第4話 当てろ!高額当選!スクラッチ!

「ふぃいいーーーっ……食った食った」


 俺は銀行から少し歩いた先にあるハンバーガーショップ——マグナルドでハンバーガーを胃の中に軽々と収めた。

 勇者時代には一度もなかった満腹感を味わって満足したが、これで残金は僅かになってしまった。


 が、しかし、特に問題はない。

 俺は魔法を使えるのだ。現代日本において魔法というのは完全に未知なため、俺が何しようとそれを証明することは不可能なのだ。

 ということで、俺はマグナルドの近くにあった宝くじ売り場に向かった。


「いらっしゃい。夢を買いに来たのかい?」


 ごちゃごちゃとしたカラフルな装飾に彩られた小さな売り場の中から、気の良さそうなおばちゃんが挨拶をしてきた。


「うん。もしかしたら当たるんじゃないかなって思ってね。それで……スクラッチを五枚買いたいんだけど、選ばせてもらうことってできるかな?」


 俺は売り場のカウンターに肘をついて、おばちゃんに微笑んだ。

 俺の記憶だと選ばせてくれない店舗も多くあるため、第一印象を少しでも良くしておきたいのだ。


「大丈夫だよ。ほれ、この束から好きに選びな」


「凄い量だね……サーチ……」


 俺はおばちゃんが出してきたスクラッチの束を、カードゲームをするかのような感覚で見定めていく。

 見定めると言っても、おばちゃんにバレないように魔法を使うだけなのだが。


「えーっと……これとこれ……それとこの三枚でお願い」


 俺は数百枚の中から五枚を厳選して、おばちゃんに財布の中身を全て差し出した。


「あいよ。宝くじとかスクラッチってのは、選ぶのも楽しいから良いよねぇ」


「そうだね」


 おばちゃんはニコニコと笑みを溢しながら金を回収してから、俺が選んだ五枚のスクラッチを輪ゴムで止めた。


 ちなみに俺は悩んでいるふりをしていたが、全ての結果が見えている状態で選んでいるので、実際、ワクワク感はゼロだった。


「ほい、お待たせ。早く結果がみたいならこの場で削っていってもいいけど、どうする?」


「いや、いいよ。こういうのは家でゆっくりと楽しみたいんだ」


 俺はスクラッチをジャケットの内側に仕舞い込んだ。


「そうかい。当たるといいね」


「うん。またね、おばちゃん」


 俺はゆらゆらと手を振るおばちゃんに手を振り返して、この場を後にした。


 必ず当たっている五枚のスクラッチはいずれも高額当選なので、売り場ではおそらく換金できないだろう。

 次に行くのは銀行だな。強盗が押し入ったところとは別のところに行くか。

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