第12話  陽キャの嘘

 僕はカウンター系のリヒトかもしれないので右近や青梅にも協力してもらい軽く攻撃してもらった。三人ともまだリヒトを使えないから、余計な気を使わなくても済む。


「悪いね……」


「馬奈木、気にしないで、いいから」


「うん…… 私達の訓練にもなるし」


 右近に石を投げてもらったり、青梅に杖で軽く打ったりしてもらう。

 そのたびに体がすくみ、痛みが走るがリヒトを使いたい一心でそれに耐える。

 じっとしていても汗が出てくる気温なのに、痛みと緊張のためか暑さをほぼ感じない。


一時間ほどたつと体幹や手足、顔に痣や打ち身ができてくる。もうやめたい、逃げ出したい、そう思う度にリヒトを使いこなすクラスメイトを見て弱音を押し殺す。


 負けたくないから。見下されたくないから。


 すごいリヒトに目覚めればクラスでの評価が一変するかもしれない。


 この異世界だけの出来事かもしれないけれど、ずっと見下されたままよりは遥かにいい。


 痛みに耐えかねて僕が座り込むと、右近と青梅は二人で訓練を始めた。

 右近は細い腕で手ごろな石を持ったり、訓練場の地面を掘ったりしている。


 僕は肌を焼くほどの日差しの下で運動をしていたせいか、制服が汗で張り付いていた。服の下を手持ちのハンカチで拭い、息を整える。


 その後攻守交替しようか、と持ち掛けたが二人には断られた。


「さすがに、いい」


「うん…… 痛いのとか怖いのは、嫌」


 できない者同士集まっているのを尻目に、すでに使えるようになったクラスメイトは能力の強化に専念していた。


「『飛びなさい』」


 有田が適当なクラスメイトに対しそう命じるが、何も起こらなかった。


「どうやら私のリヒトでは、相手が不可能なことは命令できないようですね」


「でもすごい能力じゃねえか」


 飯崎が手持ちの剣を振り回しながら言った。

 足元には彼が切ったり実験台にした岩や、どこからか借りてきたのか古い鎧などがごろごろと落ちている。

 断面が鏡のように滑らかで、明らかに昨日よりも威力が上がり、刀身の輝きも増している。


 他にも剣や棒状の武器を発動させているリヒトがあったが、そんなクラスメイトに向けて、飯崎は。


「違うって、そんな握りじゃうまく触れねえだろ。バットじゃねえし」


「違う違う、剣道じゃな……」


 剣を振っている人間を見ると剣道部の血が騒ぐのか、他のクラスメイトに持ち方の指導をしていた。

 さすが陽キャか、クラスメイト相手に後輩へのしごきのような態度をとることはなく丁寧に接している。


 有田のリヒトも、発言から相手の体が動くまでの時間が短くなってきていた。


「はいはーい。怪我人はウチが見るからー」


 遠藤が頬や腕に切り傷や火傷をったクラスメイトの患部にラメをした手をかざすと、うっすらとした光の粒と共に傷口が塞がっていく。


「何人も連続で治療できるようになってる~、テンションマジヤバ」


 僕も治療を頼んだが、


「あ、ゴメン。そろそろリヒト切れ」


 と断られてしまった。

 そのわりとすぐ後に飯崎と有田を治療していたけど。

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