。


その頃、ヒロは会場内の観察室にいた。


「あれ?ヒロじゃん!なんでこんなとこにいんの?」


「いや、実は自分の世話係の子が受けるんで見に来たんだ。」


「へぇー。何番の子?」


「37番だよ。」


「あ、一次試験受かってるじゃん。てか、なんかヒロ、楽しそうだね。」


「実力が楽しみなだけさ。」


そして、休憩が終わり、トーナメントが発表された。


  ー数時間後ー


俺は、試験を無事終了し、ヒロと再会した。


「おっ。お帰り。よし、じゃあ、また本部のところに行くぞ。」


と意外とあっさりしていた。


「結果について、何にも言わないんだ。」


「もしかして、褒めて欲しいのか?でも、ここで合格できないような奴はグレーボーダーにはいないからな。」


ヒロは少し神妙な顔つきでいった。


「別に、自慢してるとかじゃないけどさ。」


「ごめんごめん、よくやった。おめでとう。」


と言って、俺の肩を叩いた。

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