剣を握る。そして地獄の門は開かれた。
最初の彼女は綺麗だった。
背も高く、目鼻立ちも整っていた。
誰よりもひたむきに努力を重ねる姿には、思わず目が眩むほどの輝きがあった。
だから彼女の隣にいることを許されるほどに俺も積み重ねをした。 当然、常に彼女の目先には俺なんていなかった。
それでも良い。全ては俺が彼女の隣に立っていたかったからしたことだ。そこになんの未練もない。
───ただ、一つの後悔を除いては。
いつだったか……そう、学院の卒業式の後だった。
いつもと変わらない通学路。魔道具や魔法の本たちが厳然な雰囲気を醸し出していた、あの不思議な丘の上。
キミはいつも隣でニコニコしながら自分に纏わりついてくる俺に言ってきた。
「どうしていつも貴方は私の隣にいるの?」
それに俺はいつもと変わらない笑顔で君に言った。
「キミと、常に一緒に生きたいから。」
その時キミは確か、俺の顔を見てため息を吐いていたっけ。 気付けば俺は、キミの顔を見ることなく、積年の想いを告げていた。
「今の言葉の返事は今でなくともいい。キミが俺の事を認めてくれる時で構わない。でもこれだけは覚えていてくれ。 キミがもし、恐怖で体が震えて動けなくなった時。 オレの名前を天を貫くくらいに大きな声で叫んでくれ。そしたら俺が、キミの身体を抱きしめながら囁くから。『もう大丈夫。今までよく頑張った』って、そう言うから。その時に今の返事をくれ。」
───今にして思えば、酷く傲慢な告白の仕方だったと分かる。
でもきっと、『剣』の俺にはこんな言い方しか出来なかったんだろうな。
この告白が呪われていたのか、今となれば知る術はない。
まさか本当に、俺の
あの時は流石に泣き叫んでしまった。
キミの身体を抱きしめながら、小鳥の雛の産声よりも小さな呟き声で、キミに囁くだなんて。
もし願うなら、キミの最期を失くしたい。
幾ら命を己の為に積もうとも、幾ら他人が俺のことを恵まれていると言っていても。
後悔は消えることがない。後悔と怨念と、積りに積もった哀しみが『剣』を動かした。
そしてついに、キミとの思い出を思い出だけにしない術を、俺は見つけた。
『禁忌』に手を染めるなと告げてくる者、『世界の環』から外れると教えてくれた者はいた。───でも、そんなのは要らない。
俺が欲しいのは、彼女の飾らない笑顔だ。
誰よりも高潔に見えるその生き様だ。
それを求めた先に幾度とない『地獄』が、『絶望』が襲いかかると知っていても。
───キミへの愛を証明しよう。
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