グレーボーダー

HAMAKOBO(かまぼこ)

第1章

第1話 出会い

「お前なんか、悪者になっちゃえ。」


「そうだそうだ。あははは。」


俺が人間を卒業する頃には、正真正銘の悪者

と化しているだろう。周りから言われてきたことだ。後悔なんて言葉もない。


「君がこの役職に就こうと決めたからには、それなりの覚悟があるんだね?」


悪者として有名なビルが俺に尋ねた。


「ああ。もちろん、そんなのとっくに…」


突然、俺が話している途中で背後から大きな爆発音が響いた。


俺は咄嗟に、背中にせおっていた刀を取り出し、音の鳴る方向に体を向けた。


すると、目の前に立ち込める煙の中から声がした。


「ちょっと派手すぎたか?」


煙の中から、どこかの制服らしきものを装った3人が現れた。


そのうちの1人の男は、俺が刀を向けているのをみて、


「おっと…。刀を向けるのは勘弁してよ。俺らは君を迎えに来たんだよ。」


と言い、俺に近寄り手を差し出してきた。


「おい、勝手に入り込んでくんじゃねぇ!」


先程まで話していた極悪人のビルがその男に襲いかかった。


しかし、男はビルに触れることもなく、男が手にしている剣を上下に振り下ろした風圧だけで、ビルを遠くに吹き飛ばした。


その光景に驚き、動揺している俺に対して、その男は


「君もあーはなりたくないだろうし、俺もなるべく穏便に済ませたいんだよね。」


とその男の目は笑ってないのに、口元だけは緩んでいる。少し気味が悪いくらいだ。


「もし穏便に済ませたいなら、その爆発させて入り込むってのはどうなんだよ!」


と、俺が突っ込んだのに対して男の背後に立っていた3人のうち1人の女の子が


「ほんとそうだよね。」


と声を発す。


「みらいちゃんまで俺を責めるのかよ。」


男は少し困った顔をして言った。


そして、再び俺の方を向いた。


「んで、君、ついてきてくれるよね?」


俺は、その男の顔をできる限り精一杯の鋭い目つきで睨んだ。


「俺は悪者になるって決めたんだ。」


俺は覚悟を決めてきた。それを突然きたやつに捻じ曲げられたらたまったもんじゃない。


「お〜。怖い怖い。君がいる場所はここじゃないよ。本当の悪者を一緒に倒そう。」


俺はほんとにこの男が何を言ってるのかわからない。

どうやったらこの状況を回避をできるかひたすら脳を働かせる。


「まぁ、もし、君が本気でついてくる気がないなら、こちらとしては強行手段をとらせてもらうけど…。」


と後ろの2人も武器を取り出した。


3対1…。


しかも、さっきの風圧で吹き飛ばされた光景をを見る限り、俺が今ここで闘っても勝てる気が全くしない。


よし…。そして、俺は一息をついた。


「あっ。逃げた。」


この状況で逃げる以外の方法は思いつかない。逃げる俺に対して男は何倍もの速さで追ってきた。


流石にこれは、無理と思った時男は


「ちょっと、ごめんね。」


といいながら、注射針のようなものが腕に刺さって、俺は意識を失った。

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