第2話 反政府組織?
ーこの世界には「悪者」という役職が存在する。人を襲う、物を盗む。
この世界の秩序を乱しているもののことを言う。
貧しいもの、心が弱いものほどなってしまうことが多い。
政府はこの役職を日々無くすために健闘している。
しかし、最近では15歳で悪者になろうと決める者もおり、悪者の数は急増する一方であった。
人類はみんな進化しており、それぞれが個々の能力を持つようになった。
そのため、悪者との闘いは激化するばかりである。
どれぐらい時が過ぎたのだろう。
俺が目を覚ますと、そこには、先程の男が立っていた。
「おっ?目覚めたか?」
と軽い口調で聞いてきた。
俺は、周りを見渡すと、俺の手は鎖で繋がれていて身動きができない。
「これは何だよ。」
「これは、君が逃げないようにするための対策。」
対策も何もただの拘束である。
俺はさらに質問をした。
「じゃあここはどこだ?そしてお前は誰だ?」
と尋ねる俺に対してその男は
「質問ばっかだね。まぁ、今から順を追って説明するからさ。とりあえず、自己紹介をした方がいいよね。俺は、ヒロ。よろしく。」
と言って、右の口角を上げながら手を差し伸べてきた。
「俺が今手を拘束されているのをわかっててその手をだしているよな。
性格悪くないか?」
「あははは。
よく言われる。
じゃあとりあえず、説明を始めるよ。」
とヒロは言った。
「説明もいいが、その前にこの拘束を解いとくれよ。」
身動きできない状態でいるのはどうも落ち着かない。
何が何だかわからない状況の中で身動きすら取れない状態で、説明を聞くなんて堪ったもんじゃない。
「えー。君が逃げなきゃいいけど。」
「ここで逃げるかは、話を聞いてからだ。」
と俺は言い放った。
すると、ヒロは再び笑った。
「潔いね。分かった。解いてあげる。」
と言うと、ヒロはそそくさと鎖を外した。
そして、その部屋のソファに俺とヒロは向かい合って座った。
「じゃあ、まず、今この世界には大きく分けると2つ、もう少し細かく分けると3つの勢力が存在する。まず、2つに分けられるのが、この国の政府組織と悪者とされる者たちだ。そして、細かく分けた時の3つ目の勢力が、反政府組織だ。」
俺はこの時、ヒロが言った『悪者とされる』という言い方に違和感を覚えた。
「で、まぁ、ここはその反政府組織の本部なんだけど、俺たちの仕事は君のように自ら悪者になろうとしている人たちを助けたり、時には本物を探したり…。」
ヒロは神妙な面持ちで言った。
「本物って何だ?」
「本物というのは、真実のこと。様々な事柄に対する、なんていうか…。うーん。まとまらないな。言葉では言い表せないこともあるから、説明しにくいけど…。」
「ふーん。じゃあ、あと1つ。ここは反政府組織って言ったよね。その名の通り政府の敵なのか?」
「あー。それはね、敵ではないよ。ここにいる人たちのほとんどは政府によって配属されてるからね。ほんとこれ、名前変えた方がいいよね。ただ、まぁ、政府がやらないこととかを主にやるから、まぁ、反政府って感じ?」
俺はそれを聞いてなんだかホッとした。政府の敵ではないようだ。
「で、俺がここにいる理由は?助けるだけならここで拘束する必要はないんじゃないの?」
すると、ヒロはまた不敵な笑みを浮かべて
「あははは。君、質問はあと1つなんじゃないのかな?」
と言ってきた。つくづくムカつくやつである。
「うるせぇ。わかるように説明しろ。」
すると、ヒロは質問に答えてくれた。
「君がここにいる理由は、君がこれから、反政府組織別名グレーボーダーのメンバーの一員になってもらうからさ。」
俺は思わず
「はっ!?俺は悪者になろうとしたんだぞ。」
と叫んでしまった。
「まぁ、驚くのは仕方ないけど、君は今まで色々な物を犠牲にして助けてこれなかったことがあるだろう?それを助けるんだよ。今度は君が、君のような人を助けるんだ。」
その時、俺は俺の目の前で化け物となった友達を思い出した。
そいつは俺とほんとに仲が良かった、とってもいいやつだった。
なのに、悪者になった。俺はそいつを探すために悪者になることに決めた。
ヒロの言う通りなら、もしかしたら、あいつを助けてやることもできるのではないだろうか。
それが可能なら俺が取る行動は1つだ。
「俺はグレーボーダーのメンバーになる。」
とヒロに言った。
「やったね。君名前は?」
と尋ねてきた。
「サン。」
というと、また俺に手を差し伸べてきて
「サン、よろしく。」
と言った。
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